中国、「再使用型宇宙機」の試験飛行に成功 - 小型のスペースシャトルか?

マイナビニュース / 2020年10月2日 6時0分

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中国国家航天局は2020年9月4日、「再使用可能な宇宙機の試験機」の打ち上げに成功したと発表した。宇宙機は宇宙に2日間滞在し、6日に着陸に成功したという。

機体の姿かたちや性能などの詳細は不明。スペースシャトルのような有翼型の宇宙機とみられる。

中国はこの試験を通じ、「再使用可能な宇宙機の技術に関する研究の重要な突破口を示すものであり、宇宙の平和利用に向けて、より便利で安価な宇宙往還の方法を実現する」としている。

再使用型宇宙船の打ち上げ

この宇宙機は4日、長征二号Fロケットに搭載され、四川省にある酒泉衛星発射センターから打ち上げられた。

打ち上げ時の写真などは公開されていないが、その後米軍が軌道上になんらかの物体が投入されたことを確認しており、打ち上げ成功が裏付けられている。軌道は高度約340km、軌道傾斜角50.2度の地球低軌道だった。

また、打ち上げ時刻も明らかにされていないが、軌道データから日本時間16時30分ごろと推定されている。

宇宙機はその後、2日間の軌道上滞在を経て、9月6日に着陸地点に帰還したという。

また、着陸の数時間前にあたる、日本時間6日7時30分ごろには、宇宙機からなんらかの小さな物体が放出されたことが確認されている。こちらも詳細は不明で、なんらかの機能をもった小型衛星である可能性もあれば、設計上、再突入前に捨てる必要がある部品などの可能性もある。
再使用型宇宙船とはどのような機体なのか?

中国は、この宇宙機について「再使用可能な宇宙機の技術に関する研究の重要な突破口を示すものであり、宇宙の平和利用に向けて、より便利で安価な宇宙往還の方法を実現する」と説明している以外は、姿かたちや性能などをはじめ、詳細をほとんど明らかにしていない。非軍事ミッションであれば、より多くの情報が公開されるはずであり、その点から軍事的な性質をもったミッションであるとみられる。

機体の形状については、「再使用可能な宇宙機の試験機」という名前だけでは有翼型かカプセル型は不明である。ただ、中国はかねてよりスペースシャトルのような有翼型の宇宙機の研究開発を続けており、2007年には「神龍」と呼ばれる小型実験機の存在も確認されている。また、再使用型のカプセル型宇宙船は、別のプロジェクトとして開発が進んでおり、すでに今年5月に試験飛行を行い、その画像なども広く公開されていることなどからも、今回飛行したのは有翼型の機体である可能性が高い。

打ち上げに使用された長征二号Fロケットは、主に有人宇宙船「神舟」の打ち上げに使用されているロケットで、地球低軌道に約8.6tの打ち上げ能力をもつことから、宇宙機もそれに近い質量をもっている可能性がある。ちなみに、米空軍が運用する小型の無人シャトル「X-37B」の質量は3.2tであり、中国の宇宙機はそれより2倍近い大型の機体である可能性もある。

また、この長征二号Fは有人ロケットであるため、人が乗るために安全装置や振動抑制機構など、無人のロケットには不要な装備がいくつもついている。そのロケットを使って打ち上げたということは、将来的にこの宇宙機や、もしくはその発展型などの機体に、宇宙飛行士を乗せて飛行させることを念頭に置いている可能性もある。

なお、仮に有翼の宇宙機であった場合、着陸場所は東経89.27度、北緯40.78度の、新疆ウイグル自治区バインゴリン・モンゴル自治州ロプノール県にある飛行施設である可能性がある。

この場所は数年前から、用途不明の長大な滑走路が建設されていることがわかっている。この滑走路はあらゆる方角からの離着陸に対応できるよう、3本の滑走路が三角形の形に配置されており、またその一つひとつも約5kmと長大で、その一方で一般的な航空機の運用施設のようなものが見られないなど、宇宙機の着陸場所と考えられる要素がいくつもある。

中国の有翼型宇宙船への関心は古く、1964年には中国の宇宙計画の父と称される銭学森氏が、再使用型の有翼型宇宙船の構想を発表している。その後、この計画は中止されるものの、1980年代にはふたたび有翼型宇宙船の研究が行われるようになった。このころ、米国のスペースシャトルの運用開始にともない、ソビエト連邦や欧州、そして日本でも有翼の宇宙機が研究、開発されており、ひとつのトレンドでもあった。

1990年代に入ると、カプセル型の宇宙船である神舟の開発が始まったことで、有翼宇宙船の研究はいったん棚上げとなった。ただ、それでも、たびたびシャトル型の大型宇宙船や、スペースプレーンなどのポンチ絵が将来構想として発表されたり、前述した神龍のような実験機が造られたりと、神舟の影に隠れつつも研究は続いていたようである。

また、近年中国で乱立している宇宙ベンチャーでも、いくつかの企業が、有翼型の宇宙船を開発していることがわかっている。

今回飛行した機体が、こうした過去のプロジェクトや、民間のプロジェクトとどの程度の関わりがあるのかは不明である。ただ近年、米空軍のX-37Bをはじめ、欧州やインドなどでも、低コストな宇宙輸送手段を目指して、有翼の宇宙機の研究、開発が進んでおり、この分野がふたたびトレンドとなりつつある。こうした潮流のなかで、数十年にわたって温め続けられてきた“中国版シャトル”が、いよいよ実現しつつあるのかもしれない。

○参考文献

・http://www.cnsa.gov.cn/n6758823/n6758838/c6810114/content.html
・http://www.cnsa.gov.cn/n6758823/n6758838/c6810113/content.html
・[JSR] Jonathan's Space Report, No. 783
・Experimental spaceplane - CZ-2F - Jiuquan LC43/91 - Sept. 4 2020 (~07:30 UTC)
・Dr Marco LangbroekさんはTwitterを使っています 「This is the potential landing site in the Taklamakan Desert: a triangular arrangement of 5 km long airstrips, one of it parallel to the orbital track of the spacecraft. The orbital track passes 42.5 km to the NW of it around 1:54 UT. Copernicus Sentinel images from 23 Aug 2020. https://t.co/4Ftm2t5mK9」 / Twitter

鳥嶋真也 とりしましんや

著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。 この著者の記事一覧はこちら
(鳥嶋真也)

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