金正恩の「聖地登山」はインスタ映え狙って演出か 超能力伝説でイメージ作りも
ニューズウィーク日本版 / 2017年12月15日 17時20分
12月12日、前日から平壌で開かれていた第8回軍需工業大会が閉幕した。これまで軍事機密に関わる軍需工業大会の開催など伝えられたことはない。核・ミサイル開発を進めてきた金正恩朝鮮労働党委員長が自信を深めている表れだろう。
大会で金正恩はこう宣言した。「われわれの力と技術で原子弾、水素弾と大陸間弾道ミサイル(ICBM)『火星15』をはじめとする新たな戦略武器体系を開発し、国家核武力完成の大事業を成し遂げたことは、高い代価を支払い死生決断の闘争で勝ち取ったわが党と人民の偉大なる歴史的勝利だ」。筆者は、これで一応北朝鮮は2017年を「偉大な勝利の年」として刻むことに成功し、対話局面へと移っていくだろうとみている。
だが、核・ミサイル開発のために「高い代価を支払わされた」人民を納得させるのはそうたやすいことではない。そこで登場するのが伝説の力である。
その記事はやたらと力がこもっていた。修飾語という修飾語を総動員しているため、日本人の感覚からすれば、感動より引いてしまう。だが、それほどまでに技巧を凝らして書かねばならない重要記事だったのである。
「天が生んだ名将」
金正恩が「革命の聖地」とされる白頭山に登ったというのだ。12月8日のことだとみられる。翌9日の労働新聞はこう伝えた。あまりにもくどい装飾語や繰り返し表現を省いてもこんな調子である。
<山のように積もった降雪をかき分けて訪ねた最高領導者同志を迎えた白頭山は、雪の12月に頂点に登ったそのお方の前に、万年雪を載せてそびえる荘厳な姿を現した。偉大な朝鮮の「11月の大事変」を成し遂げられて白頭山を訪問したそのお方を仰ぎ、千変万化の造化をなす天池の湖心も、天気を操る天が生んだ希代の名将を奉じた感激を胸に刻むかのように、鏡のごとく澄んで青い波に奇怪な霊峰とまばゆいばかりの陽光を宿して神秘的で恍惚(こうこつ)とさせる境地を広げていた>
「11月の大事変」とは、11月29日未明の新型ICBM「火星15」の発射実験のことである。こう続く。
<最高領導者同志は、将軍峰の尾根に立たれ、億年揺らぐことのない白頭の信念と意志によって一瞬も屈することなく国家核武力完成という歴史的大業を輝かしく実現されてこられた激動の日々を感慨深く回顧され、蒼空を貫いてそびえる高い絶壁とまばゆいほど果てしない千里の樹海を思いにひたりながら眺められた。最高領導者同志は、白頭山にはしょっちゅう登ったが、今日のように真冬に春の日にもめったに見ることのできない好天は初めてだ、天気が澄んでいるからなのか、天池湖畔の峰が目の前に近寄ったかのようにますます鮮明に見える、とおっしゃった>
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