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北大、冬眠するほ乳類が持つ長時間の低温に耐えられる細胞の秘密を解明

マイナビニュース / 2024年9月24日 20時29分

画像提供:マイナビニュース

北海道大学(北大)は9月20日、冬眠する哺乳類であるシリアンハムスターの細胞が長時間の低温に耐えられる仕組みの一端を明らかにしたことを発表した。

同成果は、北大 低温科学研究所の曽根正光助教、同・山口良文教授らの研究チームによるもの。詳細は、英科学誌「Nature」系の細胞死に関する全般を扱う学術誌「Cell Death and Disease」に掲載された。

ハムスターなどの冬眠するほ乳類は、冬眠中に体温が10℃以下にまで下がる時もあるが、それでも何の問題もなく活動を再開することが可能。過去の実験から、冬眠ほ乳類の培養細胞はヒトなどの冬眠しないほ乳類のものよりも、低温環境で長く生きられることが確認されている。こうした、冬眠ほ乳類の細胞自身が持つ低温耐性が、冬眠時の極端な低体温によるダメージを受けない理由の1つとされている。

また、ヒト細胞を低温培養すると、細胞の脂質の酸化により最終的に細胞膜が破壊される細胞死の一種「フェロトーシス」が起きてしまう。冬眠ほ乳類の細胞で、それをどのように防いでいるのかは不明で、低温耐性に必要な遺伝子などもわかっていない。そこで研究チームは今回、冬眠ほ乳類のがん細胞を用いた研究を行うことにしたとする。

シリアンハムスター(以下、ハムスター)のがん細胞は低温耐性を持っており、今回の研究では、4℃で5日以上生存できる膵臓がん細胞が使用された。最初に、ヒト細胞に低温耐性を与えることのできるハムスター遺伝子のスクリーニングを行うため、ハムスターのがん細胞で働いている遺伝子のライブラリーが作製された。そして、4℃では1日で大半が死んでしまうヒトのがん細胞に対し、そこから選ばれたさまざまなハムスター遺伝子が導入され、6日間培養された。すると、一部の細胞が生き残っており、37℃に復温させたところ増殖を再開し、細胞数が回復したという。

そして検証の結果、ヒトがん細胞に低温・復温耐性を与えたハムスター遺伝子は「Gpx4」であることが判明。同遺伝子から作られるタンパク質は、脂質の酸化を抑える酵素として働き、フェロトーシスを防ぐのに重要な役割を果たしていたのである。実際に、ハムスターやヒトのGpx4の働きを強めたところ、低温でのフェロトーシスを抑制できたとした。

次に、Gpx4がハムスター細胞の低温耐性にも重要なのかが調べられた。Gpx4を破壊したハムスター細胞が作られ、4℃で培養されたところ、2日間以降に徐々に細胞死を起こし、5日目には大半が死滅してしまったという。これはハムスター細胞が低温で長期間生存するためには、Gpx4が必要なことを意味するとした。その一方で、Gpx4を破壊されてもハムスター細胞は4℃環境で2日間も生存したため、Gpx4以外にも低温による細胞死を防ぐメカニズムが備わっていることが推測された。

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