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アルツハイマー病による死亡率がアメリカで急増

ニューズウィーク日本版 / 2017年5月29日 15時20分

<一方で、介護施設や長期養護施設で看取られる患者の比率は低下している。患者にとっても介護者にとっても厳しい現実が近づきつつある>

アメリカ疾病予防管理センターの研究で、アメリカでアルツハイマー病による死亡率が1999年から2014年の15年間で55%増加したことが分かった。高齢者人口の増加や、癌や心臓病の死亡率の低下といった様々な要因が、アルツハイマー病による死亡率を押し上げた。同センターが25日に発表した傷病・死亡件数をまとめた週報によれば、アルツハイマー病患者のうち自宅で死亡した割合も14%から25%へと増加した。

「現代の医療は加齢による病気に上手く対処しているが、アルツハイマー病は別次元の病気だ」と言うのは、ニューヨーク州のフェインシュタイン医学研究所のリトウィン・ザッカー研究所でアルツハイマー病を研究するルカ・ジルベルト博士だ。「アルツハイマー病は治療法も原因も不明なため、患者を死から守ることができない。今できるのは、対症療法だけだ」

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研究では、全米の州および郡単位で収集した死亡証明書のデータを分析し、アルツハイマー病による死亡率を割り出した。その結果、10万人当たりの死亡率は1999年の16.5%から、2014年には25.4%へと上昇していた。その増加率は55%だ。最も死亡率が高い地域は南東部に集中したが、中西部や西海岸も軒並み高かった。

2050年には1400万人に

さらに研究では、介護施設や長期養護施設で死亡したアルツハイマー病患者の割合が、1999年の68%から2014年の54%へと著しく低下したこともわかった。アルツハイマー患者の介護を無報酬の介護者──配偶者や子ども、親戚、友人などが担う割合が急増しているのだ。

予測では、アメリカのアルツハイマー病患者は2050年までに現在の3倍の1400万人に達し、医療費などその負担は年間1兆ドルに上るとみられている。

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「医者や医療システム、政治家、社会が一体となって、アルツハイマー病患者とその介護者を支えるために投資する必要がある」とジルベルトは言う。「アルツハイマー病が近い将来にもたらす社会的・経済的負担を減らすには、患者と介護者のための投資を増やすしかない。。数十年前から予期された事態が、いよいよ現実味を帯びてきた」

アルツハイマー病はアメリカ人の死因の6位で、65歳以上では5位だ。ジルベルトは、アルツハイマー病を引き起こす基本的なメカニズムを理解するために、更なる研究が必要だと指摘する。「それも、30年来成果のなかった仮説にこだわり続けるのでなく、まったく新しい研究手法も模索すべきだ」

【参考記事】アルツハイマーは第3の死因?

(翻訳:河原里香)


ジェシカ・ファーガー

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