日本経済の成長には「ホリエモン」が必要だ - 池田信夫 エコノMIX異論正論
ニューズウィーク日本版 / 2014年6月18日 13時56分
このように資本市場が活発化しない原因は、株式の持ち合いで経営者を守るカルテルが強固にできている上に、買収防衛策を講じて二重・三重に企業買収を防いでいるためだ。これは経営者が、資本を浪費して株価が下がっても企業買収で職を奪われないようにするモラルハザードである。
さらに経済産業省が、資本市場の発達を阻害している。2012年に経営危機に陥ったルネサスエレクトロニクスに対して、大手投資ファンドのKKRが1000億円出資する意思を示したが、経産省は産業革新機構を中心とする官民ファンドでこれを横取りしてしまった。経産省の産業政策にとって、民間ファンドが企業を再構築するM&Aはじゃまなのだ。
小泉改革の時代には日本でも資本市場が活性化し、ライブドアや村上ファンドなどが企業買収を提案したが、東京地検が介入してつぶしてしまった。今の日本経済の停滞は、株主を無視する日本の資本主義に世界の株主が愛想をつかした結果なので、GPIFで官製相場をつくっても効果はない。
しかし低収益は、投資家にとってはチャンスである。日本には時価総額より預金のほうが多い「100円の入った財布を70円で売っている」企業もまだあるので、これを買収して会社を清算するだけでもうかる。老舗の同族企業をファンドが買収して経営陣を一新すれば、まだまだ成長の余地はある。日本経済には「ホリエモン」が必要なのだ。
M&Aというと敵対的買収ばかり話題になるが、世界的にみても成功した買収のほとんどは友好的買収だ。経営陣が自社株を買収して経営合理化を行なうMBO(マネジメント・バイアウト)も出てきた。ローランドのMBOが話題になっているが、これを支援するのも外資系ファンドだ。日本のファンドは壊滅状態なので、せめて「外圧」でホリエモンが出てくることを期待したい。
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