企業秘密だけじゃない、ソニーがハッカー攻撃で失ったもの - 瀧口範子 @シリコンバレーJournal

ニューズウィーク日本版 / 2014年12月13日 12時45分

 ソニーのハッキング事件が面白いことになってきた。同社は大変な災難に遭ったわけだが、同時に事件の「結果」をどうとらえるべきかについていろいろな考察を迫られるだろう。

 まず、事件をおさらいしよう。

「平和の守護神(Guardians of Peace)」と名乗るハッカー集団がソニー・ピクチャーズ・エンターテインメント(SPE)の社内ネットワークに侵入し、重要な書類等を盗み出したことが明らかになった。11月末のことだ。言うまでもないが、SPEはソニーの映画部門でハリウッドのパワー・プレーヤーだ。

 何が盗まれたのか。これまでわかったところでは、社員(とくにエグゼクティブ)の給与明細、社会保障番号、ビジネス戦略の概要、俳優や取引先との契約額、新作未公開の映画5本、そして社内メールだ。ただし全容はまだ不明で、これまでと同様、これからも五月雨式に出てくるかもしれない。

 当初、その手法からこのハッカーたちは北朝鮮の関係者と見られていたが、現在では別者という見方も強いようだ。ただし「守護神」が北朝鮮の最高指導者、金正恩の暗殺計画を描いたコメディー映画『インタビュー』の公開中止を求めていることは確かなようだ。またソニー・グループは同期間に、複数のハッカー集団から攻撃を受けている。

 流出した情報はいろいろな帰結をもたらすだろう。

 給与明細は、社内のモラルの低下につながる可能性が高い。誰がいくらもらっているのかがわかるだけでなく、「なぜ仕事のできないアイツが俺よりもたくさんもらうのだ?」などの疑問や不満を刺激し、上司に昇給を要求する社員、辞める社員などが続出するだろう。

 ビジネス戦略や取引先との契約の情報は、ビジネスにとってまずい。秘密裏に進めていた新しい映画のプロジェクトが丸見えになる。契約情報は今後これを盾に別の俳優や会社から高い額を要求される事態も招くだろう。

 未公開映画は、本当にまずい。すでに作品はファイル共有サイトにアップされてしまい、多くの人々がダウンロードしただろう。映画を公開したときには映画館がガラ空きということにもなりかねない。ソニーは、そうしたダウンロードサイトに反対に攻撃を仕掛け、ダウンロードに延々と時間がかかり、またダウンロード完了の暁にはファイルの中身は空だったことにする作戦に出ているようだ。

 社内、社外関係者とのやりとりを明らかにしたメールの内容も興味深い。ことに注目を集めているのは、SPEの共同会長兼同社映画部門会長であるエイミー・パスカルのやりとりだ。

  • 前のページ
    • 1
    • 2
  • 次のページ
ニューズウィーク日本版

トピックスRSS

ランキング