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人間の感覚を"拡張"し、乗り物を安全に楽しくするデバイスとは? -ヤマハ発動機「感覚拡張HMI」開発者に聞くその仕組みと秘密

マイナビニュース / 2024年11月29日 17時0分

後方から車が接近すると、距離の変化に合わせて音や位置を変えてヘルメット後部に取り付けられた7つのスピーカーからサウンドが発生します。

後ろから車が接近している状況は不協和音で、それが自分を追い抜く、つまり危険が去ると和音に変化します。真後ろにぴったりくっついているような、いわゆる煽り運転をされているような場合は最も気持ちの悪い不協和音になりますね。

ただし、あまりに不協和音を聞きすぎるのもストレスになるので、そこはクリエイターのセンスが問われる部分ですし、本当に危ないものだけ音が鳴る仕組みにもしています。過去の事故データに基づいて危険度の基準を考えたり、危険度によってどの程度の不協和音を出すかといったことも考慮して、最適な音のクリエイションが続いています。

――車やバイクが出すアラート音は「ピーピー」という音が多い印象ですが、このデバイスでは「ファー」という和音や不協和音なのですね。

僕たちも最初は「単純にアラート音を鳴らせば良いのではないか」と考えていたんです。でも、「ピー」というアラート音で実験をしたところ、場合によっては人間のパフォーマンスが低下するという結果が出ちゃいまして……。

――えっ! アラート音でパフォーマンスが低下するんですか!?

ピーピーと鳴っているだけだと、「何かが起きている」ことはわかっても、それが「何を意味してるか」までは理解できないんです。後ろから何かが接近しているのか、車線を逸脱しているのか、ガソリンがなくなっているのか、運転手の眠気を感知したのか……アラートの意味がわからないと「えっ、今の何?」と考えたり、 あちこち見回したりして、結果的に注意が削がれてしまいます。

その音自体が何を意味しているのか、人間にとって直観的にわかりやすい音にしなければならない。これが今回の研究のポイントですね。
○”感動”を研究する、ヤマハ発動機の「人間研究」

――「感覚拡張HMI」の研究は、いつ頃から始められているのでしょうか。

2017年頃からです。「10年後に新しい技術の種となるような最先端の研究を提案する」というヤマハ発動機の社内公募型プロジェクトに応募して、採用されたことがキッカケでした。

バイクや電動アシスト自転車、ボートなどを手掛けるヤマハ発動機は、人間の感覚・感性に合った技術開発を行っています。人と機械を高い次元で一体化させることにより、人の悦びや興奮をつくりだす「人機官能」という独自の開発思想を持っていますし、2024年からは基礎研究として「人間研究」にも注力しています。「感覚拡張HMI」も、この人間研究の一環です。

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