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OKAMOTO’Sのアドレス帳 Vol.9 志磨遼平(ドレスコーズ)× オカモトコウキ

NeoL / 2015年10月28日 18時0分

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OKAMOTO’Sのアドレス帳 Vol.9 志磨遼平(ドレスコーズ)× オカモトコウキ

 

OKAMOTO’Sのメンバーが友人はもちろん、憧れのアーティストなどをゲストに迎える対談企画第9弾は、ドレスコーズの志磨遼平がオカモトコウキとともに登場。夏フェスではOKAMOTO’Sとタッグを組んだバンド編成を披露、さらにニューアルバムではオカモトコウキをギターに迎えた新曲を制作した志磨。相思相愛のふたりが、コラボの経緯から互いへの想いを語ってくれた。


 

——志磨さんがOKAMOTO’Sを知ったきっかけは?

志磨「毛皮のマリーズ時代によく新宿レッドクロスでライヴをしていたんですけど、レッドクロスでOKAMOTO’Sのフライヤーを見たのが最初ですね。岡本太郎の写真が載っていて、OKAMOTO’Sというバンド名が書いてあって。それを見ていいなと思ったんです。カッコいいバンドってバンド名でわかるよね?」

コウキ「わかります。僕らがレッドクロスでライヴに出演し始めたころが、ちょうどマリーズもレッドクロスのレーベルから1stアルバム(『戦争をしよう』)をリリースしたころで」

志磨「そうか。じゃあ2006年か」

コウキ「で、F.A.D YOKOHAMAで開催されている『横浜ヤングカーニバル』というイベントにマリーズが出演していて。それをメンバーみんなで観に行きました。みんなで『ヤバいバンドがいるね!』と盛り上がって。それから、メンバーみんなで1stを聴いてワンマンライヴも観に行ったんです」

志磨「おお、そうか」

コウキ「最初は一方的にお客さんとしてマリーズのライヴを観ていて。その期間がけっこう長かった。好きだからなかなか話しかけれずにいて」

志磨「あははははは」

コウキ「レイジなんかはガンガンコミュニケーションをとって、志磨さんに自分たちのCDを渡したりしていましたけど、僕は人見知りだし、まだ18歳ぐらいだったので、同じ場所にいても『あ、マリーズのボーカルの人がいる!』という感じで話しかけられなくて」

志磨「コウキと話したりするようになったのはいつごろやっけ?」

コウキ「覚えてないんですよね」

志磨「確かに最初はレイジとよく話してたかもしれない。そこから自然とOKAMOTO’Sのみんなとコミュニケーションをとるようになったのかな」

——志磨さんが最初にOKAMOTOS’の音を聴いたときの印象は?

志磨「OKAMOTO’Sもレッドクロスのレーベルから最初の作品をリリースするという話があって。その流れで、レッドクロスでライヴをやるというので観に行ったと思うんですよね。そのときにルースターズのカバーとかやっていて」

コウキ「当時はけっこうカバーをやっていましたね。ルースターズにはじまり、(ザ・ローリング)ストーンズの『ウォーキング・ザ・ドッグ』や、MC5の『キック・アウト・ザ・ジャムズ』だったり」

志磨「そのときはまだハマ(・オカモト)くんがベースじゃなかったと思うんだよ」

コウキ「そのときから観てくれていたんですね。相当前だ」

志磨「そうそう。最初は初期のストーンズみたいなバンドというイメージがあって」

コウキ「最初はそうですね」

志磨「(オカモト)ショウくんもミック・ジャガー色が強かったから」

コウキ「更に強かった時代ですね(笑)」

志磨「それで10代というからすげえなと思って。趣味も渋いし、演奏も上手いし、雰囲気もあるし。素直にカッコいいなと思いましたね」

——コウキくんはマリーズのどんなところに惹かれましたか?

コウキ「リアルタイムでライヴを観て、徐々にお客さんが増えていって、楽曲もどんどん進化していくという過程を体験することが、マリーズが初めてだったんです。それでどんどんマリーズに夢中になって。ルーツにしている音楽も僕らが好きなアーティストばかりだし、それを現代的に体現しているバンドがいるんだと心惹かれました」

——掛け値なしにロックスターだと思えた。

コウキ「『今、俺はロックスターをリアルタイムで目撃してる!』という感じです」

——マリーズが解散したときはやはりかなりショックを受けましたか?

コウキ「ものすごくショックでした。バンドの初期から解散の武道館ライヴまで観たバンドだったので」

志磨「そうね」

コウキ「ガンッと出てきて、パッと終わるというロックバンドの美学の様なものも初めて目撃して。志磨さんのそういうバンドに対する姿勢にリアルタイムで触れた影響はかなり大きいです。たぶんマリーズをリアルタイムで体験していなかったら——言い方は悪いですけど——OKAMOTO’Sはもっと賢いバンドになっていたと思うんです。ここまで泥臭い部分が前に出なかったと思います。たとえば渋谷系的な方向性に寄っていたかもしれない」

——洗練された方向性になっていたかもしれない。

コウキ「そう思います」



——志磨さんどうですか、そういう話を聞いて。

志磨「いや、悪影響を与えたなっていう(笑)。洗練されてたほうがよかったんじゃないかな(笑)」

コウキ「いやいやいや」

志磨「でも、今回のOKAMOTO’Sのアルバム(『OPERA』)でさ——すげえうまく話を進めますけど(笑)——コウキが作った曲(「ハーフムーン」)は洗練されてる感じが前に出てるんだけど、間口を広げるというよりは、音楽が好きな人たちに向けて作ってる感じだよね」

コウキ「実際、10人中5人がなんとなくいいと思う曲を作るより、1人がものすごく好きになるような曲を作りたいと思って」

——アルバムとしてもそういう作品になったらいいと言ってましたよね。

コウキ「そうです」

志磨「その感じがすごくいいなと思ってね」

コウキ「今回のアルバムは歌詞もすごく泥臭くて。本当はずっとこういうことをやりたかった。根底にマリーズへの憧れという部分もありますし」

志磨「そっか、そっか」

コウキ「そのバランスが難しい。いろいろな音楽を知っているし、頭でっかちなところもあるので、いつも泥臭くいきたい思いとロジカルに音楽を作りたいという思いの間で揺れるというか。そういうところが東京生まれ東京育ちのバンドらしいのかなと思うところもあります」

志磨「そこはお互いないものねだりかもしれないね。僕はどうやってもやっぱりフィジカルに寄ってしまうところがあって。僕がOKAMOTO’Sを好きな理由のひとつにロジカルに音楽を作って、それについてちゃんと話をできるというのがあって」

コウキ「ありがとうございます。初期のマリーズのフィジカルに振り切れたライヴを観た者としては、そこにすごく憧れがあって。でもなかなかできるものじゃないよなとも思っていました」

志磨「自分ができないと思うとやりたくなるしね」

コウキ「なので志磨さんから受けた影響は絶大ですよ」

——OKAMOTO’Sは今回初めてライヴのことは考えずに作品至上主義に則って『OPERA』を制作したと。ずっとライブのことを念頭に作品を作り続けてきて、あるタイミングでモードチェンジするというのは志磨さんにもあったんじゃないかなって。

コウキ「やっぱりそういうタイミングはありましたか?」

志磨「うん、あるある。やっぱりもともと60年代の音楽が好きだと、スタジオワークの魅力が凝縮された『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』(ザ・ビートルズ)とか『ペット・サウンズ』(ザ・ビーチ・ボーイズ)みたいな作品は当然聴いてるわけで。だから、僕はそこで板挟みになるというよりは、全部やりたいと思っちゃうから(笑)。ライブではそれを(ザ・)ストゥージズみたいにやりたいってなっちゃうんだよ」

コウキ「わかります」

志磨「で、OKAMOTO’Sはロックンロールをルーツにしてるバンドなんだけど、スタジオワークを密にやれるだけのテクニックと知識があるというのは、実はけっこう珍しくて。それこそ渋谷系の人たちってスタジオワークのノウハウはあるけど、フィジカルが欠落してる部分もあるじゃない?」

コウキ「演奏が拙かったり」

志磨「そうそう、編集は上手でもね。ロックンロール至上主義の人たちはそれをあまりよしとしないというか。『やっぱりライヴがよくなきゃダメでしょ』みたいなことを言ってね。とりあえすツアーに出て、毎晩酒を飲んで、その行為がそのまま音楽になるというか。それが彼らのすべてなんですよね。スタジオワークって結局嘘じゃん、っていう発想があって」

コウキ「そうですね」

志磨「一方で、実際は鳴らないような音像を作って、ありえない響きをレコードの中で鳴らすというのがスタジオワークの醍醐味でもあって。その両方をできるバンドは少ないんですよね」

コウキ「でも、志磨さんも両方できる人ですよね」

志磨「好きだから両方やりたいんだよね」




——志磨さんは、マリーズ時代はロックは技巧云々ではないという美学と爆発力を推し進めてバンドを転がしていたと思うんですね。その後、ドレスコーズではテクニカルなアプローチにも目を配って、今はひとりでバンドを動かしてるわけじゃないですか。

志磨「そうですね」

——今現在はどんなモードなんですか?

志磨「僕もね、そこは現在進行形でいろいろ考えていて。去年ひとりでドレスコーズのアルバム(『1』)を作って、そこからいろんなミュージシャンにドレスコーズに出入りしてもらうようになって。もう、誰でもドレスコーズになれるみたいな。この夏のライヴはOKAMOTO’Sも一緒にやってくれて。お客さんに関しては、おそらくそんなに目まぐるしく入れ替わってないと思うんですね。だから、バンドのメインコンポーザーとオーディエンスは変わらないまま、演奏者が変わってるという状況でライヴをやってるんですけど。そうすると、やっぱり毎回のライヴがものすごく違うんですよ。でね、それはお客さんにも影響していることがわかるのがいいなって。僕らは演奏するからもちろんどのライヴでもいろいろ考えるんだけど、お客さんってそこまでサウンドについて細かく考えない人も多いじゃないですか。『カッコよかった! ヤバかった!』という感想が多くて。でも、こういうライヴのやり方を実践してみて、出音やプレイスタイルはしっかりお客さんに影響するということがわかった。それがすごくおもしろい。だから、僕の今のモードは制作でもライヴでも演奏者が違うから常にバンドを組んだばかりのような状況なんです(笑)」

コウキ「なるほど(笑)」

志磨「それってズルなんですけど、最強なんですよ。バンドは組んだばかりのころがいちばんカッコいいから」

——でも、やっぱり志磨さんはそういうフレッシュな状態を常に求めてるんだなって思う。

志磨「そうっすね。これはもう、アレですね、業というか(笑)。売上云々ではなく、落ちたくないんですよ。トップスピードから落ちたくない。今、僕がやっているのはその方法のひとつって感じですね。じゃあずっとバンドを組み続ければいいんだという(笑)」

——この夏のライヴで、OKAMOTO’Sをドレスコーズに招こうと思ったのは?

志磨「当然、一緒に演奏をしたいと思った人に声をかけて手伝ってもらってるんですが、そのなかでもOKAMOTO’Sは自然とお願いしようと思いましたね。なんて言うんでしょう? これはTPOみたいなことかもしれないですけど、今の日本の夏の音楽シーンっていうんですか? そのなかで野外フェスティバルの位置づけはものすごく大きいじゃないですか」

——市場としても。

志磨「そう。この場に僕が誰と演奏したらおもしろいかを考えて。それで30分くらいのショーケースみたいなイベントではキングブラザーズと一緒にやったりして。で、夏の野外フェスティバルでOKAMOTO’Sと一緒にやるというのはすごく自然にイメージできたんですよね。とりあえずダメ元でオファーしたっていう」

コウキ「それまでの志磨さんの動きをおもしろいことやってるなと思って見ていたので。演奏陣が全員女性メンバーのライヴもキングブラザーズと一緒にやってるライヴも観に行って。お客さんとして『こりゃおもしろい!』と思って観ていたら、まさか自分たちに話がくるとは思っていなかったので『おおっ!』と驚いて。でも、やっぱり僕個人としてはこういう演奏がいいなと思ったり、やっぱりあの曲だったら西さん(毛皮のマリーズのギター、越川和磨のニックネーム)のあの感じがいいなという思いが根底にあるので、それを自分たちがやっていいものなのかという葛藤は正直ありました」




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——なるほど。聖域に触れるような感覚。

コウキ「そう、ファンとしての。ただ、演奏にはすごく自信があるし、一緒にやったらいいライヴができるという確信も同時にありました。だから喜んでお引き受けしたんですけど、同時に少し怖さもあって」

——他の3人はどうだったんですか?

コウキ「ノリノリでしたね。少しは僕と同じように志磨さんをリスペクトしているがゆえの不安もあったとは思いますが、夏フェスで共演するという内容もおもしろかった。志磨さん、実際どうでした?」

志磨「これは他の誰でもなく僕自身がミュージシャンとして知りたいこと、追求したいことがあって。ひとりの男がバンドをやることによって、どうなってしまうのか。そのロマンやストーリーにおいて、昔から僕はソロで活動しようと思ったことがないんです。ソロアーティストやシンガーソングライターをやりたいと思ったことがなくて。いろんな方法があると思います。ひとりになって宅録をやってもいいわけだし。でも、やっぱり僕はバンドをやりたい。でね、そのうえでOKAMOTO’Sと一緒にやると僕もOKAMOTO’Sのメンバーになるんですよ」

コウキ「OKAMOTO’Sの人になっちゃったんですね(笑)」

志磨「そう。それがいちばんおもしろかった。この夏の野外フェスティバルの僕のライヴは、OKAMOTO’Sのライヴだと思うんです。だからライヴ自体がダンサブルやし、すごくハッピーなものになった」

コウキ「今回、ショウも一緒にやりましたからね。その影響もあるかもしれない」

志磨「そうそうそう。僕はショウさんにもいてほしかったの。それはね、決して『ショウさん以外のメンバーでお願いします』って言うのが気まずいからじゃなく、OKAMOTO’S全員のなかに入りたかった」

コウキ「なるほど」

志磨「自分がOKAMOTO’Sに入ったときにどうなるか知りたかった。そしたらやっぱり予想通りだった。僕がOKAMOTO’Sのメンバーになったんだよね」

コウキ「確かに演奏もOKAMOTO’Sでしたね」

志磨「そうそう。で、最初にOKAMOTO’Sと一緒にやったROCK IN JAPAN FESのあとにある人に言われたんです。『志磨くんはライヴ中にあんなに笑っちゃダメだよ!』って(笑)」

コウキ「僕もカメラマンの人に『すげえいいライヴだったけど、志磨さんが楽しそうだったからダメ!』と言われて(笑)」

志磨「ダメなのかな?(笑)」

コウキ「ダメみたいですね(笑)」

志磨「でもね、僕としてはそんなことはどうでもいいんです。それくらい変わるというおもしろさがあるから」

——OKAMOTO’Sのなかに入ったからこそ自然と笑顔になったし。

志磨「そう。ひとりの男としてバンドをやっているなかで、演奏者が違うとこれくらい変わるということですよね。だから、たとえば僕がムスッとライヴをやっているイメージがあるとしたら、それは僕が前に一緒にバンドをやっていた人たちの影響なんです。だから、『笑ってないほうがいい』って言われるとビックリするの。普段はこんなにヘラヘラ生きてるのに、ライヴのときはそう見えてるんだって。バンドってそういうものなんですよね」

——それは共同体としての人格が出ると。

志磨「そうそう、そういうことですね」

コウキ「その話にはすごく納得できるところがありまして。これは最初の2本のライヴで解決したんですけど、自分たちがOKAMOTO’Sとして演奏すると、志磨さんのエッジの立った部分が削られてしまうのではないかと思って」

志磨「そうなのかね?」

コウキ「やっぱりどうしてもハッピーなバイブスが出る。べつに僕たちが常日頃楽観的に生きている人間ではないんですけど、やっぱりライヴ全体のムードとしてそうなるんです。そのうえで自分たちが夢中になって見てきた志磨さんは、エッジの立った部分がカッコいいと思ってきた。だから、楽しいけど複雑、みたいな気持ちが少しありました」

志磨「そっか、そっか。この前、レッドクロスと名古屋でドレスコーズとOKAMOTO’Sの対バン企画があったんですよ。『60分一本勝負』と題して、まずOKAMOTO’Sがライヴをやって、転換なく僕がそのなかに入ってマリーズやドレスコーズの曲をやるという。そのとき思ったのは、僕のそういうエッジーな部分だったり、スタジオワークを凝ってやる音楽青年的な部分をOKAMOTO’Sの4人は知ってくれているわけで。だから、レッドクロスでOKAMOTO’Sとライヴをやるというのは隠しごとが何もない感じというか」

コウキ「特別な感じでしたね」

志磨「だから、もし僕のエッジーな部分が残っているとしたら、それをOKAMOTO’Sは感じてくれるやろうし。あのとき久しぶりにライヴハウスでめちゃくちゃやった気がするんですよ。セットリストも一緒に考えたんですね。OKAMOTO’Sは初期の曲を中心にやると。で、僕は最近やってなかったマリーズ時代のうるさい曲を久しぶりに歌って『こんなのやってたんだ!』って自分で思って。そういう状況のなかでOKAMOTO’Sは当時の僕を知ってる証人なわけだから、僕がヘニャヘニャしてたらたぶんバレちゃってたと思う。そういう意味でもすごくおもしろかった。あのね、とてもいいですよ、OKAMOTO’Sは」

コウキ「ありがとうございます。僕らもすごく楽しかったです」




——今回、ドレスコーズのニューアルバム『オーディション』にもコウキくんが参加してますね。

志磨「今まで話してきたことにも繋がりますけど、今年の自分の音楽としてレコードに記録したいのは、音楽における自分と演奏者の関係性で。演奏者の影響によって自分がどのように変わるのか、それを音源として録音するべきだなと思ったんですよね。それで、僕が作った曲をいろんな人に演奏してもらうということで、今年に入ってからライヴに参加してもらったメンバーのギタリスト全員にアルバムでも弾いてもらいたいと思ったんです」

コウキ「アルバムタイトルの『オーディション』は、様々なミュージシャンが参加していることがかかってるんですか?」

志磨「うん、かかってる。で、おもしろいのがね、Auditionの“Audi”と“Audio”の“Audi”って綴りが一緒なんですよね。つまり、音楽を再生する装置がオーディオシステムで、作品をどういうミュージシャンと一緒に実演して作るかを人選するのがオーディションで。でね、僕がこのアルバムをリリースしたときにお店で他の作品と並んだら、今度は僕がオーディションにかけられるんですよ。いっぱいあるCDのなかから選んでもらわなきゃいけない」

コウキ「そういう意味では、僕らは常にオーディションを受けてますね」

志磨「そう、オーディションをかけ、オーディションにかけられてる。その選択の積み重ねを経て、今日ここにいるという。そこで何か間違えていたら今日ここにいないかもしれない」

——この夏、OKAMOTO’Sと一緒にライヴしたのも選択のひとつだし。

志磨「そう、OKAMOTO’Sと一緒にやってなかったら、僕の今後の音楽が全然違うものになるかもしれない」

コウキ「僕が参加させてもらった楽曲は激しめのサウンドになりましたね」

志磨「そう。いっぱい作った曲の中でコウキに弾いてもらうならこれかなという曲を選んで」

コウキ「ライヴでは今まで志磨さんと一緒にやってきたギタリストのことを考えたりもしましたが、今回は真っさらな新曲を弾くということで、意識が違いました。曲をどうよくするかに集中できた。自分の地も出せましたし」

志磨「デモには一応、僕が弾いたギターを入れましたけど、でもコウキには『好きに弾いて』と言って」

コウキ「結果的に志磨さんと一緒にやるから云々ということは深く考えずに、自分が弾きたいように弾けたのでよかった」

志磨「素と言えばさ、『ハーフムーン』は、あれもコウキの素なの?」

コウキ「あれも素ですね。だから、『ソロアルバムを作ってください』と言われて自由に曲作りしたらああいう楽曲が12曲くらいできると思います。『ハーフムーン』は最初アルバムに入れる気はなかったんですけど、周りの人たちがすごく気に入ってくれて。レイジも『入れたほうがいいよ』と背中をおしてくれたんですよ」

志磨「いい曲だよね。コウキは、実は声がいいっていうね」

コウキ「いいですか!?」

志磨「うん。歌い手としてすごくいいと思う」

コウキ「うれしい。すごく細い声なんですけどね」

志磨「僕のなかでコウキの声は、キャロルでいうと永ちゃん(矢沢永吉)ではなく、ジョニー大倉のイメージなんだよね。技巧的な感じではなくて、サイドマンとしてたまに歌うときに声のよさが際立つ。その感じが好きなんだよね」

コウキ「うれしいです。小山田圭吾さんの声に似てるとよく言われます」

志磨「ああ、確かに似てる!」

コウキ「フリッパーズ・ギターの曲をカラオケで歌うと再現性が高いんです(笑)」

志磨「声が90年代っぽいんだよね。ちょっとフィッシュマンズの佐藤(伸治)さんっぽさもあるし」




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——コウキくんはいつかソロ作品を作りたいという思いもありますか?

コウキ「今年に入ってから思うようになりました。ハードルは高いと思いますけど、いつか作れたらいいですね」

志磨「OKAMOTO’Sというバンドの本質を凝縮したアルバムのなかに『ハーフムーン』のような曲が入ってることがいいんだよね」

——OKAMOTO’Sって解散や活動休止をするのが想像できないバンドだと思うんですね。

コウキ「急に解散するかもしれないですけどね(笑)」

志磨「なんの前触れもなく(笑)。マリーズの解散もそう思われただろうし、ドレスコーズが僕ひとりのバンドになるのもね(笑)。音楽性の違いで解散することはOKAMOTO’Sにはないと思うんだけど。でも、本来そんなことはどのバンドにもないはずなんだよ。だけど、いつの間にかバンドの可能性を狭めちゃうんだよね」

コウキ「確かに自分たちはこうあるべきだと縛ってしまう」

——自縄自縛に陥ってしまう。

志磨「そう。バンドが『俺らはこうでしょ!』ってなったときに、そう思わないメンバーがいる、もしくは違うことに興味があるメンバーがいたときに『音楽性の違いにより』という説明になるんだと思うんだけど。でも、OKAMOTO’Sは最初から演奏が上手いから大丈夫なんですよ。途中で上手くなっていくと、『こういうこともできるようになったけど、このバンドではできない』という事態にも陥りやすい。コウキ自身は、途中で自分のなかでプレイヤーとしてグーンと伸びた時期があることを自覚してるみたいなんだけど」

コウキ「そうですね」

志磨「そういう話をこの前もしたんだよね。とにかくハマくんとレイジが上手いからがんばってそれに追いつこうと思ってた時期があったと」

コウキ「はい」

志磨「今回、僕のアルバムに参加してもらって、エンジニアと『コウキ、上手え!』って驚いたんです。ミックスしてるときも『コウキはやっぱりすげえ上手かったね』という話になった」

コウキ「ものすごくうれしいです。僕はもともとパンクが好きなので、上手いプレイヤーってヤだなと思っていて。テクニカルなことなんてしたくないという考え方でした。でも、それは僕の勝手だけど、それによってハマくんやレイジまで下手に思われるのは絶対によくないことだと思って。あるバンドと対バンしたときにものすごく下手な人がいて。そのときに僕は下手でもいいけど、バンドが下手に思われるのはダメだと自覚しました」

志磨「いい話」

コウキ「あとは、表現のレンジが広くなったうえでパンクなアプローチをするのはいいけど、その順番が逆になると意味合いが全く違ってくると思って」

志磨「やっぱりOKAMOTO’Sは脅威の25歳やね」

コウキ「マリーズやドレスコーズはメンバー同士の仲がすごくいい時期はありましたか?」

志磨「毛皮のメンバーは中学から一緒やからOKAMOTO’Sみたいな感じやったかも。毛皮はね、音楽的なことはどうでもよかったのね。あの人たちと一緒にバンドをやればなんでも毛皮のマリーズの活動になるというか。それはCDをリリースするのも解散するのも一緒で。何をやっても『絶対みんなビックリするな!』って思ってた(笑)」

——文化祭で組んだバンドの延長線上のような感覚があったんですかね。

志磨「そうそう、ホントにそういう感じで。でも、それと同時に自分としてはもっと演奏も上手くなって、ちゃんと音楽を表現できる人になりたいとも思ったんですよね。それで、ドレスコーズのメンバーと一緒にやったら絶対すごいミュージシャンになれると思った。そういう環境に身を置いて自分を伸ばそうって。でも、今度は音楽以外のところが難しかった。僕がリーダーとしてどれだけ懐の深さを持てるかっていう……それはショッキングなことで。音楽の才能を突き詰めようと思ったら、結局社会性というか、誰かが困ってるときに『大丈夫?』って声をかけたり、『そんなの気にしなくていいよ』って言えることが大事で」

——誠実なコミュニケーション能力が。

志磨「そうそう。それが僕はすごく下手だったから、バンドを長く維持することができなかった。『結局そこか!って』ガクッとなりましたね(苦笑)。僕はバンドを理想化しすぎてるんですよね。バンドを組んだらこんなことができる、あんなことができるという妄想が強くある。だから、バンドを組む前の中学生みたいな状態がずっと続いてるんです。それで、いろんなことにいちいち落ち込んだりするし、ほぼ恋愛なんですよね。付き合いたての状態をずっと続けたいと思っちゃってる(笑)」

コウキ「でも、解散やメンバーの脱退も含めて、志磨さんの音楽活動は全部成功してると思います。僕らもその魅力に騙されてるというか。志磨さんのどんなところに影響を受けたのかを考えると、言い方は悪いけど、やっぱり騙すことなんです」

志磨「騙されて、ビックリしたいんだよね」

コウキ「そうです。騙すという言い方を変えるなら、ドラマチックな演出をしてるというか。それは自分の音楽観に大きく影響しています」

志磨「一般的な物差しでは人に怒られるようなことをやってしまうのが、音楽やロックバンドの一番楽しいところだって思うんですよね。たとえばハウリン・ウルフとか、きれいなものだけをよしとするなら、あの人は歌うべきじゃないんだけど、それがよしとされることが音楽の素晴らしさだと思う。バンドが解散することだって、いいことのはずはないんだけど、セックス・ピストルズの破滅的な散り方もカッコいいと思える。でも、今はそういう価値観が音楽のなかでもどんどんよしとされなくなってる気がするんですよね」

——ロマンが排除されてる。

志磨「『そんなことやっちゃダメでしょ!?』みたいな風潮を強く感じる」

コウキ「確かに。音楽はよしとされないことを合法的にできる仕事だと思います」

志磨「物を壊して褒められるのってバンドマンくらいだよ!」

コウキ「そうですよね。だから、僕らも今の風潮に抵抗したいんです。それによって負けたり、損をしたりすることがあっても」

志磨「そうだね。僕もそう」

 


shimakoukipresent

志磨遼平×オカモトコウキサイン入りチェキを1名様にプレゼントします。(チェキの不具合で暗くなっております。ご了承ください)空メールを送信するとプレゼントに応募できます。(←クリック)ご応募お待ちしております。
後日当選された方にはいただいたメールアドレス宛にNeoL編集部よりご連絡させていただきます。

 

ドレスコーズ


『オーディション』


発売中


(Evil Line Records)


https://itunes.apple.com/jp/album/odishon/id1045908168



dresscords


[初回限定盤(CD+DVD)]


3,500円+税


CD:新録12曲収録


DVD:「スローガン」AUDITION VIDEO、「贅沢とユーモア」STUDIO LIVE VIDEO、「志磨遼平のオーディション THE MOVIE」


http://www.amazon.co.jp/オーディション【初回限定盤】-ドレスコーズ/dp/B013XHC2IY


http://tower.jp/item/3992717/オーディション-[CD+DVD]<初回限定盤>



dresscords1


[通常盤(CD Only)]


3,000円+税


CD:新録12曲収録


http://www.amazon.co.jp/オーディション【通常盤】-ドレスコーズ/dp/B013XHC13U


http://tower.jp/item/3992720/オーディション<通常盤>


OKAMOTO'S


『OPERA』



opera


発売中


(Ariora)


https://itunes.apple.com/jp/album/opera/id1039225653


http://www.amazon.co.jp/OPERA-初回生産限定盤-DVD付-OKAMOTOS/dp/B011SFCGMA/ref=ntt_mus_ep_dpi_3


http://tower.jp/item/3936551/OPERA-%5bCD+DVD%5d<初回生産限定盤>

 

志磨遼平(ドレスコーズ)


毛皮のマリーズのボーカルとして2011年まで活動、翌2012年1月1日にドレスコーズ結成。同年7月にシングル「Trash」(映画「苦役列車」主題歌)でデビュー。12月に1stアルバム「the dresscodes」、2013年8月に2ndシングル「トートロジー」(フジテレビ系アニメ「トリコ」エンディング主題歌)、同年11月に2ndアルバム「バンド・デシネ」を発表。2014年3月、2009年からテレビ情報誌「TV Bros.」で連載しているコラム「デッド・イン・ザ・ブックス」をまとめた単行本「少年ジャンク 志磨遼平コラム集2009-2014」発売。4月、キングレコード(EVIL LINE RECORDS)へ移籍。日比谷野音でのワンマン公演を成功させたのち、9月にリリースされた1st E.P.「Hippies E.P.」をもってバンド編成での活動終了を発表。以後、志磨遼平のソロプロジェクトとなる。12月10日、現体制になって初のアルバム『1』をリリース。2015年4月1日、ドレスコーズ初のLIVE DVD「“Don't Trust Ryohei Shima” TOUR 〈完全版〉」をリリース。2015年10月21日、4thアルバム『オーディション』をリリース。2015年11月29日(日)福岡BEAT STATIONを皮切りに、大阪、仙台、札幌、名古屋、東京を巡る「Tour 2015 "Don't Trust Ryohei Shima" JAPAN TOUR」を開催。


http://the.dresscod.es/


OKAMOTO'S


オカモトショウ(Vo)、オカモトコウキ(G)、ハマ・オカモト(B)、オカモトレイジ(Dr)。2010年5月にアルバム 『10′S』、11月に『オカモトズに夢中』、2011年9月に『欲望』を発売。2013年1月に4thアルバム『OKAMOTO’S』を発売し、7月に は両A面シングル“JOY JOY JOY/告白”を、11月6日にニューシングル“SEXY BODY”をリリース。2014年1月15日に岸田繁(くるり)を迎えた5th アルバム『Let It V』を、8月27日にはRIP SLYME、奥田民生、黒猫チェルシー、東京スカパラダイスオーケストラ、ROY(THE BAWDIES)らとコラボを果たした5.5 thアルバム『VXV』を発売。2015年9月30日、6th『OPERA』をリリース。11月1日 (日)東京・新宿LOFTより「OKAMOTO'S TOUR 2015-2016“LIVE WITH YOU”」をスタート。


http://www.okamotos.net


撮影 中野修也/photo Shuya Nakano


文 三宅正一/text Shoichi Miyake(Q2)

編集 桑原亮子/edit Ryoko Kuwahara

撮影協力:LAX   東京都渋谷区円山町7-11 梅北ビル  2F   tel 03-3462-2443

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