年間最大12兆円の損失をもたらす「2025年の崖」、どう乗り越えるべきか?

マイナビニュース / 2019年8月23日 13時0分

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●従来のERPプロジェクトではデータドリブンな経営を実現できない
○「2025年の崖」に揺れる日本企業

今年、経済産業省が「DXレポート ~ITシステム『2025年の崖』の克服とDXの本格的な展開~」という資料を公開したが、ここで使われている「2025年の崖」という言葉が話題を呼んでいる。

多くの日本企業では、「事業部門ごとにシステムが構築されているため、全社横断的なデータ活用ができない」「過剰なカスタマイズなどにより、システムが複雑化・ブラックボックス化してしまい、デジタル・トランスフォーメーション(以下、DX)の促進を阻害している」といった問題が生じている。こうした課題を克服できなければ、DXが実現できないのみならず、2025年以降に最大で年間12兆円(現在の約3倍)もの経済損失が生じる可能性がある、というのが2025年の崖の意味するところだ。

日本オラクル 執行役員 クラウド・アプリケーション事業統括 ソリューション・エンジニアリング事業本部長の原智宏氏はこう語る。

「2025年の崖の課題を克服するには、現状の技術的な"負債"を解消し、デジタルテクノロジーの活用にシフトすることが求められてきます。例えば、データ活用などを通じてビジネスをスピーディに方向転換したり、グローバル対応を進めたりです」

テクノロジーの変化や新規企業の参入、新しいビジネスモデルの出現など、現在のビジネス環境は目まぐるしく移り変わっている。にもかかわらず、多くの日本企業のIT活用は、従来のシステムの延長から抜け出せずに、業務の省力化にのみ目を向けている。

IT投資の内訳もシステムの維持メンテナンスが大半を占めており、これでは本来投資すべき新しいテクノロジーの活用に十分なコストをかけられない。そこで、経済産業省のDXレポートでは、新しいデジタルテクノロジーの活用やそれによるデータドリブンな経営、さらにはデジタルに親しんでいるデジタルネイティブ世代の活用にシフトをと提言しているのである。

「われわれITベンダーとしても、既存のビジネスから抜け出せなかったことが課題となっています」と原氏は自省を込めて言うとこう続ける。

「新たなテクノロジーがビジネスに劇的な変化をもたらす時代ではありますが、想像してほしいのは、IoTが生まれた時にすぐにユースケースがついてきたわけではないことです。ブロックチェーンにせよ、初期は仮想通貨の基盤という位置づけが目立ちましたが、今で
は様々なユースケースへ大きく広がっています。当初は新しいテクノロジーをどう使うかイメージできなくても、それに対してアンテナを高くしてどう自分たちのビジネスに使っていくかを常に考え続けることが重要だと考えます。新しいテクノロジーが生まれ、その後そのテクノロジーを活用した新製品や新サービスがリリースされ、それらにより新たなビジネスモデルが出現し、やがてコモディティ化していくとまた新たなテクノロジーが生まれてくる──こうしたサイクルにおける転換点にどううまく対応していくかがいま日本企業に問われているのではないでしょうか」
○過去の長大なプロジェクトがERPのイメージに

では、日本企業はどのようにしてイノベーションを実現する新しいテクノロジーや人材を活用していけばよいのだろうか。その答えの1つがスピーディな判断によるリアルタイムな経営の実践である。

原氏は言う。「ここで課題となるのが、ERPに代表される既存のバックオフィスシステムです。日本企業では、ERPを部門ごとに導入するなど、部分最適化しているケースが多く、全体最適を目指した利用は極めて少数派でした。しかし、ERPの本来の役割とは、企業内外の活動によって生み出された情報を集約してシングルデータソースをつくることであり、迅速かつ正確にビジネスの意思決定を行なっていくことにあります。そして、このアプローチは、DXレポートで提唱しているデータドリブンな経営そのものなのです」

つまり、コンセプトは以前からあったものの、日本企業は全体最適を前提としたデータを軸にした使い方をしてこなかったということだ。このような背景から、最近では2025年の崖について語る時、ERPやシステムに直結した課題として語られるようになってきているという。

また、従来のERP製品の導入プロジェクトは大掛かりになりがちだった。コスト、人、時間のすべてで莫大なリソースを費やすことが当たり前のように強いられていた。

「過去にそんな経験をしたことで、企業のERPに対するイメージが固まってしまっていると言えます。誰ももう一度"改めてERPを"などと思わなくなっているのです。テクノロジーの観点から見ると、7年間など長い間にわたり特定のバージョンに固定してビジネスを行うことになりますが、果たしてこれで世間の変化について行けるのでしょうか? たとえ、バックオフィスのシステムだとしても『無理』というのがオラクルの答えです」(原氏)

●IaaSによるクラウド化とSaaSによるクラウド化は違う
○SaaSだから、柔軟なクラウドシフトが可能

日本企業が2025年の崖の課題を解決するには、ビジネスの変化に柔軟に対応し、データドリブンな経営を支援するERPが求められてくる。ここでのERPプロジェクトは、なるべくユーザーへの負担を最小限に抑えるとともに、システムとしても短サイクルで導入や更新ができるものでなくてはならないだろう。

「そうなると、従来のオンプレミス型のERPでは厳しいのではないでしょうか。SaaSであれば、すぐにERPプロジェクトをスタートできますし、モジュールごとに導入するなど段階的な導入も可能です。また、アップデートも短期間で行えるため、導入時にも運用開始後にもユーザーへの負担は極めて抑えることができます。ERPをクラウド上に構築することで、企業における足かせを1つでも取り除きたいというのがオラクルのスタンスになります」と、原氏は話す。

比較的小規模の企業であれば、一気にオンプレミスからSaaSのERPに移行してしまうケースも多いという。大規模な企業の場合は、新規事業を担う部署や、海外の現地法人などまず一部でクラウド型ERPを導入し、十分なノウハウが蓄積されたり、効果が確認できたりした後に後に本社に展開するというパターンが目立つようだ。

「個人的な印象だと、大企業よりも中堅企業のほうがよりアグレッシブにERPのクラウドシフトを進めている感がありますね。規模が小さいほど人材不足はより深刻ですから、解決につながることはすぐにやっていきたいという思いが強いのでしょう。大企業については、比較的感度の高いところから導入が進み、いままさにSaaS化が広がってきています」

○クラウドネイティブではないからこそ、多様な選択肢を提供できる

実のところ、Amazon Web Services(AWS)やMicrosoft AzureのようなIaaS上でERPシステムを稼働するだけでも、ERPのクラウド化と言えなくもない。しかし、この場合、同じERPアプリケーションを一定期間ごとに使い続けなければならないといった点でオンプレミスと何ら変わりはない。

「IaaSを利用した場合、インフラの効率化は実現できるでしょう。しかし、オラクルではSaaSを推奨していくスタンスを貫いていきます。ただし、SaaSへの移行は段階的でも問題はありません」(原氏)

なぜ段階的な移行でも構わないかというと、オラクルのERPはシングルデータモデルの上で複数のアプリケーションを動かしているからである。例えば、まず人事のモジュールから導入し、次にSFAも利用したいとなっても、データモデルが1つであるためシームレスに導入・運用が行える。つまり、全体最適を目指した活用が可能なのだ。

「最初はやりやすいところから利用を始めて、他の業務に広げても同じデータモデルが使えます。企業に蓄積されているデータをいかに活用するかがDNAと自負しているからこそ、オラクルはシングルデータモデルにこだわってきたのです」と、原氏は強調する。

たとえクラウドサービスであったとしても、部署や業務ごとにサイロ化したシステムを導入したら、オンプレミスと同じ課題を抱えることになる。しかし、全社でデータが集約されていれば、新たなテクノロジーの活用にも大きな効果が期待できるだろう。

「例えば、AIを活用する際も、SaaSでありかつシングルデータモデルであることは大きな意味を持ってきます。われわれのERPは人材をリコメンドする機能も提供しています。こうした最新のテクノロジーも自然と業務に取り入れられるのです。業務の効率化などやり尽くしたという企業もあるでしょうが、まだまだAIで自動化できる領域はあります」と話した原氏は、最後に次のように力説した。

「企業ごとにクラウドへと進む道はまちまちです。一気にできる企業もあれば、段階的に進めたい企業もあるでしょう。そうした個々の企業のニーズに対し、複数の選択肢を提供できるのは、われわれがクラウドネイティブではないベンダーだからであり、そこにも当社の使命があると思っています」(原氏)
(タマク)

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