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宇宙特集:写真家・永瀬沙世インタビュー

NeoL / 2017年4月11日 12時0分

写真

宇宙特集:写真家・永瀬沙世インタビュー













写真家と光は密接な関係にあるけれど、永瀬沙世は被写体を光として認識するというからユニークだ。形あるものは経年変化し、朽ちる運命にあるけれど、光には時代性もなく場所の特定すらない。光を追って撮られた写真も同様に、時間と空間を超えたものになる。彼女の写真に宇宙を感じるのは、それゆえに至極当然なのだろう。




——永瀬さんの作品には、言葉で解説されているわけではないけれど、常に宇宙的な視点や要素が入っていると感じていたんです。その理由を知りたくてインタビューをお願いしました。


永瀬「お話をいただいた時、改めて宇宙を語るというのは正直ちょっと難しいなと思ったんです。意識するまでもなく近くにあったので、逆に具体的な話ができない心配があって」


——近くにあったというと?


永瀬「父親が宇宙関係の仕事をしていたので、幼少期から宇宙開発の話をする家庭で育ったんです。父親がNASAの管制室に見学に行った話を聞いたり、エンデバーが打ち上がったときはもちろん、はやぶさの打ち上げなんかは擬人化してしまって『よくやった!』と家族で大盛り上がりして(笑)。その延長線上で、『E.T.』や藤子不二雄で想像を膨らませたり。バービーもリカちゃん人形も持っていないかわりに、兄とガンダムロボットを想像の宇宙で飛び回らせていました」


——日常の中で科学という現実と、創作物におけるファンタジーが混じり合っていたんですね。相反するものが混じり合うのは永瀬さんの作品の特徴ですが、例えば『Water Tower』もまさしくそうで、あの給水塔のある風景は古代のようでも近未来のようでもあり、そのさまが宇宙だと思ったんです。


永瀬「ああ、嬉しいです。時間に加え、地球じゃないかもしれないし、場所もわからない感じ。時空が歪んでいて、時間と場所が混在して意味がなくなる。そういうものがすごく好きなんです。どの次元にいるのかわからない、でもどこかにいるーーそれって宇宙ですよね」


——『SPRITE』はさらにその感覚が強い。


永瀬「あれは宇宙にあるどこかのなにかを大気圏を通して見ているというイメージだからぼやけているんです。レンズで歪ませているからちょっと変な写真ですよね。最初はあの場所は火星なのかなと思っていたんですけど、調べていると火星に似ていて水がある星が存在するらしいとわかったので、そこかもしれないです(笑)」






























——(笑)。GALLERY 360°での「CUT-OUT」も光と時空が交差する展示で、とてもエネルギーがありました。


永瀬「クラフト的な手法をとりましたが、表現したいことは一環していて、時代も場所も関係ないということです。YOSHIROTTENさんにもアートディレクションで協力してもらったんですが、シルバーの紙を使いたいという私の希望やなぜその素材を使いたいかという理由をしっかり理解してくれていたので、とてもスムースでした。あの女性も古代のようでも未来のようでもあり、人間でもあり、ないようでもある。メイクや衣装でもその意図は出ていますし、直接的ではなくても、透け感や軽さでも表現しています」


——あの展示でも光が印象的で、永瀬さんは常に光を追っているんだなと思いました。


永瀬「そう。女の子が写っていても、女の子を撮っているわけじゃないんです。光を撮っているのであって、形は撮っていない。だからジャンル分けができなくて(笑)。海外で作品を紹介していただくときに、ネイチャー、ウーマンなどというジャンル分けだと伝わりにくいので、『例えば光の反射、風の表情、のようなものをモチーフにしたい』ということも伝えたりしています」


——光を追うということが宇宙に通じるのかもしれません。それも極めてナチュラルな感覚ですよね。


永瀬「地球に住んでいたら、わざわざ地球にいますとは言いませんよね。それと同じかもしれません。昔はそんな風にもっと宇宙というものが近い存在だったんじゃないかとも思うんです。絵巻物で描かれている『虚舟』はいまの未確認飛行物体のようですし、『竹取物語』や曼荼羅も古くから宇宙を描いている。特に曼荼羅は全ては既にパーフェクトであるというもので、最近の私のテーマと重なっています。地球はパーフェクトだと思ってないからビルドしていくけれど、そうじゃないんじゃないか。宇宙は全てがありのままで存在していて、それで完璧な状態である。だから、自分もそのような状態にしておこうと」































——そう考えるようになったきっかけは?


永瀬「去年、10年ぶりにサーフィンを再開したんです。新月で波が荒れていて、サーファーも誰もいなかったんですが、私のトレーナーは大丈夫だから行こうと。怖いと思いながらもやったら、洗濯機の中にいるみたいにグルグルに脳みそをシェイクされて。最初はもがいていたんですが、それではいつまでたっても海の上にあがれない。逆らわず、波にのると浮かぶことができる。その体験に、細胞レベルの強い影響を受けました。やってきた波に自分がどれだけ軽く力を抜いて抵抗なく乗れるか。そして潮の目を読めるか。プロのサーファーは、波の裏まで見えるけど、初心者の私にはわからない。でもずっとやっていたら潮の波の目が見えると言われて。そのふたつは全てに通じること。その時にすべてが動き、そこから1年かけて自分を軽くすることに専念していました。例えば人と『会わなくてはいけない』では会わないようにし、『会いたい』で会う。テレビなども観ず、余計な沈殿物を溜めないで純粋に作品と向き合う。そうやって野生、自然の感覚を取り戻していたんです」


——すごくおもしろいです。ちょうど去年から今年にかけて時代の波が動き、こうしておけばいいという数字的な定石が通じなくなってきていると感じていて。つまり感覚であったり、自分で考えて動いてきた人が強くなる。もちろん定石で通じるところも変わらずあるけれど、玉石混淆の時代が終わり、進む人と停滞する人の二極化が進んでいる気がしています。


永瀬「変な言い方に聞こえるかもしれないけど、私は受容体であるという意識があって。写真集を作るとき、最初からなにを撮ろうと決めるのではなく、レンズを追っかけているうちに撮れてたものを見て後で答え合わせをすることが多いんですね。組み立てていくときにようやくなぜ撮っていたのかがわかる。受容体として、時代や物事のかすかな波動を感じて形にしているというか。『Water Tower』のときも自分がなぜこんなに給水塔を撮るのかわからず撮っていて。そしたら震災が起きて、人間にとって一番必要なのは水だし、給水塔のタワーはモニュメントだったのかと気付いた。大木の下に長老がいて、なにか困ったことがあったらそこに行くというのは、どの時代にもどの国にもあったことで、そういうことで人間は安心を得ていた。それは父性のようなもので、その父性がなくなってきているなとも思っていた時期でした。
自分のそういうもの作りのあり方が、一時期時代と合わないのかなぁと思ってたりもしたのですが、私もいままさに波が動いていると思います。この波に乗るために1年間削いで、研ぎすましてきたんだなと。声をかけていただくお仕事でも、こんなところで見ていてくれた方がいるんだと思う場面があって、実際にもう始まっているなと実感しています。去年個展を二回もやったのも、いま動くべきだと思ったからです。これからどう波が動くのかは見えないけれど、サーフィンと同じで、身軽にしてタイミングを見て委ねたい。タフに練習したので、いまは身柄ひとつで生きていける自信があります。これまで技術や経験という土台作りに頑張りすぎてきたので、それをこの1年で軽くして、感覚を強めた。土台があるうえでの自由はすごく強いと思うんです。これからなにが起きるか想像つかないけど、楽しめる自信があるので、いますごくワクワクしています」












永瀬沙世
アーティスト、写真家。ヨモギブックス主催。現在まで8冊の写真集を制作。『Asphalt & Chalk』(2011年)と『PINK LEMONADE』(2013年)はパリを拠点とするストックホルムの「LIBRARYMAN」社から出版された。2016年夏には写真集/個展「SPRITE(スプライト)」を開催。2017年9月に「CUT-OUT」をGALLERY360°で開催。今年、NYのSOHOで個展開催予定。
http://www.nagasesayo.com


interview & edit Ryoko Kuwahara


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