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tofubeats『POSITIVE』ロングインタヴュー(前編)

NeoL / 2015年9月24日 19時0分

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tofubeats『POSITIVE』ロングインタヴュー(前編)

 


tofubeatsはメジャー移籍後のセカンド・アルバム『POSITIVE』でクラブ・ミュージック/ヒップホップが出自のプロデューサー/ヴォーカリストにしかできない方法論と底知れぬ執念で2015年の“J-POP”を作り上げようとしている。それは前作『First Album』の延長にあるものの、“もうひとつ向こう側”に行くための努力にまったく余念がない。小室哲哉、KREVA、岸田繁(くるり)、中納良恵(EGO-WRAPPIN')をはじめとする大物ミュージシャンとの共作も自然体でこなし、気負いなど微塵も感じさせない。実はそれだけですごいことだ。この理知的かつ情熱的な現在24歳の男はどこからやって来て、いまどこにいるのだろうか。『POSITIVE』とそこに至るひとつの軌跡、そして作品の背景にある価値観について語ってくれた。


 

――『POSITIVE』という直球のタイトルにした気持ちから聞かせてもらえますか? 

tofubeats「大それたことではないんです。曲ができなくて、ワーナーのA&Rに会議室で、『tofuくん、もっとポジティヴになったほうがいいよ』と言われたんです。俺は『そうは言ってもできないものはできないんです』と返して水掛論をくり広げまして。すると、A&Rがそれだけでも仕方がないからということで、その翌日にアルバムのデザイン会議を入れてくれたんですね。タイトルはさておき布陣だけでも決めようと。そこでデザイナーから『タイトルはどうなってんの?』と訊かれるんですが、曲もタイトルもできていないわけです。『最近何かなかったの?』と振られて、『そういえば、昨日ポジティヴになれって言われた』と。デザイナーが『ポジティヴかあ』とか言いながら、その言葉を紙に書くと、『エネルゲンみたいでカッコイイね』ということになり、仮タイトルがポジティヴになってそのまま残ったんです」

――曲ができない状態に陥っていたんですね。

tofubeats「タイアップ曲の曲作りで職業的なところで決着できなくて、時間がかかっちゃっていたんです。だからスランプとかそういうことではないんです」

――1曲目の“DANCE&DANCE / intro”で「音楽の力で お願いなんでも出来るよな気がする MUSIC」というポジティヴなサビのあとに、「心の内まで見ないでよ 強がっているのに」と意味深な歌詞が続きますよね。

tofubeats「この曲がまさに関西ネットの音楽番組『音力-ONCHIKA-』のタイアップ曲なんです。みんながこの曲を聴いて、『ポジティヴだね~!』となれば熱い! そういう勘違いがいちばん良いと思うんですね。サビは先に作ってTV局に送ってあったんです。AメロとBメロをあとから書いてバランスを取ろうとしたんですね。曲に関してはツルッとできあがっていたんですけど、サビだけは職業性みたいなのがもうちょっと必要だと実感しました」

――アルバムの布陣を決めようという打ち合わせの中で、小室哲哉さんやKREVAさんをはじめとするゲストの方へのオファーをtofuくんから提案していったんですか?

tofubeats「ほぼそうですね。“POSITIVE”のDream Amiさんはラジオ番組で僕の曲を好きだっておっしゃっていてくれたので、そのような些細なラブコールを受けて、こちら側が大事に持って行くというパターンですね(笑)」



 

tofubeats / POSITIVE feat. Dream Ami


 

 

――例えば、前作『First Album』でも森高千里さん、BONNIE PINKさん、藤井隆さんといった豪華なゲスト陣が参加されていますけど、小室さんやKREVAさんのtofuくんの印象や思い入れはどういうものですか?

tofubeats「正直言うと、自分が強く思い入れのある、ファンだった方々との共演が『First Album』で実現できてしまったところがあるんです。BONNIEさんや藤井さんといった自分が会いたかった人にすべて会えてしまった。なんなら藤井さんには関西の芸人さんにまで会わせてもらってしまって、憧れがガンガン叶っていったんです。自分の予定よりちょっと早回しで物事が進んでいったことで、『この先をどう生きていこう?』となったときに、“もうひとつ向こう側”っていう意味で、KREVAさんにお願いしたというのはありますね」

――小室さんに関してはどうですか?

tofubeats「僕は宇多田ヒカルさんとか、ポストJ-POPで育っているんですね。中島美嘉さんとかDefSTAR Records全盛期のころです。プロデューサーで言うと、松尾潔さんや中田ヤスタカさんですよね。なので、小室さんに関して言うと、J-POP DJを申し訳ナイタズの一門に入って学ぶなかで、小室さんがプロデュースした内田有紀さんの“Only You”(1995年)とかを過去のディスコグラフィーへのリスペクトとして知っていくんです。J-POPでジャングルを出してくれてありがとうございます、というフェチっぽいところから入ってる」

――ということは、小室さんとは直接の面識もなかった?

tofubeats「小室さんとは去年の年末の<カウントダウン・ジャパン>で初めてお会いして、お話しさせてもらったんです。そこで、音楽的な反射神経がめちゃ高くて、かつすごいしゃべられる方だっていうのがわかったんですよ。僕がやりたい音楽のこともすぐ言い当ててくれた上に、ミュージシャンとしてめっちゃ対等に接してくれてものすごくビックリしたんです。それで『一緒にやってくれるんちゃうかな?』と思ってお願いしたんです」

――小室さんとの“Throw your laptop on the fire”はなんとも形容しがたい突き抜けた楽曲で、ある意味トランスですよね。 

tofubeats「小室さんの音はやっぱり特殊なので、便宜上トランスと言うしかない、みたいな感じですよね。僕もこの曲をなんて言ったらいいかわからないんですけど、そういう曲ができたのがすっごいうれしかったっていうのはあります。小室さんも仕上がりを聴いて笑ってましたし、僕も笑いましたね(笑)。そういう曲が作りたいっていうのもあるから良かったですね」

――KREVAさんとの“Too Many Girl”の制作はどうでした?

tofubeats「『POSITIVE』というタイトルが決まってからKREVAさんにオファーしているんですけど、『トラックを聴いてから判断させて欲しい』という返事をもらえたんです。それでトラックと『Too Many Girls…』というサビの歌を吹き込んだものを送ったんです。やっぱりKREVAさんはイケメンMCだから、そういうサビにして、KREVAさんがそれに対して歌ってくれて、その後僕が2ヴァース目を書き足しましたね。2、3往復ぐらいのメールのやりとりで完成しましたね。ちなみにKREVAさんとは曲を作ったあとに<ロック・イン・ジャパン>で初めて会ってますね」

――リスナーとしての最初のKREVA体験はどこでしたか?

tofubeats「小5、小6でキック(KICK THE CAN CREW)ですね。そのころが『VITALIZER』(2002年)が出たあとじゃないんですかね。だから、日本語ラップ原体験が、リップ(RIP SLYME)とキックなんですよ。で、中学校に入ってからブッダ(BUDDHA BRAND)とかニトロ(NITRO MICROPHONE UNDERGROUND)に行くんです」

――tofuくんの昔からのファンは当然知ってることですけど、元々ヒップホップですもんね。

tofubeats「はい。完全なる『blast』読者でしたね」

――ははは。これからファンになっていく人にとっては出自がヒップホップというのは新鮮な事実かもしれませんよね。 

tofubeats「ここまで来るとそうかもしれないですね」



――メジャーからの2枚目のアルバムということになりますけど、先ほどもミュージシャンとしての職業性の話が出ましたけど、職業的な音楽人としてのあり方についてはどういう考え方を持っていますか? 

tofubeats「職業性というのは自分のアーティスト性を伸ばしてくれるところだと思いますね。宇多丸さんが、『ラップの面白さは韻を踏むと思わぬことを言ったりするところ』みたいな話をしていたんです。それに近いですね。つまり、縛りがあることによって自分が思ってもいなかった音楽を作ることができる。たとえば、タイアップで曲を作ることで、ああ、俺はコレに対してこんな気持ちを持っていたのかと知る、そういう発見がありますよね」

――自分の違う面が引き出されるということですね。

tofubeats「そういうことがあるので職業的に音楽を作る難しさはありますけど、職業性に関しては歓迎していますね」

――tofuくんはいまのようにメジャーになる前からJ-POPやアイドルからヒップホップ、ダンス・ミュージックまで幅広く、どんなジャンルの音楽も作ってきたじゃないですか。逆に嫌いな音楽、苦手な音楽はあったりしますか?

tofubeats「嫌いというのではなくて、わからないから早よわかりたいのはヘヴィメタですね。ヘヴィメタやハードロックは一瞬わかりそうになるときもあるんですけど、まだですね。だから、わかったらめっちゃおもろいやろなっていっつも思うんですよ。僕はスラッジやグラインドコアやノイズは好きなんです。関西というのもあって、そういう音楽を体験したり観る素地があるんです。そういう話で言うと、ここ2年ぐらいでやっとわかるようになった音楽がレゲエなんですよ。ラヴァーズ・ロックは好きだったんですけど、去年ぐらいから今年にかけて、いわゆるルーツ・レゲエやレゲトンがわかるようになったんです」

――それは面白い話ですね。何かきっかけがあったんですか? フェスで聴いて気持ち良かったとか、そういう体験があった?

tofubeats「いや、普通に家で聴いていてある日突然、『あ! 良いかもしんない!』と感じたんです。最近ジャマイカの若い人たちのあいだでルーツ・レゲエ・リヴァイヴァルみたいな流れがあるじゃないですか。まだ愛聴までは至っていないですけど、そういうのを聴いているときに『ああ、良いんだな』というのはわかりましたね」

――自己分析すると、ルーツ・レゲエの何がtofubeatsに引っかかったんですか?

tofubeats「いや、それはわからないんです。ある日突然わかるという話なんですよね。あと、自分が試してこそ発言できるという考え方があるんです。だから、発言権を得るためにいろんな音楽をやるというのはありますね。グラインドコアにしてもある日突然わかって、そのときの体験がすごい良かったんです。ハロプロとかもまさにそんな感じだと思うんですよね。だから、基本的に阪神タイガースみたいな感じですよ。ハマったらずっと好きだけど、ハマるのは難しい、みたいな」

――関西人特有の喩えですね(笑)。『POSITIVE』の中でこれまで挑戦していなかったスタイルの楽曲と言えば、EGO-WRAPPIN'の中納良恵さんをゲスト・ヴォーカリストに迎えた“別の人間”はそうかもしれませんね。完璧なバラードですね。この曲ではキーボードを弾いていますよね?

tofubeats「いちおう僕が弾いているんですけど、打ち込みではありますね。MIDIでダーンって弾いて、フッと止める。それを5分間やるんです。で、あとから強弱とかを全部打ち込み直しているんです。この曲には経緯があるんです。去年、本当に尊敬している宇多田ヒカルさんのカヴァー(『宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について』収録の“time will tell”)をやらせてもらったんですけど、そのときに宇多田さんのディレクターの方とおしゃべりさせていただく機会があったんです。そこでここぞとばかりに宇多田さんが使っているピアノのプラグインについてのウラを取りに行ったんです。『宇多田さんはこれを使ってたんですよね?』と。そこで確証を得て、宇多田さんが使っている30GBぐらいのピアノの音源を買って、あまりにうれしくて作った曲が“別の人間”なんです。歌ってもらうのは、昔から好きだったEGO-WRAPPIN'の中納良恵さんにお願いしようと。関西のグループでもありますし、イベントでご一緒する機会もあってお願いしたんです」

――関西の音楽の話が出ましたけど、神戸、京都、大阪の音楽シーンと密接なつながりはあるんですか?

tofubeats「あんまりないですね。特に神戸には表立ったクラブ・ミュージックのシーンらしいものはないですから。だからこそ、住む機能としての神戸を信用しているというのはありますね。しかも昔から僕はクラブに遊びに行ったりもしないので。今年ひとりで神戸で遊びに行ったのだって、昔から大ファンだった寺田創一さんのライヴぐらいですからね。それは事前に予約して行きましたね」

――たしかにこれまでのtofuくんのインタヴューを読ませてもらっていてもクラブでがんがん遊ぶような人ではないとは思っていました。メジャーで仕事をするようになったり、東京に呼ばれることが増えたりして、いろんな人と出会う中で、「夜ちょっとクラブに遊びに行きましょうか?」とか「踊りに行きませんか?」みたいな誘いも受けませんか?

tofubeats「『夜ちょっと遊びに行きましょうか?』なんて言う人は身の回りにいないですね。誘われても、お酒も飲まないし、行かないし、そもそも客として行くフェスとか苦手ですから。ライヴに行ってみんなでワイワイしたいっていう感覚はそこまでないんですよね。だから、本当に大好きなアーティストが来日していてもほとんど行かない。この前もハーバートが来日していて、行くかどうかでめっちゃ悩んで結局行かへん、みたいな。やっぱり僕はアルバムが好きなんですよ。だって、アルバムって良いじゃないですか。何回聴いてもいっしょだし、どこでも聴けるし、貴重なメディアだと思うんです」



――自身のライヴに関してはどうですか? かなり盛り上がりますよね?

tofubeats「曲をかけて、歌って、手を振ったりしてますけど、ライヴはあくまでも家で作った曲を発表する場ですね。ライヴは嫌いじゃないので誤解されたくないんですけど、そこまで一体感やワイワイ感だけを求めているわけではないんです。去年は生演奏できる機会があったりして楽しかったですし、もちろんお客さんは大事ですし、お客さんに向けてやっていますけど、自分が面白がるために最近は笛を吹いたりもしてますね。スベるんですけど、自分が面白いから笛を吹く。そういうのはありますね。そもそもDJを始めたのも、DTMを家でやっていてインターネットに曲をアップしているうちに、『人前で発表したら』という感じになっていったからなんです。サイプレス上野とロベルト吉野“BAY DREAM-FROM課外授業(TOFUBEATS REMIX)”が見つかったりして、人前に出るようになっていったんです」

――ある意味で、インターネットから引っ張り出されたということでもありますよね。 

tofubeats「人前に出るとなったときに、何も楽器ができないからまずはDJをやることになるんです。当時は未成年でライヴ・ハウスでバンドに混じってやらないといけなかったから、DJでは足りひんなということに徐々に気づいていくんです。ただDJしていてもお客さんが帰っちゃうんですよ。それでしゃべったり歌ったりしているうちにライヴという形で歌を歌うようになる。だから、僕の歌ったりするライヴはマイナスな状況から始まっているんですよね。僕がAuto-Tuneを現場に投入し出した時期はめっちゃ早かったと思いますよ。2009年ぐらいには現場でリアルタイムで使って歌っていましたから。そういうのも『歌わなアカンけど音痴やからなあ』というハンディキャップありきで始まってる。だから、ライヴに関しては表に出なアカンから出る以上は工夫しようという意識でやっていますね。基本的にはやっぱり音源で判断してもらえるとうれしいというのあります」

――なるほどー。では、tofubeatsにとってのダンス・ミュージックとは何でしょう?

tofubeats「ダンス・ミュージックはクラブに行き出す前から好きだった音楽のひとつということですね。で、いまはクラブでもDJしたり、ライヴしたりするから、ダンス・ミュージックもプレイできます、ぐらいの感覚なんです」

――tofuくんはKORGのアナログ機材とかも買って持っていますよね。そういうダンス・ミュージックの肉体性へのこだわりもあると感じますが、どうでしょうか。

tofubeats「シカゴ・ハウスとかがすごい好きだから持ってるというのはありますね。あと、音楽制作の入りもMPCですからね。クラブが好きか嫌いか、クラブで踊るか踊らないかとかに関係なく、そういう音楽が好きだし、そういう機材やシンセの音が好きなんですよね。やっぱり僕は出自がクラブ・ミュージックなんですよ。だから打ち込みっぽい音や音楽が好きで、ビートを聴いているのが好きなのはヒップホップが入りだからでしょうね。そういうところからJ-POPに行っているんですよね」

 

(後編に続く)

文  二木信/text  Shin Futatsugi


tofubeats_positive


tofubeats

『POSITIVE』

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http://www.amazon.co.jp/POSITIVE-初回限定盤-tofubeats/dp/B010P8PPZG

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tofubeats


1990年、平成2年生まれ、神戸市在住のトラックメイカー/DJ。インターネットで100曲以上の楽曲を公開し続けるかたわら、 YUKI、FPM、佐々木希、ももいろクローバー、Flo Rida など様々なアーティストのリミックスも手かがけ高い評価を得ている。Web CMなどのクライアントワークも多数。盟友オノマトペ大臣と2011年末にリリースした“水星EP”はアナログ盤として異例のヒットに。強い要望を受けてリリースされたデジタルバージョンはiTunes 総合チャート1位を獲得。iTunes Best of 2012 に選出され、翌2013年のニューアーティストにも選ばれる。2013年春発売の『lost decade』も iTunesで総合チャート1位を獲得。世界のインターネットに散らばる最新のクラブミュージックからJ-POPまで、凝り固まらない平成生まれのバランス感覚を持った新進気鋭の若手トラックメイカー。2013年11月には森高千里をフィーチャリングした“Don’t Stop The Music”でメジャーデビュー。藤井隆を迎えた“ディスコの神様”でも話題に。2014年10月2日にメジャー1st『First Album』、2015年4月1日に『STAKEHOLDER』、そして2015年9月16日に2nd『POSITIVE』をリリース。

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http://www.neol.jp/culture/

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