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船も遠隔操作で動かす時代

ニューズウィーク日本版 / 2014年10月17日 12時25分

 プロジェクトの責任者を務めるオルヌルフ・ヤン・ロドセスによれば、「最大の狙いは船のすべての機能のうち、どの程度まで自動化できるかを見極めること」だ。「短期的には、乗員を1人だけに減らして操縦の大部分を陸で行うようにしたい。そしてゆくゆくは、自動化技術によって海難事故がゼロになる日が来るはずだ」

 アメリカでは、米国防総省の防衛先端技術研究計画局(DARPA)が対潜水艦作戦用持続追尾無人艦(ACTUV)を開発中だ。米海軍には既に米テクストロン・システムズ社が開発した、作戦投入可能な無人艇がある。

 軍用であってもメリットはEUのものとそう変わらない。人間が生活するのに不可欠な設備を取り払えば、船体をスリム化できる。コンピューター、GPS、マイクロ波など多くのテクノロジーと同じように、無人船の技術革新も軍用から商用に転用するのはそう難しくはないはずだ。

 ただし今すぐというわけではない。当然、抵抗もあるだろう。現在世界の海を航行中とみられる約10万隻の船の80%を代表する国際的船主団体「国際海運会議所(ICS)」の渉外責任者サイモン・ベネットは、無人船が実験段階を脱するまでにはまだ相当の時間がかかるとみている。

「船が無人で航行できるようになるのは20〜30年ぐらい先だろう」とベネットは言う。「現行の国際法では航行時の最少乗員数が厳密に定められている。乗員数の削減は反発の大きい問題だし、人間はとかくテクノロジーを過信しがちだ。システムがダウンすれば、われわれ人間の昔ながらの航海術だけが頼りなのだが、そのことを忘れずにいられるかどうか」

 ベネットによれば10年後にはeナビゲーションというシステムがスタートする。現在の船舶航行管理システムでは船が岸に近づくと地元の沿岸警備隊から乗員に指示が出るが、それが自動化されるはずだ。



海賊のいい「カモ」に?

 最終的には船長と乗組員が船を制御して責任を持つという点は変えるべきでない──そう考える人々は抵抗を覚えるだろうと、ベネットは承知している。「海上輸送の遠隔操作の拡大は非常に議論を呼ぶテーマだ。技術の進歩に伴い、議論は今後10年は続くだろう」

 現に貨物船の自動化に公然と反対する声も一部で上がっている。世界全体で120万人の雇用が懸かっているからだ。

 無人船が突き付ける危険性は失業だけにとどまらない。海賊から狙われる危険性もあると、無人システム関連のコンサルティング会社、UVSコンサルティングのアントワーヌ・マルタンは指摘する。

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