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「ブラジルは治安が悪い」って誰が言った? - 森田浩之 ブラジルW杯「退屈」日記

ニューズウィーク日本版 / 2014年6月22日 14時46分

 日本にいたら口にするはずのないような、おしゃれな食事をいただく。値段はそれなりだが、べらぼうに高いわけではない。なによりご機嫌なアメリカンロックがBGMにかかっていて、気持ちのいい店だ。

 ブラジルに来て9日目。当初の緊張がすっかり体と頭から抜けたことに気づく。思い起こせば、この国の初日にレシフェの空港に着いた直後、タクシーに乗った僕は、運転手の言い値が「25・・」と聞こえたので、「それは25ブラジルレアルか、25米ドルか」などという質問をけんか越しの口調で言っていた。その間、脚を外に出してドアが閉まらないようにしていた。

 明らかに過剰反応だった。その後、タクシーの運転手はみんなといっていいほど親切で、きちんとした仕事をしてくれていることがわかってきた。



「危なくないですか」「最後まで気を緩めずに」といったメールを、今もときおり日本からいただいている。もちろん統計的に見れば犯罪率は高いのだから、用心するに越したことはないのだろう。

 けれども、そこにこだわっていると、僕みたいに必要以上に緊張することになる。ここはイラクでもなく、アフガニスタンでもない。サッカーという世界で最も人気のあるスポーツの世界選手権が行われているブラジルだ。

 日本に比べて貧富の格差が大きかったり、さまざまな問題はあるにせよ、大会は粛々と進んでいる。スタジアムの建設工事の遅れが大会運営に支障をきたしているという報道も聞こえてこない。むしろ僕にしてみれば、東京の表参道より、こちらの「表参道」のほうがずっと落ち着く。

「ブラジルは治安が悪い」。それはいったい誰が世間に伝えはじめたことなのだろう。この情報がなければ、僕はもう何日か早くワールドカップを「楽しむ」モードに入ることができたはずなのに。

  このトピックはもう1度きっちり、この場で書きたいと思う。日本人にとって見過ごせない要素を含んだ言説が作用していると考えるからだ。

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