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MAIKA LOUBTE × UMMMI. “SKYDIVER” Interview

NeoL / 2017年4月26日 18時7分

写真

MAIKA LOUBTE × UMMMI. “SKYDIVER” Interview



マイカ・ルブテによる最新楽曲“SKYDIVER”。映像作家であるUMMMI.が手がけた同曲のMVは、まるで短編映画のよう。ノスタルジックを誘う派手な色味とざらついた質感に彩られた、エモーショナルで奇妙な“戦う女の子”の物語を紡ぐこのMVについて、またふたりの間を繋ぐシンクロニシティについて、改めて話を聞いた。



——ふたりはMVの前から知り合いだったんですか?


マイカ「共通の友人にふたりは合うと思うとずっと言われていたんです。でもきっかけがなくて会えずに2年くらいが過ぎてて」


UMMMI.「うん、がっつり関わったのはこれが初めてですね」


マイカ「THE TOKYO ART BOOK FAIRで声かけたりはあったんだけど」


UMMMI.「そうそう。その前日に雑誌を見てて、『この人とこの服の感じがいい』と思っていつかのためにと記録していたのがマイカちゃんの写真だったんです。翌日に紹介してもらって、『あれ、昨日の子だ!』って驚きました(笑)。その後にマイカちゃんが音楽を送ってくれたんだけど、それがまためっちゃよくて、ずっと家で聴いてました」


——マイカさんは以前からUMMMI.さんの作品を観ていました?


マイカ「はい。ネットでいろんなものを観ていると、直感的に判断して、興味がないとスルーするじゃないですか。でもUMMMI.ちゃんの作品は気になって掘らずにはいられない感じがあった。何とも言えないカメラワークや色味の映像があって、さらにストーリーとしての骨格があって、その両方できるというのがすごいなと。切れ味が鋭いカミソリみたいだった。あと、キレイすぎないところが好きだった。汚いものも映したり、映像美の方向じゃないところが新鮮に見えて。私はスパイク・ジョーンズの初期の頃の8ミリの映像にもすごく影響を受けていて、わざとざらつかせるというのが視覚的にも音楽的にも好みなんです。そういうところが合うかなと感じて、声をかけさせてもらいました」


UMMMI.「出会った少し後、たまたまマイカちゃんが撮影で私の家に来たことがあって。その時に家でファットリップの曲を流してたんです。そしたらマイカちゃんが『ああ、ファットリップだ!』って言ってきて。スパイク・ジョーンズが彼のドキュメンタリーを撮ってるんですけど、私はそれがめちゃくちゃ好きで影響を受けてるという話をしたんです」


マイカ「その時のUMMMI.ちゃんの表情が忘れられない(笑)。『ファットリップは私だと思ったんですよ!』って。会って2回目なのに熱く語ってて、すげえ引き込まれた」


UMMMI。「(笑)。それは未だに思ってます。ファットリップってダメなヤツなんですよ。出だしから泥酔して道端でわけわからないこと叫んでて。昔はファーサイドだったけど、それからギャングスタになって、アル中ヤク中になって追い出されて。スパイク・ジョーンズははじかれものとして彼を描いてるんですけど、それは私だったかもしれない人生だと思ったんです。私もモノを作るしかできないからこうなっていたかもって」


マイカ「私もそのドキュメンタリーを知ってて。あの“What’S Up, Fatlip?”って曲がすごく好きなんです。だから印象に残ってる」












——“ダメだったかもしれない私”というテーマは、UMMMI.さんの作品の底辺にずっとある気がします。このMVの内容はどういう感じで決めていったんですか?


マイカ「年末にリリースの構想が出て、UMMMI.ちゃんとMVの打合せしたんです。そのときにUMMMI.ちゃんが、『プロレスのリングを作って、マイカちゃんが歌ってる後ろで女性プロレスラーがガンガン戦ってるのどうですか?』って言ってきて。曲のデモを渡してあったんだけど、それを聴きながらキャットファイトの映像を観てたら『めっちゃ合う!』となったらしい(笑)。おもしろそうだし、絶対やりたいと思った」


——部外者だったはずのマイカちゃんが戦いに参加しちゃうのがすごく好きです。


UMMMI.「SNSとかもそうですけど、みんな自分の内側に興味が向かっているように見える。でもそうじゃなくて外の世界にも踏み込め! という感じです。スカイダイビングって飛ぶじゃないですか。身ひとつでガクガクになる。なのでマイカちゃんがリングに登っていくシーンは、身ひとつで世界にコミットしようとする儀式なんです」


マイカ「いじけた人の話なんだよね。自分で自分を小さい部屋の中に閉じ込めているけど、それが外に飛び出すという。パッと観た人にどこまで伝わっているかわからないし、それでいいんだけど、思っていることを具現化できたのは面白かったです」


——あのMVが音楽と映像のパーフェクトな融合をしているのは、さっきのファットリップの話のように根底にお互いが通じるものがあるからかなと。


マイカ「撮影の前にごはんを食べて、その時に色々生い立ちの話とかしたんです。同じくらいネガティヴが根底にある感じとか、そうだよねと頷ける部分がたくさんあって」


UMMMI.「私もあの時に話したのが大きいです。モノを作るときにはなるべく相手のことを全部知って、仕事だけじゃなく、外側も内側も知ると作るものに反映できるなと思っていて。話してみたら、私がイメージしてたマイカちゃんが良い意味でそのままで、なんて言うか、こうであってほしかったマイカちゃんだった。それが大きい」


マイカ「意外じゃなくて、やっぱりそうかって感じだった?」


UMMMI.「うん。デモを送ってもらった後にマイカちゃんのことを色々ちゃんと調べたんだけど、家に籠って自分で作ってるスタイルも、作ってる音楽も、家の写真とか見てても、日本でもなければ海外でもない、どこか都市から離れた場所でモノを作っている感じがして。でも実際は東京にいるという、そのバランス感が珍しい。東京っぽい人も郊外っぽい人も、海外っぽい人もいるけど、そこの中間はマイカちゃんならではだと思った」


マイカ「だから何処にも属せないというのはある。でも属したいわけではないからそのままやってるという。ああ、でもそれは自分ではわからなかったかも」


——属していないし属せないというのは、トレンドなどの広い同調よりも、個の体験や主観を重視し、オリジナルな作品を作ろうとしたら当然かもしれない。


マイカ「移り変わるトレンドは儚くて弱いイメージがあるんですよね。そういうものではなく、エバーグリーンでずっと残るものを作りたい。映像や音楽には個人的なものを反映できるからこそ、それができると思っているんです」


UMMMI.「私も移り変わって行くものにそこまで興味がなくて、千年先まで残るものが私にとっての物語であり作品なんです。物語を作りたいから、映像やアートという手法をとっている。でも社会的な動きも内側に向かっていってる気がします。90年代はグラフィックデザイナーにとして自分を表現する若い世代が多くて、それが少しあとの世代だとファッションデザイナーになり、いまは写真が圧倒的に多いのかなと思うんですけど、デザインという社会に消費されるものとしてそこに存在していたメディアから、写真や映像、音楽というもっとプライベートに近いもので表現する流れになっているのは興味深い」


——確かに。


UMMMI.「私もモノを作っていくうえでパーソナルはすごく重要なんですけど、自分自身の気持ちとか表現はあまり内側には向かってなくて、むしろ自分の内側の問題をもっと社会的問題と結びつけてみたりということに興味があって。そのためには、自己の内側に向かっている人たちの存在も必要になってくるんだと思います」


——内側に向かう人の視点を借りて、みんなに届ける。そのふたつの視点を持っているということですね。


UMMMI.「そうですね」











——マイカさんもその内外の視点は意識していますか?


マイカ「内面を掘るのは、作業工程的には歌詞を書くときかな。でも無意識でやってることが多いのかもしれない。もっと感覚的というか。無意識に貯まっている感情の水みたいなものがあって、その出口として音楽があって、そこを目指して吐きだしていくんだけど、音楽は人に届けたり、場所で鳴って初めて完成するものだからそこで客観視する部分はある」


UMMMI.「マイカちゃんにとって、作詞はどんな感じなんですか?」


マイカ「音に合う言葉を音楽が呼んでくるものという感じ」


UMMMI.「ああ、マイカちゃんの作品は音やリズムがすごく強くて、作詞や言葉もリズムとしてそこにあるという感じがするんです。音に合わせてるからだと思うけど、ダダイズムっぽい(ダダイズム=1910年代に怒った芸術思想・運動。偶然性や無行為性の中に芸術を見いだす)。でも歌詞をしっかり読むと、守られた場所にいるんだけど若干怯えてるティーンみたいですよね」


マイカ「そこまで考えてくれたんだ! ある意味正解で、最初は歌詞じゃない適当な言葉で歌うんですよ。それで聴こえてくる言葉を書いていって、ストーリーにしていくうちに、自分がこんなことを考えてたんだ、こんな言葉を聴きたかったんだとわかっていく。作詞にはいつも時間がかかるんだけど、“SKYDIVER”は求めるものがはっきりしてたから、2、3日で仕上げられて嬉しかった」


——歌詞もそうだし、メイキングブックの文章にもありましたが、今作からは「タフな戦う女の子像」がはっきり見えました。おふたりの戦いが見えた気がして感慨深かったです。


UMMMI.「あれは理想像なんです。私はまだ全然戦えてないかな」


マイカ「私もまだもがいてる感じ」


UMMMI.「マイカちゃんはタフに戦っていると思う。ライヴの歌ってる感じも顔の筋肉を思い切り使っててタフだもん(笑)」


マイカ「確かに(笑)。しかもMVでこんなに取り乱すミュージシャンはいないだろうと思う。世間ではスマートに転ぶことが良しとされているけど、我ながら女ジャック・ニコルソンみたいだった(笑)。UMMMI.ちゃんだからこそ新しい自分の一面が見えるものになりました」


UMMMI.「マイカちゃんが思い切りやってくれたから成立したんです。私が戦えないのは、映像は人や場所ありきだし、対象がないと何もできないから、とりあえず戦うのではなくて、状況をいったん全部受け入れるところがあるからかも。群れてる女子たちもガール・ギャングみたいで撮りたいし、一方ではぐれてる人も撮りたいという」


——UMMMI.さんの場合、映像はその意識かもしれないけど、ナレーションが入ることで独自の物語になっているし、その物語の純度を守るためには流されないでいる戦いが必要になってくるのかなと。


UMMMI.「映像は商業とリンクしやすいし、インスタやYouTubeでもこれだけ映像が溢れていたら作家性を保つのは大変ですよね。その意味では、純度を守るためには気合いが必要だなと思ってます」


マイカ「依頼されるのは光栄だけど、商業にはいろんな声がまとわりくつくからバランスが大変だよね。あのナレーションはUMMMI.ちゃんの声?」


UMMMI.「私の声が入ってるのと入ってないのがある。文学と映像の関係性をどうやったら成り立たせることができるのかと考えていて、それであのやり方をとっているんですけど、2つだけ自分がしゃべっていないものがあるんです。それらはよくも悪くも自分から離れているけど、しゃべっていると近すぎるからちょうど気持ちよいと思えるやり方を模索中です。私はものを作るときにこれでいいのかなっていつも怯えてて。作らないと自分の純度が保てないから作るけど、こんなの誰が気にしてくれるかなんてわからないし、ずっとモヤモヤしてるんです。だからマイカちゃんと話していて、自分で作った音楽に自分で感動するから音楽を作ることをやめられないという話は衝撃的だった。それってなんて素晴らしいんだって」


マイカ「どうしようもないやつみたい(笑)。映像は被写体があって対峙しながらだから広いけど、音楽なんて無で、対峙するといったら楽器か声、音くらい。だから脳内麻薬が出やすいんだと思う。いい映像ができたときは『できた!』って感じ? それとも『これだったら大丈夫』って感じ?」


UMMMI.「『これだったら大丈夫』ですね。でも画だけで見ると『夢みたいだ!』って興奮することもあります。こんな夢みたいな人がいて、夢みたいな場所がいて、こんな画を撮らせてくれて神様ありがとうってお祈りします」


マイカ「一緒だ(笑)。わかった、UMMMI.ちゃんの『これなら出せる』というのは、私だとプリミティブなところを通過して、ミックスしてリリースする段階。燃え上がってた自分をめっちゃ冷たい目で客観視しなきゃいけないときだ」


UMMMI.「そっか、同じですね。そういう夢のような画が撮れたとしても、私はいつも充たされてない感じというか、もっともっと、夢みたいな状況を作り上げて記録したいという願望があるんですけど、マイカちゃんは充たされたいと思いますか?」


マイカ「いつも充たされたいよ。だから終わらない。欲張りだから。充たされた瞬間がすごく幸せで、それは大事な気持ちだと思ってる。飢えがあって作って、充たされてーーーその瞬間を味わうのがやめられなくなっちゃったんだよなあ」


photos from 『SKYDIVER Making Book』(photography Takuroh Toyama, UMMMI. / book design UMMMI.)
portrait&inteview Ryoko Kuwahara




Maika Loubté
“SKYDIVER”

NOW ON SALE
https://itunes.apple.com/jp/album/skydiver-le-gong-single/id1205380844
https://play.spotify.com/album/6PqZx476uI1F3tginBVBZL?play=true&utm_source=open.spotify.com&utm_medium=open







Maika Loubté
Maika Loubté was born in Japan, with French father and Japanese mother. She grew up in Tokyo, Paris and Hong Kong. Inspired by various electronic music. Through her experiences in these three cities, Maika started to write her songs when she was 14 years old, using analog synthesizers. She pursues her career in Tokyo as a singer songwriter and track maker, making all of her music in her private house studio. As her music is directed not only to domestic audience but also to the world, she draws attention from music lovers in Japan,Thailand,Australia,Canada,Taiwan,
and many other nations.
https://www.maikaloubte.com/


UMMMI.
Umi Ishihara is an artist and Film Director from Tokyo.
The major themes of her work centre around love, personal memories and society.
Her work adopts a mix of documentary and fiction, muddying the waters of believability.
Contact: ummmi.81@gmail.com
http://www.ummmi.net/

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http://www.neol.jp/culture/

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