チャイナ・アズ・No1でもあわてるな
ニューズウィーク日本版 / 2014年10月22日 14時51分
IMF(国際通貨基金)は先週、為替の影響を排除した購買力平価(PPP)ベースで見たGDPで中国がアメリカを上回り、世界一になると発表した。中国が世界最大の経済大国に成長する過程で大きな一歩だ。
1872年から首位の座にあったアメリカには、このニュースに警戒心を抱く人たちがいるかもしれない。12年の大統領選で共和党の候補だったミット・ロムニーなどは、いずれ中国が経済面で優位に立つという見通しに懸念を表明し続けていた。だがPPPは中国経済の現状を知るには興味深い指標だが、よく考えればうろたえるほどの話ではないことが分かる。
指標としてPPPが便利なのは、各国間で異なる生活費の水準を考慮に入れられる点だ。例えば男性は中国でもアメリカでも、同じように髪を切ってもらえる。しかし中国のほうが人件費も店舗の賃貸料も安いので、理髪料はずいぶん安くなる。
同じ30ドルで、中国の男性はアメリカの男性より理髪店に数多く行ける。PPPはこの差を考慮するので、中国のような途上国の経済をごく普通のGDPより豊かなものに見せがちだ。
しかしPPPは兵器や国際貨物輸送料金のように、生活コストの調整を受けられないモノやサービスを測るときには、それほど役に立たない。経済の全体像を知るには、国内で生産された財の価値を示す名目GDPのほうが適している。
名目GDPでは、アメリカが断然優位に立っている。昨年のアメリカの名目GDPは16兆7200億ドルだが、中国は9兆3300億ドルにとどまった。中国が増える富を軍事力拡大に注いでいることを思えば、通常のGDPは今も重要な指標だろう。
中国の統計は眉唾もの
しかも名目GDPもPPPベースのGDPも中国経済の総合的な力を的確に示すものではないと、エコノミストらは主張する。中国の企業各社を調査している米チャイナ・ベージュブック社のリーランド・ミラーによれば、中国の統計はたいてい当てにならない。
米コンサルティング会社ローディアム・グループで中国を担当するペイペイ・パオは、GDPには環境や社会関連のコストが反映されないため、エコノミストは別の指標を必要としていると語る。「国力や生産性の指標としてGDPを使うことは問題視されるようになってきた」
中国とアメリカの経済を比較するときにPPPベースと名目GDPを区別することには、やがて意味がなくなるだろう。エコノミスト誌の予測によると、中国経済は今も年間成長率が高いため、20年には名目GDPでもアメリカを抜くという。
それでもアメリカは、1人当たりGDPでは大幅に勝るはずだ。昨年はアメリカが中国の5倍以上あった。
今回のIMFの発表に政治家がどんな説明を加えようと、一般のアメリカ人はあまり驚かないだろう。ピュー・リサーチセンターによる最近の世論調査では、既に中国が世界最大の経済大国だと思っているアメリカ人が半数近くに達している。
[2014.10.21号掲載]
マット・スキヤベンザ
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