ロシア、トルコ、イランが(アメリカ抜きで)決めるシリアの運命
ニューズウィーク日本版 / 2018年4月4日 19時0分
<トランプの対シリア政策は二転三転し、アメリカの存在感がなくなりかけているのを機に、3カ国はシリアを「山分け」しようとしている>
ロシア、トルコ、イランの首脳らは、4月4日(水)にトルコの首都アンカラで一堂に会し、シリアの将来を協議、7年も続いた血なまぐさい内戦にけりをつける方法について話し合う。だがアメリカをはじめとする西側諸国は出席していない。
トルコの関係者によると、話し合いの中心は、シリアの新憲法の起草と、緊張緩和のための「安全地帯」の設定になるだろう。
この3カ国はすべて、現在進行中の戦争とシリアの未来に大きな利害関係がある。3つの地域の大国が協力すれば、これまで約50万人の死者を出した内戦が沈静化する可能性はが高まる。それは同時に、シリアにおけるアメリカの存在感の薄さを浮き彫りすることにもなる、と専門家は指摘する。
「ドナルド・トランプ大統領は米軍の無期限配備を主張したり、早期撤退を唱えてみたり、シリアへの関与に関して立場を二転三転させている」と、ハワード・ベイカーセンターの研究員ハリソン・アキンズは本誌に語った。「トランプ政権に対する信頼性の低さからすると、シリアの紛争に直接政治的関心のある国々、特にイランやトルコにとっては、アメリカはお呼びでないというところだろう」
現に、米国防総省はシリアに米軍の追加派遣を行う計画を発表しているが、トランプは早急に駐留米軍を全面撤退させると正反対の発言をしている。
ねらいはシリア復興利権
シリアの将来について3カ国がいかにして妥協点を見出すのかは、はっきりしない。ロシアとイランは引き続きシリアの残忍な指導者バシャル・アサド大統領を支持しているが、トルコは反アサド。アサドには正統性がないと主張している。
3カ国はいずれもシリアで代理戦争を戦っているため、複雑な戦場のなかで互いに衝突することも少なくない。
トルコは最近、シリア北部のアフリンで、アサド政権の支援を受けたクルド人武装勢力に対して激しい攻撃を開始した。一方、シリア政府軍は、イランが支援する民兵組織とともに、反政府勢力の支配下にあるとするダマスカス郊外の東グータに侵攻した。トルコはこの攻撃を激しく非難している。
だがこの会議の焦点は、政治的合意の形成よりも、シリアの復興に際して生じる経済的機会をどのように分配するかという点にある、とみる専門家もいる。
カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の研究員(中東情勢)、ベンジャミン・ラッドは、「この会議は、戦利品を分配する方法、それも主に国家再建に伴う軍事および民間の契約の配分を話し合うためのものだ」と、本誌に語った。
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