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藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#58 疲れをとる

NeoL / 2018年9月10日 6時0分

藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」#58 疲れをとる



 今回は疲労について。予防と、その処理の仕方を考えてみたい。
 

 疲労には、精神的な疲労と肉体的な疲労とがある。また、その両方が並存することもある。
 おそらく大方の人にとっては、心身共に疲れているケースが多いのではないか。どちらが先か明確なら、一方の芽を摘んでしまえばいいのだが、それは、はっきりしないことが多い。卵が先か鶏が先かである。
 心が病めば体も病むというのは、実感として多くの人が得ていると思うが、だからといって心のケアだけをしていればいいわけではない。逆に、病気や怪我などの身体の痛みから心の健康を失うこともある。
 その発端が、心と身体のどちらにあるにしても、それぞれが正常な状態からバランスを失うことが、全ての疲れの原因となっている。バランスを失っている状態を歪みと呼んでもいいだろう。心身の歪みが発端となって、失調をもたらし、疲れをもたらし、病気へと続いてしまうのである。なので、歪みをどう除き、歪みをいかに予防するかが必然的に大切になってくる。


 まず、疲労に関係する心身のシステムについての基本を整理したい。
 通常私たちが意識すること無くてもその働きが生きていく上で重要なものの中に、自律神経がある。呼吸や体温調節などを担当するあれだ。自律神経には、昼間活発になり人を興奮させる交感神経と、夜に活発になり人をリラックスさせる副交感神経とがある。この二つが朝と夜に交代することで、体調が安定しているのだが、これらは案外繊細で過度のストレスによって機能を失いやすく、そうなると夜に眠れなくなったり、呼吸が乱れたり、心が不安定になったりする。
 また自律神経とは別に司令塔のような働きをする中枢神経というのがあり、脳からの指令を体各部位にある末梢神経に伝える連携により、実際身体を動かすことができる仕組みになっている。ここの連携がうまくいかないと、身体が思うように動かず、つまり、だるい、重い、という実感となり、疲れとして認識される。
 このように、精神的な疲れとは、自律神経と中枢神経の状態が悪くなって起こる。


 また、身体の中の目に見える筋肉や骨格などのバランスが崩れること、つまり身体の歪みが、肉体的な疲労の原因となる。
 呼吸や体温などのコンディショニングを行う自律神経や、脳からの指示を出す中枢神経とが連携して、体調を万全にしようという努力を怠らないとしても、身体が歪み続けていては、つまり正しくない姿勢をデフォルトにしてしまっていると、自律神経や中枢神経なども混乱し乱れてしまう。歪んだ姿勢は、もちろん身体的にも変調をきたす。血液や体液の流れが悪くなり、凝りや痛みを生みだし、代謝が悪くなり、容姿にも悪影響をもたらす。見るからに不健康そうになり、艶のないオーラをまとうことになる。
 

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 一般的に疲れの原因として、多くの人がまず思い浮かべるのが、睡眠不足と過労だろう。睡眠不足は、不足にならないような生活スタイルを生み出す努力で解消すべきであり、過労に関しては自己調整できる範囲であれば、仕事の効率化によって対処できるとして、労働環境などの不可抗力による場合は、労働時間中の姿勢や軽い運動を取り入れることで軽減できるだろう。


 睡眠不足というのは、絶対睡眠時間の不足と睡眠の質の悪さから実感される。東京の就労者の睡眠時間は先進国の都市のそれと比較しても少ないので、まずは必要十分な睡眠時間の確保が大切だ。就寝前は、昼間の興奮状態からリラックス状態へと導くために副交感神経を優位にしたい。ぬるめのお湯での入浴を就寝90分前には済ませたり、ゆったりとしたヨガをしたり、音楽でチルアウトしたり、気持ちを落ち着かせるアートや詩に親しんだり、なだらかな下り坂をゆったりと歩いて降りていくような時間を創ることが大切だ。よく言われるように、明日は日の出と共にではなく、就寝時から始まると考えるのが分かりやすい。1日の良いスタートを切るのは就寝時からなのだ。飲み会の興奮の冷めないままに帰宅して、崖から飛び降りるようにベッドに自分を放り込むような心のストレスの一時的な発散の蓄積の代償は、想像以上に大きい。


 姿勢の歪みからの疲労。これは単純に歪まないようにしていくしかない。とはいえ、姿勢を含む長年の体癖は、自分で気づきづらいもの。まずは、鏡などを見ながら体の軸が曲がっていないかを確認したい。体の各部位が正しい位置に収まっていることで、血液や気などの流れが良くなるので、今一度丁寧に観察することだ。
 体には総合重力線というのがあり、人を横から見て、耳・肩・大転子・膝関節前部・くるぶしが地面に対し垂直に一直線に並んでいる状態だ。改めてチェックをする時は、気持ちも改まっているので、鏡の中の自分は案外まともな姿勢であろう。だが、ここから通勤電車中、歩行中、デスクワーク中、食事中、などの場面の自分を正直に想像してほしい。通勤中は背中を丸めて首を突き出してスマホを凝視していないだろうか。立っている時も片方の足に重心をかけ背骨を曲げて首を突き出していないだろうか。歩行中の背筋は伸びているだろうか。それぞれを思い浮かべてみると、いかに正しい姿勢を取れていないかに気づくだろう。
 もちろん場面場面で必要な姿勢が求められるので、いつも正しくあるのは無理だが、それを時々は正しい位置へと戻すことが大切だ。筋肉のバランスを整えて、関節を正しい位置へ戻す「もどし運動」なども書籍などを参考にやるのもいいだろう。要は、間違った姿勢をずっと続けることが肩の凝りや腰の痛みの元となるので、30分に一度は、身体をほぐすのだが、ただ伸びをしたりするだけでなく、ほぐしながらも脊柱起立筋や腸腰筋(腸骨筋と大腰筋)など体の中心にあって姿勢を保持するコア筋を鍛えられるような軽い運動をするといいだろう。
 

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 一例として骨盤もどし運動を紹介したい。人体を横から見て、座った時に耳、肩が地面から垂直に伸びた線に並ぶように正しく椅子に座り、肩の力を抜きリラックスする。手は体の真横に起き、椅子の縁をつかむ。その次に左右に小刻みに揺れながら、お尻を片方ずつ浮かして揺れ続ける。背筋、肩甲骨、肩、首がほぐれるまで続ける。無駄な力を抜き、柳が揺れるようなイメージで行うといい。

 また、肩こりは肩ではなく肩甲骨まわりが緩んで、その緩みのバランスを取ろうとして肩を固めてしまうことが原因なので、対症療法的に肩ばかり揉んだりしてもすぐに元に戻ってしまう。視点を変えて、背中の上部左右にある肩甲骨周りの緩みを締めなおすといい。ボートを漕ぐように両手を後ろに引いて肩甲骨を背面の背骨へと引き寄せる動作を繰り返すとバランスが戻り方の血流を促して凝りを除いてくれる。

 足を組みたくなる時は、骨盤の筋肉が緊張してストレスを感じているため自然にストレッチをしようとしている状態。席を立って臀部の筋肉のストレッチを休憩がてらできればベストだが、できない時は、左右交互に足を組んで、バランスを損なわないことが大切だ。


 人間の体というのは、本来じっとしているためでなく、動き続けられるようにと設計されているので、止まっているよりもゆったりと動き続ける方が疲労を貯めない。時々伸びをするだけでは不十分で気分転換ぐらいの効果しかない。もっと積極的に身体を効果的に動かすことが大切だ。筋肉というのは、骨を間に別の筋肉が向かい合っていることが多く、どちらかが緩み、どちらから縮むことで力を発揮する。どちらか一方だけが縮みっぱなしで、一方が緩みっぱなしになって固定されることが歪みとなり、痛みとなるので、それらを逆に働かせることで解消するというのが基本となる。
 また、運動不足により、コア筋が弱くなることで、そもそもの基本姿勢が取れなくなる。ハードな運動は必要ないので、インナーマッスルを刺激する軽い運動をすることで、老化からの疲労を防ぐことができる。
 

 ここまでのことをまとめると、疲労を避けるために姿勢を整えながら生活する、崩れてしまう前に予防的に姿勢を気にすること、崩れた後は筋肉や骨盤を正しい位置に戻し、まずコアのバランスを取り、その波及効果を部位に及ばせる。日頃から正しい姿勢で運動することも習慣化し、筋力の衰えからくる体の歪みに対処する。
 

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 疲労に直結する食事に関しては、様々な食事法が存在しているのだが、質、量、タイミングが大切だと思う。質には、食材の新鮮さという見方だけでなく、内容・バランス・回数も含まれ、これはアスリートとデスクワーカーとではおのずと違うように、それぞれのライフスタイル・年齢・性別・気候などに合わせて、それぞれが自分に見合うものを見出していくしかないのだが、量は腹7、8分を適量とするのが主流である。身体に過度の負担をかけないことが疲労を避けるための必要条件なので、これはいいと思う。タイミングについては、食事法にも関係してくるのだが、三食取る時間をある程度決めて、規則正しい生活を促し自律神経を乱さないようにすることが大切だ。
 

 私の現在の食生活を簡単に説明すると、炭水化物などの糖分は控え目にし、動物性油脂も極力摂らない他は、それほど気を使ってはいない。脳内労働と肉体労働、夕食は、傷ついた筋肉などを睡眠時に修復するために、タンパク質をしっかり摂り、ビタミンもサラダやフルーツからたっぷり摂り、炭水化物を夕食に少しだけ摂ると寝つきがいいという説もあるが、個人的には取らない方が胃腸内をすっきり保てるので、炭水化物は朝と昼に少しだけ摂るだけだ。ただ、全体としては、神経質にはならないようにしている。過度の目標は、ストレスにもなりかねない。方向さえ合っていれば、良しとしている。
 他には就寝前のストレッチも睡眠中に老廃物をスムースに排出するために心がけている。就寝前のスマホやネットなどで脳を興奮させないようにも気をつけている。
 ただ、それらにしても眉間にしわを寄せて避けるというよりも、自然にできる範囲で自分を仕向けているだけだ。拘りというのは、往往にして心に偏りと凝りを生みがちなので、柔軟性を保ちたい。
 

 歴史上や現代の賢人の本を開いて、1日を終わらせるのもいいだろう。昨夜読んだベトナム人僧のティク・ナット・ハンさんにこんな言葉ある。
 

 私は息を吸います。
 そして、私が生きていることを知ります。
 私は息を吐きます。
 そして、私の中にある人生と、
 私の周りのすべてのいのちに微笑むのです。
 

自分を疲れさせないために、すべてのいのちに微笑むのではなくて、すべてのいのちに微笑むから自分も疲れない。自分の歪みだけを見て、自分だけのバランスを取るのではなく、世界の歪みを正すために、自分が小さな発端となって、世界に微笑みかける。視界が広がると、浅かった呼吸も、自然と深くなる。





※『藤代冥砂「新月譚 ヒーリング放浪記」』は、新月の日に更新されます。
「#59」は2018年10月9日(火)アップ予定。

関連記事のまとめはこちら


http://www.neol.jp/beauty/

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