中国、米朝首脳会談は「双暫停」のお蔭――全人代第三報
ニューズウィーク日本版 / 2018年3月12日 15時30分
3月8日の全人代記者会見で、王毅外相は南北朝鮮融和に関して中国の「双暫停」戦略のお蔭だと言い、中国外交部はその後、米朝首脳会談実現は中国が描いた戦略通りだという趣旨の発言をしている。
南北融和に関する王毅外相の全人代記者会見発言
3月8日、王毅外相は朝鮮半島問題に関しても発言している。新華網や中央テレビ局CCTVが伝えた。
ロイター社の記者が「中国はずっと米朝が直接対話すべきだと主張してきましたよね。これに関して中国は役割を発揮しますか?朝鮮半島が平和的に発展するために、中国は駐韓米軍が撤退すべきだと思っていますか?」と聞いた。
それに対する王毅外相の回答の要約は以下に示す通りだ。( )内は筆者の説明。なお、回答内にある「双暫停」とは、これまで何度も説明してきたように「米朝双方が暫定的に軍事行動を停止し、米朝は対話の席に着け」という意味である。
――朝韓(南北朝鮮)は冬季五輪の機会をとらえて冰を溶かし始めた。このような変化に戸惑っている人もいるかもしれないが、この流れは実は情理にかなっていることなのだ。五輪期間中、何が起きたか、事の本質を見てほしい。北朝鮮は核ミサイルの挑発行動を行なわなかったし、米韓は軍事演習を暫定的に停止していた。これは何を意味するのか?これこそは正に、中国が唱えてきた「双暫停」のお蔭なのである。「双暫停」は一服の良薬として南北が関係改善をする基本条件を形成してきたのだ(=適切な問題解決をするための基本条件を中国が形成してきたのだ)。(ここまで引用)
王毅外相は、双暫停こそが一服の良薬であるという表現をするときに、「一剤対症下薬的良方」という中国語を用いている。
これは直訳すれば「症状によって薬を処方する」だが、比ゆ的に「客観的情勢を分析して、最も適切な問題解決の手段を講じる」という意味となる。
「対症」という文字があるために、日本語で言うところの「対症療法」と勘違いしがちだが、そのように訳してしまったら全く異なる意味になってしまう。そのためか(対症療法では文脈上、整合性がないと思ったからなのか)、日本のメディアでは、王毅外相の発言の中のキーワードである「一剤対症下薬的良方」を省略しているために、「中国は蚊帳の外に置かれている」といった報道が見られる。
それは今後の米朝首脳会談の性格を見誤らせる危険性があるので、客観的推移を簡単におさらいしておきたい。
北朝鮮と韓国を威嚇してきた中国
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