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強気の北朝鮮 メディアが報じなかった金正恩の秘密演説

ニューズウィーク日本版 / 2017年9月14日 19時24分

北朝鮮の建国記念日の9月9日、金正恩は平壌の中心にある宴会場「木蘭館」にいた。3日に強行した6回目の核実験に関わった科学者や技術者のための盛大な祝宴である。金正恩は科学者らをねぎらいつつ、こうあいさつした。「水素爆弾の爆音は、血の代価で成し遂げた朝鮮人民の偉大な勝利だ」。そして「主体革命の最後の勝利は確定的だ」とまで、自信ありげに言い切った。

この大宴会を伝える朝鮮中央テレビを見ながら、筆者は「これは間違いなく一つのビッグ・ストーリーだ」と思った。北海道上空を越える弾道ミサイルを発射したのに続き、核実験まで強行し、さらに米領グアムまでミサイルで威嚇する。むろん、対米決戦の本気度が増している印象ではあるが、どうもやみくもに挑発している感じでもなさそうなのだ。筆者は何らかのシナリオがある、と見た。

そもそも核・ミサイルは自らの体制を守る最後のとりでではあるが、金正恩の権威を高める有力な武器でもあるということである。その核・ミサイル開発の歴史こそが、金王朝3代にわたる壮大な「大河ドラマ」なのだ。この波瀾(はらん)万丈のストーリーに金正恩を登場させることによって、若き指導者に大いなるカリスマ性を持たせようとしているのだろう。(文中敬称略)

祖父と父の偉業受け継ぐ

筆者がそう感じたのには訳がある。つい先日、入手した金正恩の秘密演説にビッグ・ストーリーが透けて見えるからである。演説は、表紙が緑色の朝鮮労働党出版社が発行した冊子に収録され、13ページにわたって生々しい金正恩の発言が記されている。

タイトルは「自強力第一主義を具現し、主体的国防工業の威力を固めていかなければならない」。金正恩が党と軍の責任幹部に対して行った演説とみられ、日付は「2016年3月6日」。「自強力」とは自力更生の意味である。この演説について労働新聞など平壌のメディアは一切、報じておらず、当日の金正恩の動静報道も無い。その秘密演説が1年以上のブランクを経て17年4月10日に公開されたのは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射実験を控えて対米対決が厳しくなっていくタイミングで、広く人民に金正恩の思いを伝える必要に迫られていたからに違いない。

折しも演説のあった翌7日からは、「斬首作戦」を含む史上最大規模の米韓合同軍事演習を控えていた。16年初には初の「水爆」実験を強行し、2月には「人工衛星」と称する弾道ミサイルも発射、国連安保理で制裁決議がなされ、国際社会の圧力も増していた。

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