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「自信なき大国」中国の未来

ニューズウィーク日本版 / 2014年6月4日 12時16分

 穏当な主張をする人まで逮捕しているのは、習近平(国家主席)が危険を感じているからです。胡錦濤(前主席)時代には逮捕されなかった彼らのような過激ではない人たちがなぜ逮捕されるのか。習政権にますます「安心感」がなくなっています。胡錦濤時代にも、胡錦濤より前の江沢民(元主席)時代に逮捕されなかった(ノーベル平和賞受賞者の)劉暁波たちが逮捕されています。これも胡錦濤に「安心感」がなかったから。中国政府の不安感はますます増しています。

 習近平は最近、「三つの自信(理論への自信、進む道への自信、制度への自信)」というスローガンを掲げていますが、実は1つの自信もない。だから、彼らはもっとも穏当とされる人たちさえ逮捕するのです。この4月に習近平は(国内の治安強化などのために新設した)国家安全委員会の初会合を開きましたが、彼が掲げた「11の安全」のトップは「政治の安全」です。それほど彼らには安心感がない。

──「政治の安全」という言葉はとても奇妙に聞こえます。

 彼らは「中国の特色のある国家安全の道」とも言っています(笑)。



「日本は謙虚過ぎてはいけない」と語る陳破空氏


──最近出版されたあなたの著書『日米中アジア開戦』(文春新書)を読んでいると、同意できる部分もありますが、同意しかねる部分もある。例えば、「日本人は腐敗した人民解放軍を恐れる必要はない」「仮に日本と中国が戦争になっても、決して自衛隊は中国軍に負けない」というような記述は、日本人に「中国と戦争できる」という誤解を広げることになりませんか?

 共産党はその初期のころには高い理想がありました。彼らは死を恐れず、人民解放軍は国共内戦や朝鮮戦争でも勇敢に戦いました。しかし、解放軍は今とても腐敗しています。この腐敗ぶりは外部からはとても想像できない。

 中国は独裁政権ですが、独裁政権には「国内では国民に対して圧政を敷き、国外では膨張をはかる」という特徴があります。例えばロシアは民主化したばかりのころは対外拡張の動きがありませんでしたが、プーチン大統領が独裁体制を固めたとたんにグルジア、ウクライナへの拡張を始めた。中国政府も同じです。国内では人民を抑圧する一方で、東シナ海や南シナ海への拡張を進めている。ベトナムやフィリピンをいじめ、日本を威嚇しています。

 中国は政府も軍隊も腐敗していて、必ずしも日本が負けるとは限りません。それなのに、もし日本が中国を過剰に恐れてしまうと、中国政府は一歩また一歩と日本、そしてフィリピンやベトナムを押し込んできます。これは恐ろしいことです。私は国際社会が団結して中国に向き合うべきだと考えます。彼らを後退させ、さらには民主化させる。もし25年前に民主化が実現していたら、このような事態にはなっていない。中国の民主化は中国の国民だけでなく、世界の人々にとってもいいことなのです。

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