KEK、重力波を用いてダークマターの“起源”を探る革新的な手法を開発
マイナビニュース / 2024年9月24日 17時25分
高エネルギー加速器研究機構(KEK)は9月20日、ブラックホール同士の合体で発生する重力波が、太陽系に到達するまでに通過したダークマターからの重力レンズによる回折効果によってどのように変調されるのかを調べることで、ダークマターの起源を探れることを示したと発表した。
同成果は、KEK 量子場計測システム国際拠点のヴォロディミール・タキストフ特任准教授/主任研究員らの国際共同研究チームによるもの。詳細は、米国物理学会が刊行する機関学術誌「Physical Review Letters」に掲載された。
ダークマターは、我々が観測可能な通常物質とは重力でしか相互作用せず、光学的には観測できないため、現時点では正体不明の物質であるとされるが、宇宙の総物質量のうちのおよそ85%を占めており、通常物質のおよそ6倍もあると見積もられている。これまでのその探索の歴史においては、ダークマターを未知の素粒子と想定し、極めて希ではあるが、通常物質との相互作用があるものと仮定した観測実験などを用いて、探索が行われてきた。しかし現在は、より一般的で広範な探索シナリオ、特にマクロな物質とミクロな物質が混在している場合のシナリオが検討されているという。
2015年に米国の重力波望遠鏡LIGOにより、2つの恒星級ブラックホールの合体による重力波が発見されて以来、同様の事象が何十件も検出されている(中にはブラックホールと中性子星や、中性子星同士の合体による重力波も観測されている)。こうした事象が数多く観測されるということは、ブラックホールが宇宙には数多く存在しているということを示しており、そこから天体起源でないブラックホールがダークマターの一部であるという考えが脚光を浴びるようになっているという。その1つが、原始ブラックホール(PBH)だ。
PBHは、ビッグバンの数秒後に多量に形成されたと考えられており、大質量星の超新星爆発の後に残される恒星級ブラックホールや、宇宙の大半の銀河の中心に位置すると考えられている超大質量ブラックホールとは異なるもの。そしてこのPBHが、従来の新粒子とはまったく異なるダークマターの候補となっているのである。しかし、PBHを検出・同定し、天体由来の普通のブラックホールと区別する方法を探すことは、非常に大きな課題となっていたとする。
なお、PBHは天体の質量程度しかないため、すべてのダークマターをPBHだけで説明するのは困難とする。そのため、上述したように、ダークマターは1種類の何かではなく、PBHと未知の粒子など、複数からなる可能性が考えられるようになってきたのである。このようなシナリオでPBHは生成された後、次第に周囲に粒子のダークマターのハローをまとい、“服を着た”PBHになることが予想されるという。しかし、そのシナリオをテストするための手法がこれまでないことが大きな課題だった。
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