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佐野正弘のケータイ業界情報局 第48回 MVNOの「OCN モバイル ONE」、専用アプリ不要の通話定額を実現できた理由

マイナビニュース / 2021年4月8日 7時0分

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画像提供:マイナビニュース

NTTコミュニケーションズは3月25日、MVNOとして提供しているモバイル通信サービス「OCN モバイル ONE」の新料金プランを発表しました。従来より大幅に安い料金を実現しているだけでなく、通話料が安くなるサービス「OCN でんわ」が専用アプリ不要で利用できるのが大きな特徴となっています。なぜ、同社はこのような仕組みを実現できたのでしょうか。

新料金プランは通話サービスの充実がポイント

NTTドコモの「ahamo」やKDDIの「povo」、ソフトバンクの「LINEMO」など、ここ最近大きな注目を集めた各社の低価格でお得な料金プランが相次いでサービスを開始しています。発表後からさまざまな変更が加わったり、利用できないサービスがあとから明らかになったりするなどして、少なからず混乱も生じましたが、ようやくサービスを開始したことで、ひとまず携帯大手の新料金に関する動向は落ち着くものと考えられます。

一方で、ここ最近相次いでいるのが、MVNOが携帯大手に対抗するべく新料金プランを発表する動きです。すでに、インターネットイニシアティブ(IIJ)やオプテージなど、大手を中心にいくつかのMVNOが新料金プランを発表していますが、大手の中で唯一動きを見せていなかったNTTコミュニケーションズの「OCN モバイル ONE」も、3月25日に新料金プランを発表しています。

同社の新料金プランは、高速データ通信量が1GBから10GBまでの4つのコースが用意されており、音声通話付きのコースであれば1GBのコースで月額770円、10GBのコースでも1,760円。以前の料金はそれぞれ月額1,298円、3,168円だったので、かなりの値下げとなったことは確かでしょう。

ただそれでも、同社の新料金プランは他社と比べた場合、後発ながら最安値というわけではありません。実際、IIJ「IIJmio」の「ギガプラン」は高速データ通信量2GBで月額858円、ソニーネットワークコミュニケーションズ「nuroモバイル」の「バリュープラン」は3GBで月額792円と、1GBあたりの単価を考えればもっと安い料金を実現しています。

しかしながら、この新料金プランにはもう1つ大きな特徴が備わっています。4月7日より通話料が30秒あたり11円と、通常の半額となる「OCN でんわ」がスマートフォン標準の電話アプリから利用できるのです。OCN でんわ自体は、回線に依存しないオープンなサービスなのですが、通常は電話番号の前に専用のプレフィックス番号(0035-44)を付けて電話をかけるか、専用のアプリを使って電話をかけなければ利用できません。

ですが、OCN モバイル ONEの新料金プランではそうした手間が不要で、標準の通話アプリから電話をかけると自動的にOCN でんわで通話ができる仕組みになっています。しかも、OCN でんわでは、従来提供してきた10分間のかけ放題などだけでなく、月額1,430円を追加すると音声通話がし放題になる「完全かけ放題」も提供するとしていることから、通話サービスの利便性の高さはOCN モバイル ONEの大きな強みになるといえるでしょう。
「プレフィックス番号自動付与」がMVNOの長年の課題解消に

なぜ、OCN モバイル ONEはアプリ不要でOCN でんわが利用できるのかというと、そこにはMVNOにネットワークを貸す携帯電話事業者(MNO)側の変化が大きく影響しています。

これまでMVNOの通話料は、MNO側が提供条件を見直さず料金が下がらなかったことから、30秒22円の従量制のみで高止まりしていました。そこで多くのMVNOは、携帯電話会社よりも安価なネットワークを経由することで通話料を安くできる中継電話サービスを利用することで通話料を引き下げたり、5分、10分の通話定額サービスを提供したりしてきました。OCN でんわもその1つといえるものです。

ですが、中継電話サービスを利用するには、電話番号の前にプレフィックス番号を付ける必要があり、それが面倒な場合は自動的に番号を付与してくれる専用の通話アプリを使う必要がありました。ただ、いずれの方法でも利用者にとっては不便な要素がいくつかあります。その代表例といえるのが、相手からかかってきた電話に折り返しする時です。

なぜなら、電話をかける時は専用のアプリを選べても、受ける時はスマートフォン標準の通話アプリを使う必要があり、着信通知も標準アプリから届く形となります。それゆえ、着信通知からそのまま折り返し電話をしてしまうと、うっかり専用アプリを経由せずに電話をかけてしまい通話料が高くなり、利用者にとって不満を抱く要素となっていたのです。

そこで、MVNO側は音声通話の貸出条件の改善を訴え、総務省で議論が進められていました。その中で浮上したのが、プレフィックス番号の自動付与です。これは、総務省の有識者会議「接続料の算定等に関する研究会」の中で、MNOの1社であるNTTドコモが提案し、その後各社が採用するに至ったもの。MNOのネットワーク上でプレフィックス番号を付与してくれれば、標準の通話アプリでも安価な中継電話サービスが手間なく利用できるので、先の電話の折り返し問題の解消にもつながります。

そこでMVNO側は、この機能の実現を待って通話定額サービスを強化した新料金プランを投入するとみられているのですが、その前にMNO側がahamoなどの低料金プランを相次いで投入してきたため、その実現を待っていては競争力が失われる緊急事態となってしまいました。そこで多くのMVNOは、プレフィックス番号の自動付与をいったん見送り、緊急的に新料金プランを投入するに至ったといえるでしょう。

一方、NTTコミュニケーションズは、MVNO大手の中では最後発で新料金プランを打ち出しているのに加え、同社が回線を借りているのはプレフィックス番号自動付与を提案したNTTドコモだけ。複数のMNOから回線を借りている他社と比べて準備が整いやすかったこともあってか、いち早くそれをサービスに組み込み、専用アプリ不要でOCN でんわが利用できるサービスを実現できたといえるでしょう。

そうしたことから、もう少し時間が経てば、専用アプリ不要で安価な音声通話サービスや、通話定額サービスを提供するMVNOは急増するのではないかと考えられます。MVNOにとって、音声通話サービスの高止まりは長年の課題となっていただけに、プレフィックス番号自動付与がMVNOが競争力を向上するうえで重要な動きとなることは確かでしょう。

佐野正弘 福島県出身、東北工業大学卒。エンジニアとしてデジタルコンテンツの開発を手がけた後、携帯電話・モバイル専門のライターに転身。現在では業界動向からカルチャーに至るまで、携帯電話に関連した幅広い分野の執筆を手がける。 この著者の記事一覧はこちら
(佐野正弘)

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