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【ついに試乗! メルセデス・ベンツEQC】メルセデス初のBEVには、彼らの「本気」と「差し迫った現実」を認識させられる〈速報インプレッション〉

MotorFan / 2019年5月15日 18時50分

【ついに試乗! メルセデス・ベンツEQC】メルセデス初のBEVには、彼らの「本気」と「差し迫った現実」を認識させられる〈速報インプレッション〉

メルセデス・ベンツ初の100%電気自動車「EQC」にいよいよ試乗する機会を得た。電動化を推し進める同社が掲げた「EQ」なる新シリーズの旗振り役となるモデルであり、自動車業界のみならず世界が注目する一台と言って差し支えないだろう。国際試乗会が行われたノルウェーはオスロからレポートをお送りする。 TEXT●渡辺敏史(WATANABE Toshifumi)


BEVにはC-DセグメントのSUVが最適?

 その意はエレクトリック・インテリジェンスだという「EQ」の旗印を掲げてパワートレーンの電動化を推し進めるメルセデスベンツ。EQCはその中核的存在を目指して投入されるBEV、すなわち純然たる電気自動車ということになる。

 全長4761mm、全幅1884mm、全高1623mmと、EQCの車格的カテゴリーはほぼDセグメント級としていいだろう。そして同じく2873mmのホイールベースを持つGLCクラスが、そのアーキテクチャーのベースとなっている。

 たとえばVWはIDシリーズでMEBなる専用アーキテクチャーを展開することをすでに公言しているわけだが、メルセデスはなぜ既存モデルを活用する策を選んだのか……と、疑問に思う方もいるかもしれない。

 中国市場の販売依存度が大きい彼らとしては当然、次世代向けに電動車両のモジュールは開発しているはずだ。が、その想定をも上回る勢いで中国の政策が著しいEVシフトを促しているというのが実情だろう。この速度に追従できたVWは、ディーゼルゲートからの経営改革におけるBEV推進の早期決断が背景にはあるのだと思う。





 加えて、現状で不満なくユーザーが扱えるBEVのバッテリー容量とその体積、そして原価率や付加価値等を鑑みれば、プレミアムブランドにおいてはC〜DセグメントSUV相応が一番折り合いがつくという算段も働いていることは間違いないはずだ。アウディe-tronも然り、ジャガーI-PACEも然り、恐らく同様の選択だったことは想像に難くない。

 EQCはそこに巧みなエンジニアリングを駆使して、同一車台でBEVだけではなくFCEVのコンポーネンツ搭載も実現している。その上で、GLCクラスと同じブレーメン工場での生産を可能とした。

 キーとなるのは従来の縦置きパワートレーンであればエンジンコンパートメントからトランスミッション部に相当する位置に組まれたパイピングセクションだ。これによってPCUやセンタートンネルに置かれる水素タンクの保護を強固なものにしながら、生産設備に負担をかけず、従来の治具を用いたライン装着ができるようにもなっている。ちなみにFCEVはGLCクラスのバリエーションとして年内の発表が予定されているという。





 EQCのモーターは前後にひとつずつ配され、その総合出力は300kwで、トルクは760Nmに達する。正式名称はEQC400 4マチックとなるが、s560にも十分比肩できるパワフルさだ。もちろんモーターの側のポテンシャルをフルに用いれば強烈な動力性能を絞り出すことも可能だろう。

 だが、浅はかな商品性向上とは一線を画しているところが自動車メーカーの仕事らしい。0-100km/h加速は5.1秒、最高速は180km/h。優に2tを超える多用途性のBEVとして、常識的な速さだと思う。

 搭載するラミネート型リチウムイオンバッテリーはセルを外部調達、アッセンブリーは自社製となり、その容量は80kWh、セル数は384となる。これを48セルのモジュールでふたつ、72セルのモジュールで4つと束ねて床下に敷き詰めている。

 冷却は水冷式で、物理的な衝突安全性はもちろん、制御面での安全性にも独自の基準を設け、幾度もテストを重ねたという。そして万一の事故時には、救急隊員が高電圧を手動でオフにするシャットダウン機能も設けられている。



これまでの自動車の延長線上にある存在

 内外装の意匠は端々にEQの世界観が押し出されているが、インターフェースは見慣れたメルセデスのそれ。取っ付き易い反面、格別な新鮮味もない。

 ちなみに従来はシフトチェンジに用いられていたステアリングのパドルは、左側が回生ブレーキの強さをコントロールする役割を与えられ、標準、-1、-2の3段階で切り替えられる。

 右側はコースティングモードの+のほか、Dオートというモードも加えられており、航続可能距離を最大限に勘案するマックスレンジというドライブモードとの組み合わせでは、認識した速度標識と擬似的なクリック感を設けたアクセルペダルの連携により制限速度内での走行を積極的に促しながらの、距離や渋滞情報、高低差などのナビデータを勘案した最適ルートを提案してくれる。

 また、Aクラス系のモデルに次いで搭載されるMBUXも、走行距離や充電場所を気に留めることの多いBEVに合わせたキャリブレーションが施されているという。


 スロットルのコントロール性はすこぶるよく、トルクが瞬時に立ち上がるモーターの特性を巧くなまして発進や極低速の保持、そこからの加速などを滑らかにこなすことができる。

 ペダルそのものの摺動感にも安っぽい軽さはなく、疑似的なクリックポイントの感触まで細やかにチューニングしているところには感心させられた。

 しかしそれ以上に巧さを感じたのは制動のフィーリングだ。ブレーキランプが点灯するような最も強い回生状態での車体姿勢や、ペダルコントロールによるゲインの立ち上がり、そして回生からメカニカルブレーキへの繋がり感など、EVだからという言い訳が必要な場面は無に等しい。


 いい意味で普通のクルマから乗り換えてもまったく違和感なく運転できるクルマに仕上げられているEQCだが、もちろんBEVならではの魅力もしっかり備わっている。

 スペック上はちょっと速いかな、くらいにしか思わない加速も、その質は身体全体を一気にシートに押し付けられるいかにもEV的なものだ。

 また、遮音や吸音にリサイクル材を多用した車内の静粛性を従来のクルマになぞらえるなら、100km/h向こうまできっちり Lセグメント級の環境が保たれている。

 後席の着座姿勢は僅かに天地に窮屈な印象はあるが、これは床下に電池を置くパッケージに加えてプロポーションが4ドアクーペライクに纏められていることも影響してのことだろう。当然ながら前席の側は着座姿勢に違和感はない。


 EVだからといってがむしゃらに新しくあろうとはせず、これまでのクルマとの連続性を意識しながら自然体で作り上げられたクルマ。そういう評価はメルセデスにとって望まざるものかもしれないが、僕にはEQCはそのように映った。

 裏返せばそれは自動車の祖たるメルセデスだからこその余裕かもしれないし、我々にとってEVが差し迫った現実であることを示しているともいえるだろう。



メルセデス・ベンツEQC400
全長×全幅×全高:4761×1884×1623mm ホイールベース:2873mm 駆動方式:2モーターAWD バッテリー:リチウムイオン(80kWh) 車両重量:2495kg 最高出力:300kW(408ps) 最大トルク:760Nm NEDC航続距離:445-471km 0-100km/h加速:5.1秒 最高速度:180km/h(リミッター作動)

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