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筑波大、ブラックホール周囲の「超高光度降着円盤」の歳差運動を実証

マイナビニュース / 2024年9月24日 17時19分

画像提供:マイナビニュース

筑波大学は9月20日、ブラックホール周囲のガスの渦巻きである降着円盤のうち、光の放射圧がブラックホールの重力に匹敵するほどの光度を持つ「超高光度降着円盤」が、ブラックホールの自転によって歳差運動することを、一般相対性理論に基づく大規模数値シミュレーションで実証したことを発表した。

同成果は、筑波大 計算科学研究センターの朝比奈雄太助教らの研究チームによるもの。詳細は、米天体物理学専門誌「The Astrophysical Journal」に掲載された。

ブラックホールの巨大な重力によって捉えられた物質(ガス)は、その周囲をとてつもない速度で旋回するようになり、降着円盤が形成される。同円盤は、宇宙で最も効率的なエネルギー変換機構の1つであり、ブラックホール周辺で起こる光の放射や、光速に近い速度で噴き出すプラズマの流れである(相対論的)ジェットの発生源と考えられている。

いうまでもなく、ブラックホールは一切の光を出さない天体のため、直接的にその自転を光学的に観測することは不可能であるが、仮にブラックホールが自転していると仮定した場合、降着円盤は、回転するコマの軸がぐらつくような歳差運動を起こし、その結果、放射やジェットの時間変動が引き起こされる可能性があるという。もしその検証を行うことができれば、ブラックホールが自転していることの強力な証拠となるとする。近年、光度が低い降着円盤の歳差運動については、M87銀河中心部のブラックホールの観測などで実証が進んでいるが、太陽の数百万倍以上のX線を放つ、超高輝度X線源に存在すると考えられる超高光度降着円盤のように、極めて光度の高い降着円盤においても同様の現象が見られるかどうかは、解明されていなかったという。

そうした中、研究チームは物質が、ブラックホール周囲の歪んだ時空の中でどのように運動するのかを、放射の伝搬や電磁場の変動と同時に解析する、天文学における最先端の数値シミュレーション技術として、「一般相対論的放射電磁流体力学シミュレーション」を長年にわたって開発してきた。同手法は、従来法とは異なり、放射の影響を考慮することで、非常に明るい円盤の挙動を解析することが可能である。そこで今回の研究では、同手法を用いて超高光度降着円盤の挙動についての解析を行うことにしたとする。

シミュレーションの結果、従来の低光度の降着円盤だけでなく、超高光度円盤も歳差運動をすることの実証に成功したという。さらに、その歳差運動により、強力な放射やジェットの噴出方向も、ブラックホールの自転軸の周りを回るように変化することも明らかにされた。この現象により、一部の超高輝度X線源で見られる1秒未満から数秒の周期的な光度の変化が説明可能であることから、超高輝度X線源のブラックホールが自転している可能性を強く示唆しているとする。

ブラックホールの自転によって引き起こされる降着円盤の歳差運動は、これまで主に光度の低い円盤で研究されてきたが、今回の研究により、最も明るい降着円盤である超高光度円盤でも歳差運動が起こることが突き止められた。今後は、さらに長時間にわたるシミュレーションを行い、観測データと比較することで、ブラックホールの自転の有無や速度を検証することが必要だという。これにより、自転するブラックホール周辺の時空の構造や、そこで起こる現象の理解が進み、一般相対性理論のさらなる検証にも貢献することが期待されるとしている。
(波留久泉)

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