ドイツのバイエルン州でもブルカ禁止に その目論見は?
ニューズウィーク日本版 / 2017年7月20日 7時0分
<欧州全体が、「ニカブ」や「ブルカ」などの着用を禁じる方向に動いている。ドイツのバイエルン州でも来る8月1日より、多くの公共施設で、顔を覆うベールの着用が禁止となる。ドイツで公式に禁止となるのは同州が初。その意図は?>
欧州全体が、「ニカブ」や「ブルカ」など、一部のイスラム教徒の女性の頭部や体の大部分または全体を覆うベールの着用を禁じる方向に動いている。総称して「ブルカ禁止」や「ブルカ討論」などと言及されることが多い。
フランスやオーストリアなどですでに特定の公共施設でのこれらのベール着用が禁止されているほか、審議中または地域的に施行されている国もある。今月11日には、欧州人権裁判所がベルギーでこれを禁ずる法律を支持する判断を下した。
南ドイツのバイエルン州でも来る8月1日より、公務員をはじめ、大学、幼稚園、あるいは選挙会場などの多くの公共施設で、顔を覆うベールの着用が禁止となる。ドイツで公式に禁止となるのは同州が第一号だ。
政治的駆け引き?
根拠としては、社会にとって人々がお互いの顔を見ることができるのは重要で、顔を向かい合わせることは「我々の対人関係の共存の基礎をなし、また我々の社会と自由な民主的秩序の基盤である」ことがあげられているが、これは今年初めの汎ヨーロッパ保守政党である欧州人民党の見解を引き継ぐものだ。
だが、2年前にはドイツの憲法裁判所が、教員の頭部ベールの着用を一律に禁ずるノルトライン=ヴェストファーレン州の法律を無効としているなど、宗教的寛容を目指す風潮があった。なぜ今、バイエルンでこの動きなのか。ニューズウィーク米国版によると、9月に行われるドイツ総選挙と無関係ではないようだ。
バイエルン州を率いる保守、中道右派のキリスト教社会同盟(CSU)と、その姉妹政党であるアンゲラ・メルケルのドイツキリスト教民主同盟(CDU)は、極右政党であるドイツのための選択肢(AfD)の動きを牽制するために、 保守的なバイエルン州での妥協案導入に実験的に踏み切ったのではないかと分析している。
AfDは早くから移民排斥や、衣服だけではなく宗教的建築(たとえば、イスラム教宗教施設の、ミナレットと呼ばれる尖塔など)のような象徴の禁止を主張している。AfDにはもともと他国の極右政党ほどの勢いはなかったが、今回CDUとCSUが安全、移民、イスラム問題などで右派の主張に歩み寄ることにより、AfDの支持率は昨年15%ほどだったのが現在は10%以下に落ち込んでいる。
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
ドイツ極右政党議員スタッフ、中国のスパイ容疑で逮捕
AFPBB News / 2024年4月23日 19時33分
-
スパイ容疑で極右政党議員スタッフ逮捕 独検察 中国に情報提供
ロイター / 2024年4月23日 19時14分
-
アングル:欧州政界で高まるTikTokの存在、極右の成功に危機感
ロイター / 2024年4月9日 18時32分
-
アングル:独極右政党AfD、裕福で高齢の献金者が支える構造
ロイター / 2024年4月8日 14時23分
-
アングル:6月の欧州議会選、極右躍進でも一大勢力を見込めない訳
ロイター / 2024年4月2日 11時55分
ランキング
-
1トランプ氏「麻生氏は素晴らしい人」「偉大なシンゾーを通して知り合ったんだ」麻生太郎副総裁と会談
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年4月24日 9時59分
-
2ドイツ、中国スパイ容疑で男拘束 欧州議会議員スタッフ、情報流出疑い
産経ニュース / 2024年4月23日 21時47分
-
3トランプ氏 ドル高は「大惨事」 バイデン氏の対応批判 2024年米大統領選
産経ニュース / 2024年4月24日 8時17分
-
4タイ・バンコク近郊で日本人男性の切断遺体 日本人2人が事件に関与か
日テレNEWS NNN / 2024年4月24日 12時45分
-
5TikTok、全米で「禁止」 上院法案可決、成立へ
共同通信 / 2024年4月24日 12時6分
複数ページをまたぐ記事です
記事の最終ページでミッション達成してください