予備選では、なぜ極端な候補が先行するのか - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代
ニューズウィーク日本版 / 2015年9月9日 17時35分
民主党予備選ではヒラリー・クリントン候補の支持率がジリジリ下がってきています。「メール・スキャンダル」が長期化する中で、「何か隠している」とか「信用できない」といったイメージが拡散しているからです。
その一方で、支持率を上げているのがバーニー・サンダース候補です。「自称社会主義者」であり、「無所属議員ながら民主党と統一会派を組んでいる」という変わり種の政治家なのですが、来年の年明け早々に党員集会のあるアイオワ州での支持率は、ヒラリー候補42%、サンダース候補24%とかなり接近して来ています。
さらに、同じように来年早々に予備選のあるニューハンプシャー州では、何とサンダース候補42%、ヒラリー候補34%と支持率が逆転しています(いずれも複数調査の平均値)。
では、このバーニー・サンダース候補とは、どんな政治家なのでしょうか? そして、その政策はどんなものなのでしょうか?
この人は、1941年生まれの74歳。出身はニューヨークのブルックリンで、名門シカゴ大学を卒業しています。若いときは、ローカル左翼政党の反戦運動家でしたが、後にバーモント州最大の都市であるバーリントン(州都ではありません)の市長を4期16年、その後は連邦下院議員を8期16年やった後に上院に転じて現在は2期目です。
その政策ですが、
(1)全国の最低賃金を15ドルにする。まず政府が率先して実施。
(2)公立大学の授業料を無料化。
(3)全国一律の官営医療保険制度の創設。
(4)全米で、全労働者の病欠の有給化(家族ケア、長期療養も含む)。
(5)リーマン・ショック再発防止のための、厳格な金融業界への規制。
(6)金権選挙撲滅のための政治資金規制。
(7)徹底した温暖化対策。
(8)不法移民の合法化。同時に国境における「壁」建設には反対。
(9)賃金の男女平等。
という内容で、極めて具体的です。では、実現可能かというと、財源に関しても、全国レベルの合意形成という点でも現実味はありません。ですが、リベラルの言いたいこと「そのものズバリ」を政策として出してきているのは間違いないわけで、そこに支持が集まるわけです。
例えば共和党の側ではトランプ候補が「移民は追放」とか「イラクを再占領」などと言って喝采を浴びているわけですが、サンダースの「最低賃金15ドル」とか「公立大学はタダ」というのも「夢のようなプラン」だが「実行は困難」という点で似通っていると言えます。そして、こうした主張が「受ける」というのは「オバマ政権という中道現実路線」に対する「アンチ」だということもソックリです。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
トランプVSバイデン、一騎打ち!米大統領選、今後の注目は?
トウシル / 2024年4月25日 11時0分
-
どれだけ自民党が嫌いでも、「無能な野党」しか選択肢がない…米政治学者が憂う「日本政治の機能不全」
プレジデントオンライン / 2024年4月13日 7時15分
-
81歳のバイデン米大統領、側近も冷や汗「言い間違い」連発 「記憶力の悪い老人」に激怒→急きょ記者会見→また言い間違い【混沌の超大国、2024年アメリカ大統領選(5)】
47NEWS / 2024年4月11日 10時0分
-
NY州など北東部3州の米大統領選の予備選、バイデン大統領、トランプ前大統領が勝利確実(米国)
ジェトロ・ビジネス短信 / 2024年4月8日 0時50分
-
トランプは「面白い」、バイデンは「失望した」…アメリカのZ世代が"トランプ推し"に変わった理由
プレジデントオンライン / 2024年3月29日 9時15分
ランキング
-
1中国の産業スパイ活動に警戒すべき、独情報機関が国内企業に警告
ロイター / 2024年4月25日 1時5分
-
2[深層NEWS]北朝鮮の弾道ミサイルは「韓国の軍事基地が目標」…小原凡司氏
読売新聞 / 2024年4月25日 0時8分
-
3バイデン大統領、ロシア支援の中国を名指し「部品・技術を供給」と非難 ウクライナ支援予算署名
産経ニュース / 2024年4月25日 8時0分
-
4米軍がニジェールから撤収へ アフリカの過激派監視拠点 ロシアは軍事顧問派遣、強まる影響力
産経ニュース / 2024年4月25日 17時18分
-
5北朝鮮、岸田首相の真榊奉納を非難
時事通信 / 2024年4月25日 12時9分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください