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朝鮮半島危機の現状下、日本は政局に走っている場合ではない - 冷泉彰彦 プリンストン発 日本/アメリカ 新時代

ニューズウィーク日本版 / 2018年3月13日 19時20分

<北朝鮮の核開発問題の解決に向けて南北、米朝の首脳会談へと動き出したこの局面で、日本は一瞬たりとも外交上の判断に遅れがあってはならない>

森友問題への安倍政権の対応は稚拙でした。第一次安倍政権の「格差よりイデオロギーを優先した」イメージが失速の元凶となったように、今回も「イデオロギーの同志と思って」いた籠池夫妻に騙されたり、問題への批判に居直ったりしたのですから、「イデオロギーの罠」にハマったのは否定できません。こういうことを繰り返すというのは良くありません。

ですが、朝鮮半島情勢が緊迫している現在、政局のゲーム感覚を楽しむ余裕はないと思います。首相夫人の国会招致とか、首相経験者の麻生財務相に辞任を迫るとか、そんな紙芝居のような「劇場」をやっているヒマはないのです。

もちろんいくらトランプ大統領が、「米朝首脳会談に応じる」と発表したからと言って、本当に会談が実現するかどうかは不確定です。ですが、重要なのはトランプ大統領がそこまで踏み込んだのは、「アメリカは北朝鮮の本土核攻撃能力の完成を許すことはない」という政権の固い意思があるからであり、その「完成」が迫っている可能性があることを意味する点です。

そのために「あらゆるカード」の中の1枚として「首脳会談に応じる」と発表されました。これは大変に重たい事実で、トランプ大統領を信用するかしないかという次元を超えています。一方このニュースを市場が好感したことも大切です。これは、アメリカ経済もアメリカ社会も「平和」を望んでいることを意味します。

さらに言えば、ホワイトハウスが今回の「合意」を、南北協議を受けた流れと認めているとことも重要です。五輪での南北外交があり、実務者協議があり、その上でのまず「南北首脳会談」がおそらくはあり、さらに「米朝首脳会談」があるという流れが「当面は」できています。北朝鮮サイドは何も発表していませんが、南北協議を受けた判断だという米政権のサンダース報道官の発言は重たいと思います。

これは大変な事態です。これに対応する日本の方向性は恐らく1つしかないと思われます。それは、仮に南北首脳会談、そして米朝首脳会談が本当に実施されれば、「会談を支える姿勢でブレず、その動きに1秒たりとも遅れない」ことです。



この「1秒たりとも遅れない」というのは、具体的には様々な意味合いがあります。例えば、仮に「核放棄合意」が成立した場合、北朝鮮の核不拡散条約(NPT)復帰ということになりますが、そうすると直ちに国際原子力機関(IAEA)の天野(之弥事務局長)体制が厳格な査察を行うことになります。これは、技術的にも政治的にも困難な査察で、日本は関係諸国とともにそれを支えなくてはなりません。

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