コンビニの数百円決済が新たなターゲット - 「みずほWallet」

マイナビニュース / 2019年6月25日 11時1分

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●みずほ銀行の口座直結アプリ「みずほWallet」2種のサービス
みずほ銀行が、自行ユーザーのために用意した口座直結型のスマートフォン向けサービスが「みずほWallet」だ。iOSではApple Payを利用し、Suicaへのチャージを銀行口座から直接行えるようにする機能を提供。Android向けにはQUICPayを経由したデビット決済機能を提供する。同じサービス名ながら、ユーザーの持つ端末によって利用できる機能が違うのが面白いところだ。

「iOS向けには前払い、Android向けには即時払いと形は違いますが、銀行の店舗やATMまで行かず、スマートフォンの中で済ませたい方向けのサービスということになります。便利に使えて、口座管理もできるというセットニーズに対応したものです」と語るのは、みずほ銀行 リテールデジタル開発部 デジタルチャネルチーム 参事役の西本聡氏だ。

Androidアプリでは、利用開始と同時にバーチャルなデビットカードが発行される。iOS向けのSuicaチャージ機能も、みずほWalletをデビットカードのように利用してチャージを可能にしている。現金の引き出しや振込という手順を経ず、口座に預金されているお金を利用してスマートフォン上で決済するという動きは共通しているといえるだろう。

サービス開始から1年未満ではあるが、2018年末のデータではアプリのダウンロード数は50万件以上、決済件数も月あたり100万件以上と、多くの人に活用されているという。

「口座の入出金履歴の閲覧も数百万件という規模で利用されています。銀行系のサービスとしては最大規模であり、実利用も伴っているサービスだと考えています」と西本氏は手応えを語った。

○スマートフォン+デビットで数百円から千円の決済利用へ

みずほWalletの利用に、特徴的な傾向があるのはAndroid向けのデビットサービスだという。アメリカではすでにクレジットカードよりも利用されているというデビットカードだが、日本でもクレジットカードを借金と捉える抵抗感や、使いすぎることの不安を解消するものとして近年顕著に伸びているという。これに、スマートフォン利用の特色が加わった。

「キャッシュレス決済のトレンドを見ると、9割がクレジットカードで、次に電子マネー、そしてデビットカードが続く形ですが、現在はデビット、特にブランドデビットのニーズが急速に伸びています。J-Debitでは家電のような数万円の決済が多く、クレジットカードとほぼ同じ使われ方でした。これがJCB等のブランドデビットになると、数千円程度の利用が多くなります。そして、みずほWalletを利用したスマートフォンによるデビットで千円クラスの少額レンジで利用されるようになりました」(西本氏)

これまでは現金と電子マネーしか使われていなかった数百円から千円の決済にもスマートフォンをかざして支払うという電子マネーと同じ動作で手軽にデビットを利用できるインタフェースを提供したことで、銀行が直接関われるようになったのが大きな特徴だ。

「みずほから発行するJCBデビットカードをお持ちだった方は、それをアプリに追加登録して利用することもできますが、アプリ利用ではじめてデビットを使えるようになったという方も多いですね。スマートフォンが使われるようになって、デビット決済がコンビニエンスストアで使われるようになったことを実感しています」(西本氏)

●自社で利用拡大を狙う必要がないという差別化
現在は多彩な事業者がスマートフォンを活用したキャッシュレス決済サービスに取り組んでいる。中には利用を促進するために、大きなキャッシュバック等のキャンペーンを展開した事業者もある。そうした中、みずほ銀行はどう戦っていくのだろうか。

「まず、われわれはインセンティブ競争に加わる気はありません。以前、クレジットカードでもポイント還元の争いがありましたが、ポイントを1%増やすというのは大変なことです。では何で戦うのかといえば、機能的な価値の高さです。口座直結で口座にあるお金が活用できる、どこでも使えるという利便性の高さで勝負をするので、他社のインセンティブはわれわれには影響ないと考えています」(西本氏)

機能面やサービスの質に自身を持っていても、まずは使ってみてもらわないことには始まらないという考えがインセンティブ競争に走らせるわけだが、みずほWalletに関しては利用拡大に向けた仕掛けがあるという。

「Androidの場合、支払い時に”みずほで”とは言わせていません。”QUICPayで”と言ってもらっています。どうしても自社の名前を言わせたい、自社サービス名で支払わせたいと思いがちなのですが、そこはプライドよりもお客様の実利をとりました。そして、QUICPayの利用者や利用できる場所が増えれば、みずほWalletの利用も伸びるわけです。これはiOS向けのサービスでも同じです。Suicaの利用範囲が広がれば、みずほWalletの利用も広がります」(西本氏)

通常、新サービス開始にあたっては、加盟店を募る営業活動が必要になり、加盟店を増やすために、利用者を拡大する仕掛けも用意する必要が出てくる。みずほWalletにはそれが不要なのだ。SuicaやQUICPayが何か新しい試みを始め、利用シーンを増やせば、みずほWalletは自動的にそこでも使えるようになる。そもそもが自行ユーザー向けサービスであるため、既存顧客への告知以外に幅広い広報活用も不要だ。

「実際、インセンティブなしでも利用は伸びています。これはSuicaとQUICPayのおかげです。業界的にそういう流れはできてきていますが、その先頭をきった形だと思います」と西本氏は笑顔で語った。
○「生活の中で便利に使われる銀行」を目指す

みずほWalletは、世間的にキャッシュレス決済需要が高まっていることなど、外的環境の変化に対応し、顧客の利便性向上を狙って作られたサービスだ。順調に利用も伸びており、利用価格帯の拡大など、キャッシュレス決済自体の伸びも十分に感じられている。しかし西本氏は、そのまま急速に現金決済やクレジットカード決済からの置き換わりが進むとは考えていないという。

「今後、キャッシュレス決済は伸びていくとは思います。しかし数万円の決済にスマートフォンを利用するというのは、まだだろうと感じています。プラスチックカードとスマートフォンを使い分けている様子が見えるからです。また、将来的には購入するものが決まっているならばスマートフォンで事前決済して、店舗では品物を受け取るだけというような使い方も浸透してくるかもしれません。しかし、それは事前に購入するものが決まっている人が使うだけで、一部に留まるでしょう」(西本氏)

スマートフォンで支払うことに抵抗のない金額であり、そうすることが他の決済手段よりも便利だと感じられる範囲での広がりに期待することになりそうだ。そうした中でみずほ銀行も、みずほWalletだけでなく各種サービスや、他事業者との連携を通じてキャッシュレス市場の拡大と、それ以外の分野でも利用を拡大していく意向だ。

「我々は他社のスマートフォン決済サービスにも、プレチャージに対応する銀行として参加しています。また、みずほWalletのように表に出て活動しているものもあります。裏方と表と、どちらがやりたいということではなく、両方に対応していきます。生活の中で銀行を便利に使っていただくのが目的ですから、土管的なサービスでも裏方でもかまわないのです」と西本氏は、アプリはそれ自体の普及や利用者拡大を目指すものではなく、みずほ銀行としてもユーザーとしてもよい結果を得るための手段としての活用であることを語った。
(エースラッシュ)

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