北大、太陽系材料のカーボンダストの生成に関する微小重力実験を実施
マイナビニュース / 2024年11月29日 19時20分
北海道大学(北大)は11月28日、スウェーデン宇宙公社(SSC)の観測ロケット「MASER」16号機を用いて、微小重力環境下で、天体から放出される高温のガスが冷える過程で生成される主要な宇宙ダストで、ナノメートルスケールの微粒子である「カーボンダスト」の核生成過程の解明を目的とした実験に成功したことを発表した。
同成果は、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とドイツ航空宇宙センター(DLR)との国際協力を受け、北大 低温科学研究所の木村勇気教授のほか、独・ブラウンシュヴァイク工科大学の研究者らも参加した国際共同研究チームによるもの。
隕石や「はやぶさ」シリーズなどの探査機が持ち帰った地球外物質には、太陽系の年齢よりも古い炭素の微粒子であるカーボンダストが含まれている。同物質は、約46億年前に誕生した太陽系に、材料をもたらした天体が放出したガスの中で生成された星の欠片である宇宙ダストであり、生成された後に星間空間を漂い、分子雲から原始太陽系星雲を経て太陽系の材料の一部となったのである。
炭素は太陽系の固体物質の主要な構成物質の1つで、生命へとつながる有機物の主要元素でもあるため、カーボンダストが宇宙で生成される条件や、生成の現場となる天体環境に関する研究が進められている。しかし、これまでに生成過程を理論的に説明するために使うべき物性値などの値を決めることができていなかったとする。これは、炭素がダイヤモンド、グラファイト、フラーレン、非晶質(ガラス状態)と多様な形態を取るため、カーボンダストの生成過程を考える時に用いるべき値に大きな不定性があることが1つの要因だという。
研究チームは2019年にMASERロケット14号機を用いて行った炭化チタンを含んだ炭素質粒子の生成実験において、宇宙ダストの生成過程の理解には、ナノ領域の特異性と非古典的な生成経路が重要であることを解明済みだ。さらに、カーボンダストが非古典的な生成経路を取ると、他の炭素質物質の生成過程の理解にも影響することも突き止めていた。
そこで今回の実験では、天体周辺で形成されるのと同様の生成過程を経て、同じような温度で同じような形態を持った炭素粒子が形成することが期待されることから、カーボンダストが天体の放出ガス中で生成されるプロセスを模擬した実験を微小重力環境で実施。ガスの冷却速度と炭素の原子同士の衝突頻度の比が、天体周辺での宇宙ダストの生成過程と同様になる実験を行ったという。
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