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最強のドイツ経済に落日の足音?

ニューズウィーク日本版 / 2014年9月25日 17時23分

 ドイツの景況感に暗雲が垂れ込めだした。ユーロ圏の経済が依然として伸び悩む中、ウクライナをめぐるロシアと欧米の制裁合戦でドイツ企業にしわ寄せが及び始めたからだ。

 ドイツのIFO経済研究所が発表した9月の企業景況感指数は104.7で、13年4月以来の最低水準だった。「ドイツ経済はもはや順風満帆ではない」と、同研究所のハンスウェルナー・ジン所長は言う。

 ユーロ圏最大の経済大国ドイツはヨーロッパの経済成長の牽引車であり、ドイツ経済に影が差せば、ユーロ圏の他の17か国にも影響が及ぶ。

 ドイツにとってロシアは重要な貿易相手国だ。ウクライナ問題で欧米諸国がロシアに制裁を課し、ロシアが対抗措置を取る状況が続けば、ドイツ経済はとりわけ深刻な影響を受けるだろう。

 EUはロシアに対する制裁措置として金融取引と貿易を規制し、ロシアはこれに反発して欧米諸国からの食品の輸入禁止などの報復措置を打ち出した。ロシアはヨーロッパ向けの主要な天然ガス輸出国だが、今のところはまだガスの供給停止というカードは使っていない。

 投資家はヨーロッパとロシアの緊張の高まりを嫌気し、企業も設備投資を控え始めている。地政学的な問題に加え、ユーロ圏では緊縮財政で公共部門の支出が抑えられ、金融改革で企業や個人への銀行の貸付が大幅に削減されたことも成長の足を引っ張っている。

 多くのユーロ導入国では失業率が依然として高く、インフレ率は0%をわずかに上回る低水準で推移している。ユーロ圏の今年第2四半期(4〜6月期)の経済成長率は前期比ゼロの横這いだった。

 欧州中央銀行(ECB)は民間銀行の融資を活発にし、経済成長を促すために政策金利を引き下げ、市中に大量のユーロを供給している。

 それでもユーロ圏の9月の経済成長率は今年最低を記録した。金融情報会社マークイットが発表した速報値では、ユーロ圏の9月の生産指数は52.3で、8月の52.5から下落し、今年1月以降の最低だった(この指数では50が分岐点で、それを越えればプラス成長になる)。



 マークイットはサービス、製造、建設の3部門の購買担当者に調査票を送り、その結果を指数化している。「調査結果はユーロ圏経済の停滞を浮き彫りにした」と、同社のチーフエコノミスト、クリス・ウィリアムソンは言う。「域内生産と需要が伸び悩めば、雇用の伸びも再び鈍化し、企業が価格競争に走るため物価は下がり続け、必然的にデフレ懸念が高まる」

 今年第3四半期(7〜9月期)のユーロ圏の成長率は「せいぜい」0.3%止まりだろうと、ウィリアムソンは見ている。ドイツの0.4%が底上げしても、フランスをはじめ他の加盟国の停滞が足を引っ張ると予想されるからだ。「第4四半期にはさらに成長が鈍化しそうな気掛かりな兆候もある」

 その兆候とは、製造部門の新規受注が15カ月ぶりに減少に転じたこと。加えてサービス部門の企業の向こう1年間の景況感見通しもドイツ経済に翳りが差したために悪化している。ウクライナ危機とそれによるロシアの制裁への懸念が広がる中、単一通貨圏全体の経済的な苦境に対する懸念も消えておらず、こうした不安がユーロ圏の経済に及ぼす影響は深刻化しつつあると、ウィリアムソンは警告する。「厳しい向かい風の中で、ECBの景気刺激策が功を奏せず、今でも弱い需要がさらに冷え込む危険性がある」

シェイン・クラウチャー

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