アメリカで人気の反フェイスブックSNS「エロー(ello)」の実力 - 瀧口範子 @シリコンバレーJournal
ニューズウィーク日本版 / 2014年11月19日 15時59分
現在100万人以上のユーザーを抱えるエローはまだベータ版の状態で、登録にも招待が必要だ。ユーザー登録が集中した際にはサイトがダウンするなど、まだまだ手作りの状況であることが察せられる。メジャーなソーシャル・ネットワーク・サービスと呼ぶには、ユーザー数の点でももっとスケールが必要だし、ちょっとサイトを見たところでは、デザインはシンプルなのにわかりにくいところも多々ある。
エローのようなソーシャル・ネットワークの「常識」を踏襲しない新しいサービスに成長して欲しいと望む一方で、「なかなか簡単ではないだろうなあ」と思ってしまうことも確かだ。アンチ・フェイスブックのサイトで言えば、以前にもディアスポラというサービスが作られた。今でもあるものの、未だフェイスブックほどの注目は集めていない。
エローといえどもフェイスブックと同様のユーザー数を獲得するのが難しい理由はいくつかある。
まず、一部の人々も指摘しているように、まだインターフェイスがこなれていないために少々使いづらい。次に、何と言っても「ソーシャル」だから、そこにたくさんユーザーがいなければ成り立たない。ソーシャル・ネットワークは一定の閾値を超えなければ、密度が足りなくて意味をなさない。逆に言えば、その閾値を超えれば加速度的にユーザーが増える。
さらにある専門家が指摘しているように、後発としては何か新しい機能性がなければ注目を集めないだろうという点。たとえば、インスタグラムのように撮った写真がおもしろい方法で加工できてシェアできるとか、ピンタレストのように自分のテイストを披露できるなどの機能だ。今のところ、そうした新しい機能はエローには見られない。
だが、もっとも大きな理由は、ユーザーが現状のソーシャル・ネットワーク・サービスに不満を言いながらもまだ愛想を尽かしてはいない点だ。「いつも同じ広告が表示される」とか、「プロモーションが出てきて邪魔」という声が聞かれ始めたものの、便利さを享受したい気持ちやつながっていたい気持ちの方が大きくて、そんな障害を乗り越えて利用を続ける。反対側から見れば、広告主らはそれだけ巧みということである。
自分のプライバシーやデータ売買について意識的でなければ、大多数のユーザーは「わかっているけれども、まあいいか」という状態であるのは容易に想像がつくことだ。だがいずれは、ユーザーを商品とすることが時代遅れに見えるような新しくて賢いソーシャル・ネットワーク・サービスのモデルが出てきてほしい。だからこそ、エローの行く末には注目したいのだ。
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