中国映画『戦狼2』、大ヒットは政府の「操作」のおかげ? 政治的な内容にも賛否

NewSphere / 2017年9月4日 18時30分

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中国映画『戦狼2』、大ヒットは政府の「操作」のおかげ? 政治的な内容にも賛否

著:Jack Hu(Global Voices Journalist)

 中国のアクション映画「Wolf Warriors 2(原題: 戰狼2)」が夏の興行収入で優位に立ち、7月27日に公開してからわずか13日間で35億元(約600億円)の興行収入を達成した。

 ウー・ジン(呉京)氏が監督と主演をつとめるこの映画は、2015年に公開した「Wolf Warriors」の続編で、ウー氏が演じるランボーのような兵士のレン・フェンが、アフリカの戦争ゾーンに足を踏み入れ、西部の悪人から数百人の命を救うストーリーである。

 こういったプロットは、ハリウッドのアクション映画を見た人にはおなじみだろうが、今回はある中国人が正義を貫き、世の中の安全を守る。これは映画賞を受賞してきた典型的なストーリーだが、批判もある。 映画ファンの多くは、映画に描かれている中国ナショナリズムが高圧的であり、ストーリーを犠牲にして成り立っていると非難している。

 「Wolf Warriors 2」は個人が資金提供をし、人民解放軍の設立を誇張しているプロパガンダ(政治的宣伝)映画である「The Founding of an Army」よりも興行成績が上回っている。 調査ジャーナリズム・プラットフォームのInitium(イニシウム)で主催されたオンライン会議の参加者は、映画の大きな成功は本質的なものではなく、当局の注意深い操作の結果であると主張した。

 オンラインチケット発行のプラットフォームであるMaoyan(猫眼电影)での映画評価によると、 「Wolf Warriors 2」の評判は良い。大衆向きで、話題になりやすい大ヒット映画である。さらに、同時期に公開した他の国内映画の質は高くない……それに加えて、今月は国内映画保護期間(いわゆるハリウッド映画のブラックアウト期間で、6〜8週間、中国映画をより多く上映するために、外国映画が中国本土の劇場で上映禁止されている)なので、 「Wolf Warriors 2」の興行収入が上がることは予測可能である。予測できなかったのは、8月1日の中国軍事デーを記念して、映画が公開される直前の7月30日に行われた軍事パレードである。パレードは人々のナショナリズム感情を刺激した。それは、政府が資金提供をしたこの映画のための巨大な広告であり、興行収入は急激に上がった。 「Wolf Warriors 2」が更新した興行収入記録は、歪んだ中国映画市場を反映している。政府によって提唱されたナショナリズムは、映画業界に影響を与えており、映画制作チームからのプロモーションは、映画業界全体がさらに興行を押し上げ、伝説的な成功をもたらしたが、これは市場ではなく行政の結果だったのだ……

 実際、多くの政府や軍と提携するメディアが、この映画について肯定的な見解を発表している。その主張は、主人公は人民解放軍の兵士であり、映画は中国のナショナリズムを新しいレベルに昇格させるというものだ。 映画ポスターのキャッチフレーズは、「中国を害する者はどんなに遠くにいても処分される」(犯我中華人雖遠必誅)である。

 その映画に対するネット民のレビューは様々だ。 中国で重度に検閲され、愛国的な談話が盛り込まれたソーシャル・メディア・プラットフォームであるWeiboとWeChatでは、肯定的なコメントがほとんどだ。 たとえば、Weiboで最も人気のある映画レビュースレッドで、以下の2つのコメントには10,000以上の「いいね」がついている。

 「Wolf Warriors 2」を観たら、中国に生まれて良かったと思うだろう。

 ヤバい、この映画は最高だ。鑑賞中、心が熱くなった。ウー・ジンはカッコよすぎる。国内映画の中でもダントツだ。必見さ。

 一方、大衆アート鑑賞と格付けの人気ウェブサイトであるDouban(豆瓣)には、映画を賞賛するコメントとともに批判的なレビューもある。

 プレミアで鑑賞。 この映画は恐ろしく、不合理であり、愚かな愛国心の夢だ。 すべての物理的なロジックを危険にさらす軍事装備を表現している。金持ちは無謀に行動できると言わざるを得ない。

 ウー・ジンの「宣伝スタイル」が野暮だ。 彼の目的は、主題を押し進め、「ナショナリズム」感情を引き起こすことである。それは人々に、彼が思いあがっていると感じさせる。 映画は 「Operation Mekong(オペ―レーション・メコン)」ほど良くはない。第一に、流れがスムーズではなく、ストーリープロットは有害であり、スクリプトの書き方は気恥ずかしくなる。 第二に、主題と幻想的なプレゼンテーションの編成は時代遅れで、やりすぎだ。

 ウー・ジン演じるレイ・フェンは、ジャッキー・チェンやジェイソン・ステイサムのようだ。 しかし、同じジャンルの他の映画では、主人公は個人主義の価値を表している。 だから、そのジャンルをコピーして国家主義イデオロギーという主題を扱うことは問題である。 我々はかつて個々の英雄主義を軽視していたが、全能のスーパーヒーローと愛国主義を結びつけるのは、もっと不愉快だ。

 中国人は米国豪州戦争映画の「ハックソー・リッジ(Hacksaw Ridge)」も好きだ。 この映画は、宗教的信仰が政治をいかに超えているかを示している。 しかし、ただ政権を呼び起こそうとしているだけの映画は、よりレベルが低い。 それは「政治的現実」と機会の産物である。

 人々はウーの戦闘シーンが優れていると言い続ける。私はステージ演出が人工的であると思った。ロケット推進式手榴弾を捕まえるためにスプリングベッドを使うことは、「中国義和団の乱」で、自分の身体で弾丸をブロックできると主張したボクサーの絶対的バージョンである。

それは政治的に正当化された映画で、不合理なプロットラインがある。観客の心を燃え上がらせ、個人的英雄主義と集団主義を結び付ける。

 同映画は海外でも公開されており、西欧の情報源の中に、より一貫性のあるプロフェッショナルで無修正の映画レビューを見つけることができる。 以下はサイトTL:DR Reviewsはこのように映画を判断した。

 「Wolf Warriors 2」は中国の宣伝映画を21世紀にもたらすが、堅実なストーリーを提示したり、多くの効果を生み出すことに失敗している。

 またこのサイトは、中国が強いことを証明するために、アフリカ人がこの映画でどのように表されているかを調べた。

 では、「Wolf Warriors」の主題は何だろうか、映画の中では「中国とアフリカは友だち」と言っている。このフレーズはあまりにも頻繁に出てくるので、私はその回数を数えようと思ったぐらいだ。 しかしそれ以上に感じるのは、中国がアフリカの保護者であり、未来の平和を望み、アメリカには中指を突き出して、中国の新しい未来を勝ち取っているということである。 再度言うが、魅力的な映画を作ることができるなら、これは決して悪いことではないが、ここでは上から目線の批評は効力をもたない。それはアフリカ人と同様にその観客を子ども扱いし、また民間人の虐殺を大いに楽しんでいる。 レンはこのプロットにとって不都合なので、虐殺される人々を見捨てる。実際、このレビューを書くために調べていた時にアフリカ人俳優の名前は見つからなかった。

This article was originally published on Global Voices. Read the original article.
Translated by yoppo

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