パリ協定離脱に喝采するトランプの「真の支持基盤」は誰か
ニューズウィーク日本版 / 2017年6月2日 16時30分
<それは、地球温暖化は中国のでっち上げだ、と本気で信じる「情報に乏しい有権者」でもなく、赤いキャップを被ってトランプの応援にきた単純労働者や炭鉱労働者でもない>
エクソンモービルやアップル、ユニリーバといった超大手企業を代表する人々が懇願し、説得し、なだめ、脅した。テスラのイーロン・マスクCEOはドナルド・トランプ大統領への助言機関を辞任すると宣言した。
今週31日の時点では、イバンカ・トランプと夫で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー夫妻の友人たちは、最後の最後にトランプが温暖化対策の国際ルール「パリ協定」に残留する決断を下し、それをすべてクシュナーの説得の功績にする逆転シナリオを思い描いていた。そうなれば、おそらくクシュナーに迫るロシア疑惑関連の捜査にも少しは手心が加わるのではないかと期待して――。
【参考記事】トランプの「反・温暖化対策」に反対する意外な面々
結局、そうした大物たちの懇願も、クシュナー夫妻の社交界での地位も、そして何より地球の未来も、トランプの真の支持基盤と比べれば、ずっとずっとちっぽけな存在だった。その支持基盤は、炭鉱労働者でも、石油採掘の作業員でも、キリスト教右派でもない。
それはロシア疑惑が本当でも再選してくれる人々
表層的な見方もいまだにある。トランプがパリ協定から離脱するのは、「地球温暖化は中国のでっちあげだ」だという考えを、「情報に乏しい有権者」と共有しているからだ、というのだ。
大統領選でトランプを勝たせたと言われる単純労働者(ブルーカラー)や炭鉱労働者たちのためだ、という見方もある。
トランプは地球を破壊するために遣わされた悪魔だ、と言う人もいるかもしれない。
米議会へのロビー活動を行う環境活動家の1人は、「トランプの計算を考えると驚愕せざるを得ない。支持層へのアピールのために、地球をめちゃくちゃくにし、同盟関係を断ち切り、家族の反対も押し切り、アメリカの競争力を衰退させようとしている」と、語った。
【参考記事】トランプ、想像を絶する環境敵視政策が始まった──排ガス規制の米EPAに予算削減要求とかん口令
確かに、トランプが大統領選で温暖化対策の国際合意から「離脱」すると公約した時、集会に参加した人々は喝采を送った。しかし炭鉱労働者や石油採掘の作業員、「情報に乏しい有権者」といった少数のグループのために、トランプが公約を守るというのも理解しがたい。こうした有権者は、選挙介入やフェイクニュースなどの影響で、次の選挙では投票してくれないかもしれない。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
日鉄買収「日本よ。おめでとう」 トランプ氏、バイデン政権皮肉る
共同通信 / 2024年4月14日 14時48分
-
どれだけ自民党が嫌いでも、「無能な野党」しか選択肢がない…米政治学者が憂う「日本政治の機能不全」
プレジデントオンライン / 2024年4月13日 7時15分
-
トランプは「面白い」、バイデンは「失望した」…アメリカのZ世代が"トランプ推し"に変わった理由
プレジデントオンライン / 2024年3月29日 9時15分
-
日本製鉄によるUSスチールの買収・子会社化...「待った」をかけたバイデンの「本音」
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月25日 16時30分
-
バイデン政権のもとで息を吹き返すアメリカの「労働運動」...国民の67%が「組合を支持」する理由とは?
ニューズウィーク日本版 / 2024年3月23日 13時40分
ランキング
-
1襲撃された邦人5人、日系企業の駐在員で車列を組んでの通勤中…パキスタン
読売新聞 / 2024年4月19日 23時56分
-
2ミャンマー国軍、ロヒンギャ1000人以上を強制動員…「人間の盾」に利用か
読売新聞 / 2024年4月20日 7時39分
-
3イラク軍事基地で大規模爆発、1人死亡…米中央軍「米国が空爆の報道は事実でない」
読売新聞 / 2024年4月20日 11時25分
-
4イスラエル、イランに反撃 中部の空軍基地標的か
共同通信 / 2024年4月19日 21時12分
-
5ハリコフで「地下学校」開校へ 連日空襲のウクライナ第2の都市
共同通信 / 2024年4月20日 17時13分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください