多忙な今の時代だからこそ! 「急須で入れた緑茶」が全世代の日本人から支持される理由

ニューズウィーク日本版 / 2014年3月6日 10時0分

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日本人の多くは、急須で緑茶を飲むことに対して、くつろぎやリフレッシュといった情緒的な価値を求めているようだ。

 コンビニや自販機で手軽に飲み物が買えるようになった現代。家族で食卓を囲み、急須でいれた緑茶をのんびり味わうことなど、もう過去の話――。と思い込んでいないだろうか。実は中高年などに限らず20~30代の若い世代からも、「急須で入れた緑茶」が圧倒的な割合で支持されていることが、研究機関の調査でわかった。

 お茶の栽培から加工、販売までを総合的に研究する静岡県立大学の茶学総合講座は、今年2月、全国の20代から60代までの消費者1000人を対象に、インターネットを使った「急須でいれた緑茶に関する意識調査」を実施した。

 まず「普段どのような方法で緑茶を飲んでいるか」たずねたところ、「急須で緑茶をいれる」と回答した人は全世代で53.8%と最も多く、次いで「ペットボトルで飲む」が29.4%、「ティーバッグでいれる」が10.7%と続き、半数以上の人が、普段から急須を使ってお茶を飲んでいることがわかった。

 続いて「急須でいれた緑茶の味わいが好きか」どうかたずねたところ、全体では88.7%の人が「とても好き」または「好き」と答えた。各世代別でも全ての年代で8割以上の人が、急須でいれた緑茶の味が「とても好き」か「好き」だと答え、日本人が世代を問わず「緑茶の味わいが好き」であることが裏付けられた。

 その一方で、急須でお茶をいれる文化が徐々に失われつつあることも、明らかになった。「自宅に急須はありますか」という質問に対して、30代では33.5%が、20代では31.5%が、「急須がない」または「あるが、使っていない」と答えている。この傾向は20代単身世帯になると顕著で、44.0%が「急須はない」と回答している。

 急須の代わりに台頭してきたのは、やはりペットボトルだ。20代では、緑茶を普段「ペットボトルで飲む」と回答した人が41.5%と最も多く、「急須で緑茶をいれる」の39.5%を上回った。30代も同様で、「ペットボトル」が43.0%と、「急須」の40.0%より多かった。


 

 このように緑茶の「飲み方」には変化が起きているが、それでも「緑茶を飲む文化」を後世に残すべき日本の「文化の象徴の一つ」と捉えている人は圧倒的な割合に上る。急須でいれた緑茶が「日本人にとってどのようなものだと思うか」たずねた質問に対して、過半数の人が「日本の食文化には欠かせない飲み物」、「日本人の味覚に合う飲み物」、「日本人らしさを感じる飲み物」と答えている。

 昨年12月に、ユネスコの無形文化遺産への和食の登録が決まったことから、「急須でいれた緑茶」が文化遺産として登録されるべきかどうかたずねたところ、約半数の43.8%が「登録されるべき」と答え、賛同している。

 今回の調査を実施した静岡県立大学の岩崎邦彦教授(農業経済学)は、「日本人にとって緑茶はいわば『国民飲料』であることが裏付けられた。若い世代では急須を持っていない人も増えているが、それでも多くの人が、緑茶を日本の食文化に欠かせない、大切にしたい文化だと捉えている」と、分析している。

 岩崎教授はまた、日本人の多くが、「急須で緑茶を飲む」ことで得られる家族の団欒や、精神的なくつろぎ、リフレッシュといった情緒的な価値にひかれていることに注目する。食生活が多様化し、欧米化した現在でも、売り方などの工夫次第ではまだまだ緑茶の需要を生み出すことができるはずだと指摘する。

 健康的な和食の人気は近年外国でも高まっているが、和食と共に緑茶の認知もまた世界に広がりつつある。昨年、同大学がアメリカ人の消費者を対象に実施した調査では、和食が好きな人ほど緑茶が好きな傾向が高いことがわかっている。日本から国外への緑茶の輸出は、過去10年間で3倍以上も伸びている。

 仕事に追われて多忙な毎日を過ごす時代だからこそ、急須で緑茶をいれてほっと一息つく時間が貴重だとも言えるだろう。今年はそんな伝統的な緑茶の楽しみ方が、あらためて見直されることになりそうだ。

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