「忘れられる権利」の行使にグーグルがしっぺ返し - 瀧口範子 @シリコンバレーJournal
ニューズウィーク日本版 / 2014年7月8日 13時16分
だが、面白いことも起こっている。
それは、記事が削除されたことについてグーグルがメディア会社に報告し、それによってその記事が新たに陽の目にさらされていることである。
たとえば、これまでわかっているところで、BBC、イギリスの新聞社ガーディアン、デイリー・メールなどが「残念ながら、御社のこれこれの記事を検索結果から削除しました」という自動告知をグーグルから受けたらしい。
そのうちガーディアンは、6つの記事を削除されたのだが、そのこと自体を記事にした。3つの記事は、スコットランドのサッカー・プレミアリーグの審判ダギー・マクドナルドが、ペナルティーの理由を偽って辞任に追い込まれた2010年の事件に関することだ。
同紙は、イギリスとアメリカのグーグルの検索結果を並べ、「このように3記事が削除されています」と比較し、「記事をご覧になりたい方は、どうぞこちらのリンクへ」と過去の記事へ誘導している。こっそり消し去ろうと目論んでいた自分の過去は、これで再び人目を集めることになってしまったわけだ。
BBCのケースでは、無謀な投資によってメリルリンチを破綻の淵に追いやった元CEOスタン・オニールに関するブログ記事へのリンクが検索結果から削除された。そのブログを書いた記者本人がこれを報じて、「パブリック・レコードから私の記事が削除されてしまったが、この記事の内容は不適切、無関係、あるいはすでに無効なのだろうか。フーム」と皮肉っている。この彼の新しい記事によって、読者は昔のできごとを復習することになった。
いろいろなケースがあるだろうが、少なくとも上記2件について小気味よさを感じるのは私だけではないだろう。グーグルも削除したリンクについては、「ヨーロッパでのデータ保護法により、検索結果の一部が削除されているかもしれません」と表示している。また、上記のサッカー審判の記事については、ガーディアン紙からの要請もあってグーグルは検索結果を再び表示している。
ガーディアン紙は、「メディア会社は、報道の自由を阻む間接的な圧力に屈してはならない」と訴えている。ただし、未成年が小さな罪を犯したことを削除すべきかどうかは議論の余地があると言い、それでもそれを議論するのはメディア会社であって、グーグルではないと強調している。もっともな見方だ。
この「忘れられる権利」は、部分的には同感できるものの、現状のままならば大部分において多くの不透明な問題を抱えていると思う。
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