2万人殺しても2万人増えるISISに米軍は打つ手なし
ニューズウィーク日本版 / 2015年10月14日 17時0分
米軍主導のISIS(自称イスラム国、別名ISIL)を標的にした空爆は、これまでに約2万人の戦闘員を殺害している――USAトゥデーが13日、匿名の米国防総省当局者2人の証言をもとにそう報じた。
問題は、2万人殺しても、2014年8月の空爆開始以来ISIS戦闘員の数が減っていないこと。同紙によれば、イラクとシリアには絶えず新兵が流入しており、ISISは2万~3万人の規模を保っているという。
オバマ政権はこれまで40億ドルの費用を投じて7300回近い空爆を続けてきた。シリアでは、アサド独裁政権やISISと戦う穏健な反体制派の軍事支援も行ってきた。それでも戦況は変わらず、ISISの支配地域も一向に狭まっていないようだ。
反体制派で訓練できたのは80人足らず
失敗だったのは空爆だけでなく、反体制派への軍事支援も同様だ。穏健派のシリア反体制派を訓練し、武器を提供するという5億ドルをかけた計画だったが、1年で5400人、向こう3年で1万5000人を訓練するという目標とは程遠く、今では数人の兵士しか残っていない。AP通信によれば、訓練を受けた80人足らずの反体制派兵士の多くは、戦場で逃亡するか、捕まるか、殺されたという。アシュトン・カーター米国防長官も先月、「計画を全面的に見直す」必要に迫られたことを認めた。
一方で空爆の犠牲になった民間人の数は着実に増加している。米政府は民間人死者を2人しか認めていないが、英ガーディアン紙は、独立したジャーナリストらが結成した「エアウォーズ」の8月の報告書を引用し、米軍主導の空爆による死者は少なく見積もっても450人に上るとしている。
まったく効果がないというわけでもない。USAトゥデーの記事に登場する米国防総省当局者の1人は、傍受したISISの通信によると、彼らが空爆を恐れ、戦略の変更を余儀なくされていることは明らかだという。そうだとしても、アメリカのISIS掃討作戦が功を奏していないことは明らかだろう。
ブルッキングズ研究所の軍事アナリスト、マイケル・オハンロンはUSAトゥデーにこう語った。「この戦争は完全に手詰まり状態だ」
ローレン・ウォーカー
この記事に関連するニュース
-
対イラン報復、イスラエルに3つの選択肢──核施設攻撃か、重要人物暗殺か、ハイテクで恥をかかせるか
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月16日 18時39分
-
【解説】米軍、イスラエルの防衛支援 緊迫の状況判明
AFPBB News / 2024年4月15日 13時14分
-
イラン、大使館空爆で「自制」一転 イスラエル大規模攻撃で風当たりさらに強まる
産経ニュース / 2024年4月14日 13時0分
-
米「関与せず」、シリアのイラン公館攻撃 イスラエルから事前通告なし
ロイター / 2024年4月3日 6時19分
-
米軍、シリアを空爆せず 国防総省が現地報道を否定
ロイター / 2024年3月27日 5時39分
ランキング
-
1イスラエル、イランに反撃 中部の空軍基地標的か
共同通信 / 2024年4月19日 21時12分
-
2イラン高官「直ちに報復計画はない」“イスラエルがイラン攻撃”米報道
日テレNEWS NNN / 2024年4月19日 18時37分
-
3襲撃された邦人5人、日系企業の駐在員で車列を組んでの通勤中…パキスタン
読売新聞 / 2024年4月19日 23時56分
-
4パキスタンで日本人乗った車に自爆攻撃、1人負傷 警察が犯人射殺
ロイター / 2024年4月19日 18時57分
-
5トランプ氏「我々にとってウクライナの存続は重要だ」、大統領選を見据え軌道修正か
読売新聞 / 2024年4月19日 19時8分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください