1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. 国際
  4. 国際総合

日本はなぜここまで教育にカネを使わないのか

ニューズウィーク日本版 / 2017年9月21日 14時45分

<教育への日本の公的支出が少ないことはよく知られているが、子ども1人あたりの支出額で見てもOECD加盟国で最低レベルだった>

日本は経済大国だが、教育にカネを使わない国であることはよく知られている。その根拠とされるのが、GDP(国内総生産)に占める公的教育費の支出額の割合だ。

今月公表されたOECD(経済協力開発機構)の2017年版の教育白書によると、2014年の日本の数値は3.2%と加盟国の中で最も低い。ここ数年は最下位を免れていたが、再び不名誉なランキングに転落してしまった。

しかし日本は少子化が進んで子どもが少ないので、この割合が低いのは当然という見方もできる。子ども人口比が15%の国と30%の国を同列で比べるのは公平ではない。そこで、子ども・若者1人あたりの額を試算して比較してみる。

2014年の日本の名目GDPは4兆8531億2100万ドルなので,先ほどの比率(3.2%)をかけて、公的教育費の支出額は1561億200万ドル。これを25歳未満人口(2898万人)で割ると1人あたり5386ドル(約60万円)となる。

同じやり方で、主要国の子ども・若者1人あたりの公的教育費を試算すると<表1>のようになる。



日本は韓国に次いで低い。子ども・若者1人あたりの絶対額で見ても、教育にカネを使わない国であることは明らかだ。スウェーデンは10342ドル(約114万円)と、日本の2倍近くの額を費やしている。



他のOECD加盟国の試算もできる。下の<図1>は、横軸に公的教育費の対GDP比、縦軸に子ども・若者1人あたりの公的教育費をとった座標上に、34カ国を配置したグラフだ(瑞はスウェーデンをさす)。公的教育費の相対比率と絶対額が見られるようにした。



日本の横軸が最下位なのは分かっているが、子ども・若者1人あたりの公的教育費(縦軸)の絶対額でも少ない部類に属している。OECD諸国の平均値に達していない。

対極の右上には、ノルウェー、デンマーク、スウェーデン、フィンランドといった北欧諸国がある。ノルウェーでは1人あたり1万9000ドル(約210万円)もの教育費を国が投じている。幼児教育から高等教育までの学費が無償であるのも頷ける。ICT(情報通信技術)教育先進国のデンマークも、教育への公的投資額が多い。

日本は高等教育への進学率が高く、今や同世代の半分が大学に進学する。それにもかかわらず公的教育投資が少ないため、負担が家計にのしかかっている。高額な学費や貧弱な奨学金は、その表れに他ならない。OECDの教育・スキル局長も「日本の私費負担は重い。家庭の経済状態による格差をなくすためにも、一層の公的支出が必要だ」と指摘している(2017年9月12日、日本経済新聞)。

給付型奨学金が導入され、高等教育の無償化の議論が進むなど、日本の教育の現状も変わりつつある。高等教育のどの部分を対象にするかなど議論の余地は多いが、法が定める「教育の機会均等」の理念が実現するよう改善が必要だ。

<資料:OECD「Education at a Glance 2017」、
    総務省統計局『世界の統計 2017』、
    United Nations「The 2017 Revision of World Population Prospects」>


【お知らせ】ニューズウィーク日本版メルマガリニューアル! ご登録(無料)はこちらから=>>

舞田敏彦(教育社会学者)

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください