SUMIRE『悪の波動　殺人分析班スピンオフ』インタビュー

NeoL / 2019年9月30日 17時0分

麻見和史氏の原作をもとに木村文乃主演で2015年「連続ドラマ石の繭殺人分析班」、2016年「連続ドラマ水晶の鼓動殺人分析班」として放送された警視庁の犯罪捜査を描くWOWOWオリジナルドラマ「殺人分析班」シリーズ。第3弾となる「連続ドラマ　蝶の力学　殺人分析班」（11月より放送予定、全6話）の制作決定も発表され、シリーズへの注目がますます高まる中、過去２作に登場し注目を集めた連続殺人犯トレミーこと八木沼雅人（古川雄輝）にインスパイアされた初のドラマオリジナルストーリー「悪の波動殺人分析班スピンオフ」が10月6日よりいよいよ放送。「石の繭」での事件発生直前に焦点を当て、トレミーが犯罪をおかすに到るまでの過去や心情をなぞった本作で、トレミーの過去を知る人物として登場し、キーとなっていくキャラクター浅田吉佳を演じたSUMIREに、役作りのプロセスなどを聞いた。

――今作は「殺人分析班」のスピンオフということですが、本編はご覧になりましたか。

SUMIRE「はい、観ました。殺人分析班というタイトルからしてこわいイメージがありますが、それだけではないのがこのドラマの魅力だと思いました。スピンオフもそうですが、家族愛や兄弟愛など人間味を感じられる要素があり、あたたかい一面も持っているというか」

――すでに世界観ができている中での挑戦でしたが、本作ではそのもとからある世界に溶け込んでいくようにして演技を挑まれたのか、独立した作品としてまっさらな状態で一から始められたのか、どちらだったのでしょう。

SUMIRE「本編の世界観に溶けこもうとしました。でも同時にあまり不自然になりすぎないようにしたり、自分らしくしようともしましたね。あとは、監督との意思疎通のために、ワンシーンずつの話し合いをしたり、お互いに話し合いの時間を意図的に設けようと意識するようにしていました。一人一人としっかり向き合ってくれる監督で、それぞれの場面や心情に関して丁寧に説明をしてくださったのでとても理解しやすかったです。スタッフのみなさんの『連続ドラマを作り上げていくんだ！』という意気込みが凄かったので、その現場の空気にも助けられたところがあります。撮影のスパンが映画とは大きく違っていて、ドラマは続けていくもので、前の作品や回があったうえで成り立つという歴史があって。そうやって同じ人たちと長く携わっていけるのがドラマの特徴ですが、その周りの方々が優しかったので初めてのドラマの現場でもやりやすかったです」

――ではわりと自然に臨めたんですね。

SUMIRE「そうですね。元々演じる際にあまり緊張はしない質なので、自然体でいられたと思います」

――それもあってか吉佳という人物もよりリアルに感じられました。特に後半は彼女の人間らしさが話の展開に繋がっていたので、SUMIREさんのリアルな演技は要になっていたと思います。どういう役作りをされていたのか気になったのですが、まずは役の中に地の自分と共感、共通するところを見つけていくような感じのやり方ですか？

SUMIRE「はい、共感できる部分を見つけて、近いものに作り上げていくようにしています。結構形から入るタイプなので、衣装の力も大きかったです」

――靴下の丈や、カジュアルな格好なのに一点だけブラント持っているところなど、絶妙なスタイリングでしたね。

SUMIRE「そこに反応してもらえて良かったです（笑）。吉佳が社交的ではなかったり反抗的なイメージを持っているところを、スカジャンやピアスを身につけることで表現したんです。そうやって見た目からキャラクターにどう入り込めるかを大切にして、衣装さんや監督と一緒に相談して衣装合わせをしました」

――精神面ではどういったところから共感する点を見つけていきましたか。

SUMIRE「結構自分に近しい点があったので、自分事に置き換えて演じることは自然にできたんですよね。剛志（吉佳の兄／平埜生成）は吉佳の扱いがとてもひどいので、そういったところから彼女の悲しみや怒りが作り上げられるのだと理解して。私にはそういう経験はないけれど、そこで湧き上がる感情や反抗心は理解できますよね。私はこのドラマでは人間の善と悪を同じくらいのバランスで描いているような作品だと思っているのですが、剛志の場合は妹をいじめるもののどこかで妹を心配する兄という面もある。あるシーンでは、剛志は暴力を振るいながらも、セリフは吉佳を想っていたり。そういう善と悪は誰もがそれぞれが持っているものであると思うから、自分との共通点も探しやすかったんだと思います」

ーーおっしゃるように深く人間性を描いたドラマで、善と悪の境界線も一方的ではなく観る側に委ねているようにも感じました。また、吉佳とトレミーの関係性も明確に描かれているわけではなく、これもまた観る人間によってどう捉えるか変わるんじゃないかと思ったのですが、SUMIREさんとしてはそこをどのように捉え、落とし込みましたか。

SUMIRE「二人はともに孤独を感じていたり、闇やトラウマを抱えているという共通点があって、それが距離を近づけたんだと思います。そうやって近づいて一緒に過ごした大事にしたい時間もあるものの、どこかで彼のことを疑ってる部分もあったりーーはっきりとした正解の描かれていない関係ではあるけれど、私の中では吉佳は誠実で誰かをすぐに裏切るような人間ではないんですね。そういう自分が思う、彼女の気質や気持ちをもとに関係性を築いていきました。
私は吉佳とトレミーが一緒にご飯を食べるシーンがとても好きなんですよ。サスペンスドラマなのに、あのシーンは二人の人間味が出ていたり日常感があったりして、柔らかい空気感がありますよね。あそこって、トレミーがどういう風に生きてきたかがわかったり、彼の食べたいものに込められた想いや、それを見つめる吉佳の感情だったり、本編との伏線があったり。行われている行動や動作以上に本当にいろんなものが詰まっている場面だと思うんです」

――確かにご飯の食べ方ってその人の裸の部分を見せるし、二人の関係性を描く上であの差し込まれ方は素晴らしかったです。最後に、今回含めてこれまでは自分の素に近い役を演じられてきたということでしたが、今後演じてみたいキャラクターなどはありますか。

SUMIRE「基本的にローな気持ちのキャラクターを演じることが多いのでハイなキャラクターをやってみたいです」

――それ、ずっとおっしゃっていますよね（笑）。

SUMIRE「そうなんです（笑）。普段はハイなんですけど、ローに見られることが多いのかなと思うので、やっぱりそのようなオファーを受けるには経験を積んで幅を持てることが大事なんでしょうね。以前よりは自分がどんな風に演技していけばいいのか段々とわかってきたんですけど、もっともっと経験を積んで、現場を味わなければいけないのだと思います。頑張ります！」

photography Yudai Kusano
text&edit Ryoko Kuwahara

WOWOWオリジナルドラマ「悪の波動　殺人分析班スピンオフ」

麻見和史の小説を原作とした「殺人分析班」シリーズのスピンオフドラマ。2015年放送の「石の繭」(WOWOWプライム)で描かれた事件の前にスポットを当て、同作に登場した猟奇的殺人犯“トレミー”こと八木沼雅人(古川雄輝)が、冷徹無比な殺人鬼へと変貌を遂げるまでを描くドラマオリジナルのストーリー。
https://www.wowow.co.jp/drama/hadou/
10月6日スタート、毎週日曜　後10：30～　全5話（※第1話無料放送）
WOWOWメンバーズオンデマンドでは、各話終了後見逃し配信
TSUTAYAプレミアムでも10月6日より配信スタート

「連続ドラマ石の繭殺人分析班」一挙再放送
10月6日　後5：30～10：30
全5話一挙放送
(C)WOWOW・TBSスパークル／「悪の波動殺人分析班スピンオフ」パートナーズ

SUMIRE
1995年東京生まれ。2013年に母であるCharaのMVへの出演をきっかけに注目を集め、2014年より「装苑」の専属モデルに。2018年１月公開『サラバ静寂』で映画デビューし、主演を務める。2018年2月公開『リバージエッジ』、2019年2月公開オムニバス『LAPSE（リンデン・バウム・ダンス）』に出演。2019年10月初ドラマ出演となる「悪の波動　殺人分析班スピンオフ」が放送開始。2020年1月17日には今泉力哉監督作品『mellow』の公開を控えている。
http://tristone.co.jp/actors/sumire/