支持者は歓迎、トランプ「イスラム入国禁止」提案
ニューズウィーク日本版 / 2015年12月9日 17時0分
「何も問題はない。正しいことをしているだけだ」
8日朝、CNNのクリス・クオモから受けたインタビューで、共和党の大統領候補指名を目指すドナルド・トランプは確かにこう言って、イスラム教徒のアメリカ入国を完全に禁止すべきだという前日の発言を擁護した。
メディアと民主党は激しく反発。共和党の大統領選候補の一部からも厳しい批判の声が上がった。しかし、共和党支持者の間では、これでトランプ人気が一層高まるかもしれない。
トランプは7日晩、サウスカロライナ州で行われた集会で、その短い声明を一言一句そのままに読み上げた。「米当局が問題を分析できるまでの間」全てのムスリムを入国禁止にせよ──聴衆はスタンディングオベーションでこれに応えた。
サウスカロライナ州の集会を取材したCNNは、その場にいたトランプ支持者たちの熱烈な反応を報じている。イスラム教は「血のカルトだ」と言った支持者もいた。
こうした支持者の存在のせいか、マルコ・ルビオやテッド・クルーズなどトランプと争っている共和党候補のうち数人は、入国禁止の過激な提案にも控えめな反応しか示していない。かねてからトランプ批判に最も消極的だったクルーズは、「私の政策とは違う」とコメントしたきりだ。
トランプが選挙戦で反イスラム政策を打ち出したのはこれが初めてではない。いや、いくつもある。モスク(イスラム礼拝所)を監視対象にし、ムスリムをデータベースに登録せよと主張したこともあるが、それはナチスがユダヤ人に身分証明のための星章を付けさせたのと同じだ、と批判を浴びた。
反イスラム感情が共和党の選挙集会で話題になるのも初めてではない。2008年にジョン・マケイン共和党候補が、バラク・オバマは「アラブ人だ」と言った支持者をいさめ、オバマはアラブでもムスリムでもないし、いい人物だと聴衆に語ったのは有名な話だ。
「ルーズベルトはもっとひどかった」
トランプは、アメリカに住むイスラム教徒の多くがアメリカへの報復を狙っていると言う。それは事実から程遠いとしても、今のアメリカでこうした政策が支持を集めやすいのも事実だ。
トランプは、「ルーズベルトがやったことはもっとひどかった」とも言っている。第2次大戦中に日系人を強制収容所を入れた政策のことだ。
不法移民対策の好例としてメキシコからの不法移民をトラックに乗せて一斉検挙したアイゼンハワーの「ウェットバック作戦」を称賛したのと同様、歴史を持ち出すことでトランプの提案には前例がないと批判されるのを避ける狙いがある。
CNNのインタビューで、トランプはこう述べた。
「私は昨晩、聴衆の前で話した。実際、すごい数の聴衆だった......口に出した途端、スタンディングオベーションだ......彼らは賢明な人たち、この国の市民たちだ」
ジャック・マルティネス
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