電通大、磁石を金属に近づけた際に生じる磁場による量子化の計算手法を発見

マイナビニュース / 2019年10月21日 13時21分

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電気通信大学(電通大)は、磁石を金属に近づけた際に生じる磁場中の量子化エネルギーの計算がヴェルナー・ハイゼンベルクによる「行列力学」の手法を用いることで導き出せることを発見したと発表した。

同成果は、同大大学院基盤理工学専攻の猪崎優喜氏(博士後期課程2年)と同 伏屋雄紀 准教授らによるもの。詳細は、米国物理学会が発行する学術誌で、物理学全領域を扱う速報誌「Physical Review Letters」に2019年10月10日付けで掲載された。

古来から良く知られている磁場だが、量子の世界では解明されていない多くの謎の源泉となっており、金属や半導体中の電子のエネルギーが磁場により量子化されることは知られていたが、量子化の間隔や規則性は物質にとり異なっており、それを正確に計算することは難しいとされていた。

一方、近年の固体物理学において、固体電子における相対論効果(スピン軌道結合)が基礎科学のみならず実用上においても注目を集めるようになってきたが、相対論効果を直接的に観測するために必要な、磁場を加えた際に生じる量子化エネルギーのスピン分裂の測定のためには、磁場による量子化の正確な計算が必要であるにも関わらず、これまでそれが困難であるという課題があった。

研究グループは今回、ホアキン・マズダク・ラッティンジャーとウォルター・コーンが導き出した周期ポテンシャルと磁場を両立する厳密な方程式を解く鍵は「交換関係」にあると考え、その交換関係を破らずに方程式を解く数学手法を模索した結果、ハイゼンベルクによる行列力学の手法を用いることで、方程式が解けることを突き止め、新たな理論手法法「π-matrix法」を考案。同法を用いて、相対論効果が強い物質として知られる半導体PbTeを計算。その結果、これまで磁場によって変わらないとされてきた相対論効果が、実は磁場により大きく変動することが判明したとのことで、研究グループでは、これにより実験と理論の間にあった隔たりを取り除き、すべてを矛盾無く説明できるようになったとする。

なお、研究グループでは今回の成果について、量子力学の誕生から一世紀以上かかっても解けなかった固体物理学における基礎的問題を解決できる理論手法であり、これにより固体物理学の基盤的理解を深めることにつながるとしているほか、将来的に強磁場領域における量子物理学が新しい段階へと進むことが期待されるとコメントしている。

また、π-matrix法自体は基本的な理論的枠組みであることから、組み合わせ次第でさまざまな応用が可能だとしており、例えば第一原理計算と組み合わせることで、さまざまな物質の磁場による量子化エネルギーを高精度に求めることができるようになり、将来の省エネルギー化やデバイスの小型化、高速化などにつながることが期待できるようになるとしている。
(マイナビニュース編集部)

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