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「どう近づいていてもどう接していてもやはり他者のことはわからない。それでも人は感情を求めるし、愛を求めている」安藤政信監督『さくら、』インタビュー

NeoL / 2021年9月10日 17時0分

「どう近づいていてもどう接していてもやはり他者のことはわからない。それでも人は感情を求めるし、愛を求めている」安藤政信監督『さくら、』インタビュー



“変化”をテーマとした36名の監督による短編映画を4シーズンに渡りオムニバス形式で公開する『MIRRORLIAR FILMS』。そのSeason1が9月17日より全国公開される。本プロジェクトのプロデューサーである盟友・山田孝之の誘いにより初監督に挑戦した安藤政信が作り上げた15分の短編『さくら、』は、写真家としても活躍する安藤ならではの光や色彩の美しさが際立ち、展開されるストーリーと同時に様々なメタファーが画の中に込められた濃厚なアート・ムービーだ。




――劇中では恋愛模様が展開されますが、食と色欲の比喩であったり、象徴的にブルーノ・シュルツやアンゼルム・キーファーらの作品集が見せられることなど、人間や盛衰に関してなど多くの隠喩やメタファーを含んだ作品だと思いました。


安藤「ありがとうございます。(山田)孝之から誘いを受けて15分の映像作品をつくるとなったとき、最初は15分間ずっと人間同士が求め合う姿を描こうと思ったんです。人はなぜ求め合うのか、ときに倫理を超えても求め合うのはなぜか、快楽や痛み、罪と罰、そうしたことを説明的ではなく描きたかった。けれども実際に表現方法や、感情のつくり方を突き詰めていった結果が完成した「さくら、」です。人は喉が乾けば求めるし、お腹が減れば求めるし、傷つけば求めるし、一瞬的な快楽も求める。けれどそれは状況によっては許されなかったりもします。そういうことを全て比喩として散りばめているので、観る方にたくさん考えていただけたらと思います。完結しない面白さこそが人間であるということも描いたつもりです。どう近づいていてもどう接していてもやはり他者のことはわからない。それでも人は感情を求めるし、愛を求めているということを描きたかったし、そういう作品で観る人の記憶に入り込みたいと思いました」



――写真家としての視点も活かされていて、画づくりも素晴らしかったです。特に寝室の光は美しく、衣装や室内の装飾も相まってクリムトの絵画のようでした。


安藤「クリムト、いいですよね。クリムト展にも行きましたが本当に刺激を受けました。今作の画づくりに関しては自分の頭の中にある全てのものを参照しています。曾我蕭白(江戸時代中きの絵師)や下村観山(明治―昭和初期の日本画家)、河鍋暁斎(幕末―明治の浮世絵師、日本画家)だったりという自分が好きな絵の文脈や、アレキサンダー・マックイーンの作品集からインスパイアされた骨のイメージなどです。制作に参加してくれたクリエイターの方々とは、言葉で説明できないときは自分で撮った写真の色や光、ロケハンで自分にはどう見えたかといったことを伝え共有してつくっていきました。自分がGIVENCHYのフィレンチェのショーに行った際、そのショーのテーブルに飾られていた花や食べ物を撮影した写真から美術監督がイメージを拾ってくれて用意してくれたり、自分の頭の中とみんなの頭の中を繋ぎ合わせ、具体として作り上げていく感覚は役者とは違う喜びでしたね」







――撮影監督は田島一成さん、美術監督は佐々木尚さん、ヘアはShinYaさん、スタイリストは長瀬哲郎さんと安藤さんと親交の深い制作陣ですが、ゆえにそうしたイメージの共有はスムースだったんですね。


安藤「田島さんは写真の兄貴的存在でもあったんですが映画では対等でないといけないし、実はロケハンのときからみんなとは色々ぶつかりました。そもそもいままで自分には友達がいないと思っていたんです。だから(山田)孝之に誘われたときも最初は1人で作ろうとしていて、孝之をいくつかのシチュエーションで写真におさめ、それをオーバーラップさせて、音楽もつくって1本の映画にしようと構想していたんです。でも田島さんと食事をしたときに映画の話をしたら、俺がカメラやるよと言ってくれたんです。それならとShinYaや哲郎、佐々木くんに連絡してお願いしました。音楽に関しては、BenjazzyやTiji Jojo、Vingo、YZERRたちに映画のトラックが必要だと話したら、KMくん(トラックメーカー/プロデューサー)を紹介しますと言ってくれたので会いに行きました。また別の伝手でbrodinskiにもトラック作ってもらって。そうしているうちに、俺にはこんなにも友達がいた! と気付かされました(笑)。
ただ俺は俳優としては長年演じてきたけれど、映画を撮るのは初めて。そんな当たり前のことをすっかり忘れていたんですよ。それでいざロケハンに行ったら、どういうイメージなのか、どのくらいの幅があったらこう撮れるとか、バックショットはどのくらいの距離感だとか、みんなからの具体的な質問に対して答えることができなかったんです。その歯がゆさからふてくされたような態度をとってしまったこともありました。後に素晴らしい才能を持った人たちが自分のために集まってくれているのにこんな態度をとるなんて失礼極まりないと反省をして一人一人にメールを送りました。自分は無知でしたし監督としての経験値がなかった。ちゃんと仕切り直しますということを伝えて、そこからは恥じることなく質問をし、意見も受け入れられるようになり、セッションができるようになってから、どういうものが欲しいかを伝えられるようになりました」







――山田さん、森川葵さんへの演技指導に関してはいかがでしたか。


安藤「2人がロケ地に入ってきてくれた日から、全てのシーンについて説明して一緒に話し合いました。服を着たままではあるもののラブシーンがあるので、特に森川さんの負担を取り除いて本番を迎えられるように丁寧に検証したかったんです。服を着たままというのは、アイロニーとしての表現でもあります。映画は嘘をどういう風にリアリティとして見せるかというものでもあるから、服を着ていても求め合う姿を表現できるはず。感情と感情の共有を見せることができると確信していました。そうしたことを森川さんと話していたら、やはりラブシーンに関して不安を持っていたことがわかったので、検証して本当によかったなと思いました。不安や負担を取り除いたり、守ることも監督の役目だと思うし、それに応えて彼女は凄まじい感情を出して演じてくれて感動しました」


――森川さんの感情表現はすごくリアルでしたね。


安藤「そういう彼女を撮りたかったんです。最初は孝之を撮るということから始まったけど、5日間の撮影の4日目の夜に、孝之にこれを森川さんの映画にしたいと話しました。彼女があそこまで感情を出してくれたものを無駄にしたくない、でも孝之のことももちろん印象に刻まれるものにしたいと。監督にそんなことを言われたら役者としては今更何を血迷ってるのかと思うだろうけど、孝之は『彼女もきっと喜ぶはずです』と言ってくれたし、自分より作品のことを優先してくれた。それで次の日、助監督や田島さんにも説明して、孝之側にカメラをセッティングしていたものを森川さん側にしてもらって横顔を撮りました。それがオープニング映像です」



――最後に、監督という経験を経て、俳優として演じる際にも作品や制作への見方は変わりましたか。


安藤「見方は変わりません。俺はクリエイティヴは感謝や敬意、愛をもって成っているという考えなんです。だから写真を撮るときには被写体をとても大切にします。その考えは変わらないけど、今作での経験を経て、撮る側は役者や被写体をちゃんと大切にするべきだとより一層強く思うようになりました」







photography Yudai Kusano(IG)
hair&make-up Miyo Tanaka
style Taichi Kawatani
text & edit Ryoko Kuwaharam(T / IG)
special thanks Fogg Inc.



shirt ¥46,200 pants ¥50,600 belt ¥22,000(YOHJI YAMAMOTO)
YOHJI YAMAMOTO TEL:03-5463-1500





『MIRRORLIAR FILMS Season1』
(安藤政信監督「さくら、」、枝優花監督「Petto」、武正晴監督「暴れる、女」、⻄遼太郎監督 「充電人」、花田陵監督「INSIDE」 、針生悠伺監督「B級文化遺産」、藤原知之監督「無題」、三吉彩花監督「inside you」、山下敦弘監督「無事なる三匹プラスワン コロナ死闘篇」)
『さくら、』監督:安藤政信 出演:山田孝之、森川葵、安藤政信

9月17日(金)全国順次公開
https://mirrorliar.com
配給:イオンエンターテイメント
2021/日本/カラー/121 分
© 2021 MIRRORLIAR FILMS PROJECT


《MIRRORLIAR FILMS(ミラーライアーフィルムズ)》はクリエイターの発掘・育成を目的に、映画製作のきっかけや魅力を届けるために生まれた短編映画制作プロジェクト。年齢や性別、職業やジャンルに関係なく、メジャーとインディーズが融合した、自由で新しい映画製作に挑戦する。
“変化”をテーマとした36名の監督による短編映画を4シーズンに渡りオムニハバス形式で公開。初監督多数、俳優、漫画家、ミュージシャンらが参加し、一般公募枠の12作品は、419作品の応募から選抜された。映画祭の開催ほか、多様な作品を多様な形で国内外に届けていく。
参加監督:Azumi Hasegawa/阿部進之介/安藤政信/井樫彩/池田エライザ/枝優花/GAZEBO /紀里谷和明/Ken Shinozaki/駒谷揚/齊藤工/志尊淳/柴咲コウ/柴田有麿/武正晴/⻄遼太郎 /野﨑浩貴/花田陵/林隆行/針生悠伺/福永壮志/藤井道人/藤原知之/真壁勇樹/松居大悟/三島 有紀子/水川あさみ/三吉彩花/村岡哲至/村上リ子/ムロツヨシ/山下敦弘/山田佳奈/山田孝之/ 李闘士男/渡辺大知 (五十音順)

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