母の万引き

NewsCafe / 2013年11月22日 15時0分

40年余り住んでいるニュータウンは戸数2000戸の街である。かつては子供のにぎやかな声が聞こえ、夜10時過ぎのバスは若いサラリーマンで混雑していた。数軒の家電店・文房具屋・本屋・八百屋・魚屋・豆腐屋・薬局・クリーニング屋・ケーキ屋…があり便利な町であった。ここ15年余りで、その多くが姿をけし、街の目抜き通りや街道筋には「数軒の大型の食品スーパー・ドラッグストアー・コンビニ」が出来て激戦区となっている。便利だが「何だか味気ない…」である。

昔、文房具&本屋兼業の店主が「中学生や高校生の万引きが多くて…。同じニュータウンの住民なので弱っている」と言っていた。最近の夏祭りで顔見知りになったニュータウンセンターエリアにある大手食品スーパーの店長は「最近は高齢者の万引きが多い。いずれも数百円の商品だが、スーパーは薄利なので…」とこぼすのである。

法務省の「2013年版の犯罪白書」では「女性の犯罪・非行を特集」している。それによると『昨年、刑法犯で検挙された65歳以上の高齢女性は全年齢層の27%を占め・1993年の6%から20年間で大幅に増えた。特に万引きで検挙される高齢女性が目立っている。昨年の女性刑法犯60431人のうち65歳以上は16503人・万引き(窃盗罪)が82%(13482人)。「高齢男性の刑法犯のうち万引きは47%」だから女性の方が際だって高い割合。昨年窃盗罪で刑務所に入った高齢女性は全罪名の82%に相当する234人。93年の18人から13倍に増え「万引き常習者が相当の割合」になる』と言う事である。

TVの「警察密着24時間番組・スーパーでの万引き摘発ドキュメント」でも「高齢者・高齢女性の万引きシーン」はすっかり定番である。中央M紙に「刑務所から仮出所中の67才の女性」の取材記事が掲載されていた。『お金に困っていたわけではなかったが「わがままな夫に対する怒り」で冷静さを失い総菜を万引きした。3回目に店員に見つかった。この時は警察に引き渡されずに済んだが、捕まる怖さを「イライラが上回り」やめられなかった。ついに逮捕され執行猶予判決が確定した。しかし店に行くと「次は刑務所」という考えも飛んでしまうのである。実刑判決を受け65歳で初めて刑務所に入り1年半服役した。今は夫から離れ、東京都の更生施設で立ち直りに向けた生活をしている。「なんてバカなことをしたのか。理性が働かなかった」と悔やむ』と言う取材記事が掲載されていた。

識者は『万引きを含む窃盗には「薬物や性犯罪のような全刑務所共通の改善指導プログラム」がなく・個々の施設が独自の再犯防止指導をしている。全国の9女子刑務所のうち、独自の指導をしているのは5施設。法務省矯正局は「高齢女性の窃盗の背景にはさまざまな要因があり、全国一律のプログラムは難しい」としている。更生施設の理事長は『万引きの動機は人それぞれだが、地域や家族の絆を失った人が多いように感じる』と言う。高齢化社会の進展で「母の万引き」が増える…予感がするのである。

[気になる記事から時代のキーワードを読む/ライター 井上信一郎]

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