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日本から世界へ広がる「リアル脱出ゲーム」とは何か

ニューズウィーク日本版 / 2015年6月3日 11時35分

 デービッド・スピラのチームは準備万端だ。気合いの掛け声も不要、既にアドレナリンはみなぎっている。彼らは入り口をくぐり、背後でドアがバタンと閉まった。男女7人のチームは部屋中に散らばり、引き出しを開け、壁から版画を引きはがしてキビキビと攻めてかかった。

 スピラが敷物をひっくり返して何かを発見し、叫び声を上げた。監禁でもされている? いや、彼らが挑んでいるのは、ニューヨークでミッション・エスケープゲームズ社が運営する体験型脱出ゲームだ。

 このゲームは、部屋に閉じ込められた参加者たちが手掛かりや暗号、パズルを解き、何らかのストーリーやテーマを導き出して鍵を開け、脱出するというもの。制限時間は大抵1時間だ。

 世界的な現象となっていたこのゲームは、アメリカに上陸するやいなや爆発的ブームに。大学研究者や企業のマーケティング担当者の注目さえ集めている。

 シラキュース大学で「遊びが大切だから研究所」を開設したスコット・ニコルソン准教授はゲームの双方向性を絶賛している。「人々をテレビ画面の前から引きはがし、対面の付き合いに没頭させる」。さらに、「異なるタイプの挑戦が用意されているから、どの参加者も得意分野を生かしてヒーローになれるチャンスがある」という。

 スピラのチームでは、リンゼイ・フロエリックとリサ・ラッディングが言葉パズルで活躍し、ジェイソン・リズナックが数字を担当、ジェイソン・カシチオは配列を解く「ハッカー」役を務める、といった具合だ。リーダーのスピラは、アメリカ初のいわゆる「体験型脱出ゲームブロガー&評論家」でもある。

 スピラのチームにとってゲーム開始から最初の5分は部屋中を引っかき回す「組織化されたカオス状態」。あらゆるヒントを即座にかき集めるこの戦略は、以前の苦い失敗から生まれた。「1つのパズルを10分もかけて解こうとしていたけど、僕が腰掛けていたクッションの下にあったヒントをずっと見落としていた」と、リズナックは笑う。

 彼らは時に、過剰なほどきちょうめんになる。元診療所を会場にした脱出ゲームに参加したとき、スピラは尿検査のサンプルを見つけてヒントに違いないと眺め回した。でも実際は、置き忘れのゴミだったらしい。

仕掛けを駆使して進化

 日本でコンピューターゲーム「クリムゾン・ルーム」として誕生し、世界的な現象を引き起こした脱出ゲームは、その後07年に同じく日本で実体験型へと発展。アジアから東ヨーロッパへと広がり、12年に日本のSCRAP社の「リアル脱出ゲーム」がサンフランシスコに上陸すると、驚くべき勢いで拡大した。「出来のいいものは、さながら芸術作品だ」と、スピラは言う。

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