DL違法化の対象拡大について研究者らが緊急声明、懸念はマンガ家にも

NewsInsight / 2019年2月20日 13時20分

無料でマンガを閲覧できる海賊版ビューアーサイト「漫画村」が世間を騒がせた2018年。著作権を有するマンガ家の利益を守ろうと、文化庁の文化審議会著作権分科会が対策を考えた。その結果、有力候補として出てきたのが著作権法を一部改正する「違法ダウンロードの対象拡大」だ。同庁が一般公募したパブリックコメントの結果を踏まえて、法改正の方向性が定まったと報告書を公開した。

「違法ダウンロード」とは、違法でアップロードされたものと知りながら、コンテンツをダウンロードする行為のことを指すが、今回の対策では、従来の「映像」「音楽」などに加え、「静止画」「テキスト」まで対象範囲が拡大される方向だ。

これを受けて、2019年2月19日に、明治大学 知的財産法政策研究所長の高倉成男氏を中心とする87名1団体が、「ダウンロード違法化の対象範囲の見直し」に関する緊急声明を発表した。声明文は、「ダウンロード違法化の対象範囲について立法措置を図る際は慎重に議論すべき」「規制対象を被害実態の明らかになっている海賊版対策に必要な範囲に要件を限定すべき」という内容だ。

今回の緊急声明が発表される以前からも、「違法ダウンロードの対象拡大」は、二次創作などをはじめとするクリエイターの活動を大きく妨げる要因にもなり、マンガやアニメ、イラストといったコンテンツ業界に大きな打撃を与えるのではないかと、反対の声が多かった。特に、本来守るべき著作権を有しているマンガ家からも、「望んでいる形ではない」と、対象範囲の見直しを求める声があがっているのだ。

『ラブひな』『魔法先生ネギま!』などを代表作に持つマンガ家の赤松健氏は、今回の「違法ダウンロードの対象拡大」について、漫画村タイプの海賊版サイトには効果なし、電子書籍ストアの作品スクリーンショットは結局合法のまま、無関係な国民に広く影響が及ぶと問題点を指摘。『のだめカンタービレ』『七つ屋志のぶの宝石匣』を手がける二ノ宮知子氏も「誰が頼んだよ、こんなの…」と落胆を示した。

一般ユーザーの保護には留意するも、不安の残る表記

もちろん、文化庁が関係者の意見を無視して法改正を断行すると決まったわけではない。同庁の報告書には、ダウンロード違法化の対象範囲について

(ⅰ)まずは,音楽・映像以外の著作物の特性等を把握した上で,(ⅱ)その特性等も踏まえつつ,違法にアップロードされたという「事実を知りながら」ダウンロードを行うユーザーの行為にどのようなものがあるかを可能な限り具体的に明らかとし,(ⅲ)そのような場合におけるユーザーのダウンロード行為の内容・性質を前提に,それを違法化することがユーザーにもたらす影響と,違法化しないことが権利者に及ぼす不利益(既に行われた違法アップロードによる被害拡大)を比較衡量し,(ⅳ)仮にユーザーにもたらす影響を軽減するとして,そのような行為を必要十分な形で違法化の対象から除外するために,どのような限定方法があり得るか,(ⅴ)そのような限定方法について,音楽・映像との差異等を合理的に説明することが可能か,悪影響が生じないか,といった点について,順次検討を行うことが必要である。

と書かれている。要するに、さまざまなシーンを具体的に考慮しながら、比較検討を進めていくということだろう。

また、改正案では違法コンテンツを含む画面をスクリーンショットすることがNGとされているが、この件についてのパブリックコメントに対しては

これらの事例については~中略~ユーザー保護の必要性と,現在把握されている被害実態等を踏まえた立法措置の必要性について利益衡量を行うと,必ずしも違法アップロードによる被害全てに対応することまでは求められず,特に経済的被害が顕著である部分,立法措置の必要性が高い部分のみに対応すれば足りる(とりわけ,刑事罰についてはそのような部分に限定すべきである)といった考え方も成り立つとも考えられる

と発表している。

つまり、スクショ即逮捕にはせず、被害が顕著な部分のみ対応すればいいという考え方がある、ということだ。とはいえ、「そういう考え方もあるよね」という表現にとどめており、意見した側からすると、「一定の理解を示しただけ」と不安になってしまうのではないだろうか。

仮にダウンロード違法化が行われる場合でも

ダウンロード違法化の対象範囲をどのように設定するにせよ,「違法だと当然に知っているべきだった」,「違法か適法か判断がつかなかった」等の場合には,ダウンロードは違法とならないよう要件が設定されることが適当であり,現行の「事実を知りながら」という要件の適否も含めて検討することが適当である。このような対応が行われることを前提にすると,ユーザーが違法にアップロードされた著作物だと確定的に知っている場合にのみ,ダウンロードが違法となるため,一般のユーザーが十分な確認をせず,気軽に,静止画やテキスト等のダウンロードを行う場合等については,そもそも,違法化の対象とはならない

と明記されている。「知っていたかどうかの判断」はどうするのかという問題は残りそうだが、報告書にはユーザー保護の正当性についても考慮する姿勢を示す内容が書かれている。また、「ユーザー保護のための対応の選択肢」のなかで、二次創作を対象から除外する選択肢が書かれていたが、「文化庁の見解では多くの課題が残る」というような印象を受けた。

一方で

一部分でも相応の経済的価値を有する著作物(例:漫画の重要な場面を示す1コマ,詩や歌詞の主要部分)もあり得るところ,実質的に権利者の利益を害しないというのは具体的にどのような場合なのか,(ⅳ)そのような場合を違法化の対象から除外しつつ,権利者の利益を害するような場合は除外しない,という立法措置を行うための合理的な方法があり得るか,という点についても精査が必要である

と、厳しい基準で審査を進めていく姿勢も、ユーザーを不安にさせる材料になっているのかもしれない。

研究者や弁護士が緊急声明に至った違法ダウンロード対象範囲拡大問題。法改正の内容が正式に決まったわけではないが、多くの人々が不安になっていることは事実だ。

海賊版サイトの撲滅や著作権者の利益保護は目指すべきところではあるが、善良な一般ユーザーや二次創作クリエイターをないがしろにせず、効果のある法改正を目指して、関係者たちの建設的な意見交換が行われるべきだろう。

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