バナナの滑りから考える、科学技術と価値観のイノベーション - イノベスタ2017 北里大・馬渕名誉教授特別講演

マイナビニュース / 2017年9月11日 12時0分

写真

東京都立産業技術研究センターは9月8日、ものづくり技術を楽しみながら同センターの技術や設備を見学・体験できるイベント「INNOVESTA!(イノベスタ)2017」を開催した。イノベスタとは、InnovationとFestaを掛け合わせた造語で、当日は中小企業の事業展開や製品開発のヒントになるような講演会やワークショップ、見学会などが行われていた。

本稿では、2014年にバナナの皮の摩擦係数に関する研究でイグノーベル賞を受賞した北里大学 馬渕清資名誉教授による特別講演「科学技術、価値観のイノベーション - バナナの皮の滑りから俯瞰したエネルギー神話の陰」の模様をレポートする。

○人工関節とバナナの皮の共通点は?

ノーベル賞のパロディ賞であるイグノーベル賞は、「世の中を笑わせ、考えさせる研究」に贈られる。日本人研究者は同賞の常連となっており、2007年から2016年にかけては10年連続で受賞している。馬渕名誉教授はそのうちの1人だ。2014年に受賞し、「バナナの皮はなぜ滑るのか?」といった、私たちの身近に潜んでいた謎を解き明かしたことから広く世間を賑わせた。

馬渕名誉教授の元々の専門分野は、バイオメカニクスやバイオトライボロジといった医療と工学の境界領域。半世紀近くに渡り、人工関節が動く仕組みを研究してきた。一見、バナナとは何の関係もなさそうに思えるが、人工関節とバナナの皮に共通する点はなんだろうか。それは、「滑り」だ。

骨と骨のつなぎ目となる関節は、骨同士が直接ぶつからないよう、クッションの役割を果たす関節軟骨で覆われている。この関節軟骨の表面が非常に滑らかで低摩擦であるために、私たちは腕や脚などをスムーズに動かすことができるわけだが、その滑りの仕組みは完全には解明されていない。工学的には、関節液の性質に依存した「液体潤滑」と、軟骨表面がカギを握るとする「境界潤滑」とが同時に起きていると考えられているが、馬渕名誉教授は、特に液体潤滑の仕組みに着目して長年のあいだ研究を進めてきた。

研究の過程で、関節潤滑に関する著書を執筆する機会があり、そのなかで「バナナの皮を踏んだ際の滑りの良さを連想させる」という表現を用いた馬渕名誉教授。ふと、疑問がわいた。バナナの皮が滑りやすいことは、周知の事実として扱われてきているが、それを学術的に示した結果はこれまでにない。しかも実際に、アクリル板にバナナの皮を置いて傾けてみても、一向に滑らない。「自分の表現に嘘はないだろうか? バナナの皮は本当に滑るのだろうか?」——この疑問を解決すべく、馬渕名誉教授は、人工関節の研究の傍ら、本格的にバナナの皮の実験を始めることとなった。

マイナビニュース

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング