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福島第一原発の凍土壁は安倍首相の面子を守る「万里の長城」 - 池田信夫 エコノMIX異論正論

ニューズウィーク日本版 / 2014年6月4日 16時37分

「廃炉はいつ終わるのか」と聞くと、増田氏は「30年から40年。廃炉の定義が決まっていないので正確にはいえない」。実質的に東電の「親会社」である国が目的を決めず、環境基準についても判断しないから、東電はいつ終わるとも知れない汚染水処理を続けている。

 東電は福島第一の廃炉費用として今まで9600億円を計上しているが、今後10年でさらに1兆円を追加する予定だ。合計約2兆円は、国費でまかなわれる。支援機構が4月から「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」という名前に変わり、廃炉費用も交付国債で調達できることになったからだ。

 これは最終的には東電が返済するが、それも電気代に転嫁されるので国民負担だ。そのコストの大部分は、無害な汚染水を貯水する作業に使われている。この無駄な作業は、国が「環境基準以下の汚染水は湾内に出してもよい」と決定すれば必要なくなるが、環境省は何もしない。安倍首相が「国が前面に出る」といったきり、この問題から逃げているからだ。

 膨大な先の見えない作業を淡々と進める作業員には頭が下がるが、指揮官である安倍氏は逃げたままだ。凍土壁は来年3月から凍結を開始するそうだが、これは厄介な問題からみんな逃げて誰も責任をとらない「日本的意思決定」の象徴として、万里の長城のように歴史に残るだろう。

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