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シビック タイプRとメガーヌR.S.でノンビリ走るとどうなる? 東京から木曽路まで、たら〜っと往復700kmの旅

MotorFan / 2019年6月22日 17時0分

シビック タイプRとメガーヌR.S.でノンビリ走るとどうなる? 東京から木曽路まで、たら〜っと往復700kmの旅

ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェでFF市販車最速の座を争っているシビック タイプRとメガーヌR.S.で、あえてのんびりまったりドライブを楽しんでみる。とりわけメガーヌは、2019年2月末に限定発売されたR.S.カップであり、長距離長時間ドライブでのパフォーマンスは未知数だ。現行シビック & メガーヌになって、初めてのMT対決でもある。日仏を代表する超絶ハイパフォーマンスマシンを連ね、中山道有数の宿場町である妻籠宿を目指した。 REPORT●小泉建治(KOIZUMI Kenji) PHOTO●宮門秀行(MIYAKADO Hideyuki)

 ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェでFF市販車最速の座をめぐって熾烈な戦いを繰り広げているこの2台。そんなわかりやすい構図に乗って、我々のような自動車専門メディアも単細胞的に、やれサーキットだワインディングだと、勇ましい誌面作りで悦に入っている。

 しかしだ。いくらシビック タイプRやメガーヌR.S.を買ったからって、そんなにサーキットに行くか? 年がら年中ワインディングに出撃するか? ニュル最速のオーラに浸りつつも、カップルで、ファミリーで、週末のドライブを楽しむというのが一般的な使い方だろう。

 というわけで、日仏を代表するサーキットアタッカー2台で、のんびりまったり長距離ドライブに出かけてみたのである。

メガーヌR.S.カップの日本導入によって、ようやくMT同士の比較試乗ができるようになった。

タイプRの白眉は加速でもコーナリングでもなく「乗り心地」だ!

 まずはシビック タイプRに乗り込む。同行するMotorFanTECH編集長の萬澤と宮門カメラマンはメガーヌR.S.カップだ。

 参考までに、筆者は体重76kg、萬澤は70kg、宮門カメラマンは80kgで、約40kgのカメラ機材は2台に均等に分けた。エアコンの温度設定は22〜24℃の範囲内としている。詳細は最終ページの総合燃費表をご覧いただきたい。

 編集部にほど近い初台ICより首都高速4号線に入る。そのまま高井戸ICを過ぎれば中央高速となる。

 シビック タイプRに初めて乗った者がまず驚くのは、その強烈な加速性能でも並み外れた旋回性能でもない。まろやかな乗り心地だ。

 筆者がシビック タイプRに乗るのは約10カ月ぶりだが、やはり時間を置いて乗ってみても極上さは変わらなかった。

 シビック タイプRには電制ダンパーが備わっており、「+R」「スポーツ」「コンフォート」のドライブモードが用意される。このドライブモードはエンジン特性なども変更させるものだが、デフォルトモードである「スポーツ」でも乗り心地はすばらしく、ダイレクトに路面の状況をドライバーに伝えつつも不快やゴツゴツ感はしっかり濾過してくれる。

 これは「+R」モードでも同じことで、ロール量は「スポーツ」よりも抑えられるものの、けっしてガチガチにはならない。後に+Rに入れておきながら、そのことをすっかり忘れてスポーツのままだと思い込んでいた場面があった。それほど、+Rでも乗り心地がいいのだ。

 今回は高速走行が長く続くので、せっかくだからコンフォートモードにしてみたが、普段はスポーツのままでも不満を覚えることはないだろう。

燃費を計る以上、正確な空気圧計測は必須だ。


2017年夏に発売された現行シビック タイプR。「タイプR」としては五代目となる。ニュルブルクリンク・ノルトシュライフェにおける7分43秒800のタイムは、19年5月にメガーヌR.S.に更新されるまではFF市販車最速タイムだった。最高出力は320psで、6速MTのみの設定だ。

MT至上主義者も納得のレブマッチシステム

 飯田山本ICで高速道路を降りる。ここまでの燃費は1名乗車のシビック タイプRが14.8km/L、2名乗車のメガーヌR.S.カップが13.9km/Lだった。

 ここからは宮門カメラマンが筆者の運転するシビック タイプRに乗り換え、一般道で妻籠宿を目指す。

 シビック タイプRの6速MTには、シフトダウン時に自動でエンジン回転数を合わせてくれる「レブマッチシステム」が備わっている。だが今どきわざわざMTに乗るなんて好き者は、自分でヒール・アンド・トーがやりたいのである。したがってこいつは必要なし! ……と思っていたのだが、これが実際、使ってみると気持ちがいいのですよ。

 MT至上主義者を自称する身としては言いたくないのだが、タイトでツイスティなコーナー入口でのシフトダウン時など、どうしたってうまく回転が合わないときがある。それにDCTなどのパドルシフトと違って、クラッチペダルとシフトレバーによる操作を必要とするこのシステムは、クルマを操っている実感をほとんど削がれない。

 もちろん必要がなければ機能をオフにすることもできる。あればあったで、とてもありがたい装備でありました。


2018年夏に日本に上陸したメガーヌR.S.(ルノー・スポール)。最高出力は279psで、6速DCTのみのラインナップとなっていたが、19年2月に限定100台が販売されたカップは6速MTや手動式サイドブレーキと組み合わされる。独自の4輪操舵システム「4コントロール」を備える。


旧市街ではワイドなフェンダーに気を遣うべし

 中山道六十九次の江戸から数えて42番目に位置する妻籠宿は、奈良井宿や馬籠宿と並ぶ中山道有数の宿場町として知られ、往時の町並みや風情を今も頑なに守り続けている。1976年には国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている。

 旧中山道沿いの中心地区は10時から16時までは自動車の通行が禁止となっている。現地には15時半頃に着いたので、30分ほど時間をつぶしてから街に入ってみた。

 こうした旧市街では、もちろんボディサイズは小さければ小さいほどいい。その点、奇しくも両者とも全幅1875mmというワイドボディのシビック タイプRとメガーヌR.S.は、それなりに気を遣う必要がある。それぞれベースモデルの全幅は1800mm(シビック ハッチバック)、1815mm(メガーヌGT)で、ワイド分はフェンダーの張り出しによってもたらされているため、ボディの両端も把握しづらい。

 さらに言えば、とくにシビック タイプRはコワモテなので、なるべく歩行者に威圧感を与えないように穏やかな運転を心掛けた方がいいだろう。

 ただ幸い、2台とも全長が4.5m級と比較的コンパクトなので、右左折やUターンにはそれほど苦労しなかった。


 ひととおり撮影を終え、妻籠宿の中心部からクルマで5分ほど南へ走ったところにある大妻籠の「まるや」さんに投宿する。

 飯田山本ICからここまでの燃費は2名乗車のシビック タイプRが10.5km/L、1名乗車のメガーヌR.S.カップが9.3km/Lだった。

 撮影のため、停まっては動かし、停まっては動かしを繰り返した割りには、2台とも燃費の落ち込みが少なかったという印象だ。

今回、我々取材陣が宿に選んだのは、大妻籠にある旅籠「まるや」さん。囲炉裏もあって雰囲気は抜群。
山菜や川魚が中心の夕食。お米は裏手の田んぼで育てたという。とにかく旨くて、お櫃のご飯はスッカラカンに。


 翌日はメガーヌR.S.カップに乗り換え、宮門カメラマンが助手席につく。シビック タイプRはTEC萬澤の一名乗車だ。

 乗り始めの第一印象は、ずばり「硬い!」だ。

 しなやかさがウリのメガーヌR.S.の足まわりだが、サーキットに主眼を置いたカップはさすがの本気仕様である。

 早朝のうちに妻籠宿で撮影を再開する。前日のシビック タイプRでは気にならなかった路面の凹凸を拾い、ボディがけっこう揺すられる。

 だがそこは文句を言うところではない。カップではないカタログモデルのメガーヌR.S.はすばらしく乗り心地がよく、以前、東京から岩手まで一泊二日で往復1200kmを走ったときも、まるで疲れを感じなかったからだ。

 その一方で、デビュー直後にR.S.カップをサーキットで試乗したときは、とてつもなく頼もしいサスペンションだと感銘を受けた記憶がある。

 だから硬いのは狙い通り。それがイヤなら通常のR.S.を選べばいい。でも、それだとMTが用意されないのが悩ましい……。

 妻籠宿を後にし、京都側のひとつとなりにある馬籠宿に向かう。

 妻籠宿と馬籠宿の間にはなかなか痛快なワインディング区間があり、景気よく飛ばすのは本稿の目的ではないと自制しつつも、ついついハンドリングを楽しんでしまった。

 とくに4コントロールによる「リヤから曲がっていく」感覚は独特で、実際よりもボディが小さく感じられ、予想以上にクルッとコーナリングしてくれる。最初は戸惑うかも知れないが、慣れればやみつきになる。

 県境を越え、長野県から岐阜県に入ると、すぐに馬籠宿に到着する。妻籠宿と同様に10時から16時は車両通行禁止となっているが、我々が到着したのは朝の9時だったので、一応クルマで入れることは入れる。

 ただ、写真を見ていただければわかるとおり、道幅がとても狭いため、住民でもない限りここにクルマで進入するのはかなり憚られる。

 おとなしく2台を駐車場に入れ、徒歩で散策することにした。

妻籠宿と並ぶ木曽路の名所として知られる馬籠宿。

 しばし馬籠宿で観光気分を味わい、再びメガーヌR.S.カップに戻る。中津川ICの手前で宮門カメラマンがシビック タイプRに乗り換え、そこから中央道で帰路につく。

 大妻籠からここまでの燃費は、一名乗車のシビック タイプRが7.5km/L、二名乗車のメガーヌR.S.カップが7.2km/Lである。

 ここからはひたすら東京に向かって高速巡航である。低速域では気になったメガーヌR.S.カップのゴツゴツ感も、スピードが上がればフラットになって気にならなくなる。

 2台とも右ハンドルのMTながらペダル類にオフセットはなく、左足の置き場にも困らない。シビック タイプRは日本のメーカーがイギリスで生産しているのだから当たり前かも知れないが、左ハンドルの国であるフランスのメーカーのメガーヌR.S.カップのペダル配置は見事というほかない。

 これには背景があって、メガーヌR.S.をはじめとしたルノー・スポール系モデルは、実は右ハンドルの国でめっぽう売れているのだ。最も売れているのは本国フランスだが、2位はイギリスで、3位と4位は常に日本とオーストラリアが争っている状況だという。となれば、右ハンドルの開発に力が入るのも当然かもしれない。

 もうひとつ触れておきたいのは、シートのすばらしさである。ルノーのシートの出来のよさは、もはや多くの人が知るところだろう。メガーヌR.S.カップも例に漏れず、大きく張り出したサポートとタップリとしたクッションで、高いホールド性と極上の座り心地を両立させている。

 だが驚いたのはシビック タイプRだ。メガーヌR.S.カップに負けず劣らずのサイズとクッションで、700km程度のドライブでは首にも背中にも腿の裏にも一切の疲れや痛みを感じなかった。もちろんサポート性も申し分ない。推測だが、このシートには相当のコストが掛けられているのではないか? 日本車のシートでここまで感銘を受けたのは初代(日本では初代のみ販売された)日産デュアリス以来である。



 全行程700kmを走り切り、東京都新宿にある編集部に帰着する。中津川ICから初台ICまでの燃費は、二名乗車のシビック タイプRが13.9km/L、一名乗車のメガーヌR.S.カップが12.8km/Lだった。

 計測区間690kmの総合燃費は、シビック タイプRが13.2km/L、メガーヌR.S.カップが12.3km/Lという結果である。

 ニュルブルクリンク最速の2台の旨味は、なにもサーキットでしか味わえないわけではない。路面の所々荒れた過酷な20kmものコースを8分を切るタイムで駆け抜ける実力───優れたドライバビリティとしなやかかつ強靱なシャシー性能は、法定速度内でも十分に堪能出来る。

 快適性をとことん追い求めたサルーンやミニバンに乗っていると、いっそのこと運転などしないほうがもっと快適じゃないか、という気分になってくる。

 しかしスポーツカーなら、運転という行為に前向きで居続けられる。だからどこまでも走り続けられる。

 優れたスポーツカーは、優れたツアラーでもある。

 こうして長距離を走るたびにいつもそう思うのだが、シビック タイプRとメガーヌR.S.カップにも見事にその言葉が当てはまるのだった。

ホンダ・シビック タイプR


ホンダ・シビック タイプR
全長×全幅×全高:4560×1875×1435mm
ホイールベース:2700mm
車両重量:1390kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボチャージャー
総排気量:1995cc
ボア×ストローク:86.0×85.9mm
最高出力:235kW(320ps)/6500rpm
最大トルク:400Nm/2500-4500rpm
トランスミッション:6速MT
フロントサスペンション形式:マクファーソンストラット
リヤサスペンション形式:マルチリンク
乗車定員:4名
タイヤサイズ:245/30ZR20
ハンドル位置:右
車両価格:450万360円

ルノー・メガーヌR.S.カップ


ルノー・メガーヌR.S.カップMT
全長×全幅×全高:4410×1875×1435mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1460kg
エンジン形式:直列4気筒DOHCターボチャージャー
総排気量:1798cc
ボア×ストローク:79.7×90.1mm
最高出力:205kW(279ps)/6000rpm
最大トルク:390Nm/2400rpm
トランスミッション:6速MT
フロントサスペンション形式:マクファーソンストラット
リヤサスペンション形式:トーションビーム
乗車定員:5名
タイヤサイズ:245/35R19
ハンドル位置:右
車両価格:440万円

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