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派遣労働の規制は撤廃し、多様な雇用形態を労働者が選べる社会に - 池田信夫 エコノMIX異論正論

ニューズウィーク日本版 / 2013年10月8日 14時1分

 政府の規制改革会議は、労働者派遣法で原則禁止されている30日以内の「日雇い派遣」を見直す意見書を出し、厚生労働省に労働者派遣制度の規制緩和を求めた。これは小さな話のようにみえるが、民主党政権で一貫して強化されてきた雇用規制を緩和する方向に転換する、大きな一歩である。

 派遣労働についての政府の方針は、二転三転してきた。2000年代初頭の信用不安にともなう不況の中で、雇用の受け皿として非正社員が活用されるようになり、それまで専門職を中心としていた派遣労働が製造業などにも広がり、26業種になった。日本が「リーマンショック」以降の世界的な不況の中でも、4%前後の低い失業率ですんだのは、こうした雇用形態の多様化の効果が大きい。

 ところが2008年末に行なわれた「年越し派遣村」をきっかけにして、派遣労働を敵視する風潮が広がり、あたかも派遣=非正社員であるかのような錯覚にもとづいて、民主党や社民党などが規制強化を主張した。これに押されて、短期派遣や製造業派遣を禁止すべきだという声が強まり、2011年に労働者派遣法が改正されて日雇い派遣が禁止された。これによって労働者の待遇は改善されたのだろうか?

(図)非正社員の構成比(出所:人材派遣協会)



 上の図でもわかるように、派遣は非正社員1800万人のうち90万人、5%程度にすぎない。これは最大だった2008年より規制強化で55万人減ったが、その代わりパート・アルバイトが107万人増えた。派遣労働者には、次の仕事を派遣会社が紹介してくれるが、アルバイトには何の保護もない。つまり派遣労働の規制は、それより不安定なパート・アルバイトを増やしただけなのだ。

 この結果は最初から予想されたことで、ほとんどの経済学者が規制強化に反対した。にもかかわらず、労働政策審議会の労働者派遣に関する研究会は、派遣労働者の職種を26種に制限していた規制を廃止し、どんな仕事でも企業が無期限に派遣労働者を雇えるようにする一方、今後はすべての派遣労働者を3年で交替させなければならないという改正案の最終報告をまとめた。

 これは企業にとっては便利だが、派遣労働者の雇用は不安定になる。労働基準法では3年を超える有期雇用契約が認められないので、今までは無期限に働くことのできたSE・翻訳・放送など26業種の専門職も3年でクビになるのだ。こういう愚かな規制強化が繰り返される一つの原因は、上の「研究会」の委員7人のうち4人が労働法学者で、経済学者が1人しかいないという片寄った構成にある。

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