トランプ「独自外交」の怖さはここにある
ニューズウィーク日本版 / 2018年5月14日 19時0分
<北朝鮮との首脳会談に応じ、イスラエルの米大使館をエルサレムに移し、6カ国で合意したイラン核合意から一方的に離脱するなどのトランプ外交の危険性は、独自外交が失敗したときに過ちを認められるかどうかかかっている>
ドナルド・トランプ米大統領は5月8日、アメリカのイラン核合意からの離脱を表明した。バラク・オバマ前大統領が15年に欧州の同盟国やロシア、イランなどの国々と苦労してようやくまとめ上げた合意をひっくり返す決断だ。
トランプが外交政策を覆すのはこれが初めてではない。
現職のアメリカ大統領としては過去に例がない北朝鮮との首脳会談を計画しているのもその一つ。他にも、環太平洋諸国の貿易協定TPPからの離脱を表明し、イスラエルの米大使館をエルサレムに移転するという危険な決断を下し、鉄鋼とアルミニウムへの輸入に追加関税を課したりもしている。
こうしたトランプの決断は激しい批判を招いてきた。
果たしてトランプは、ただの外交の素人なのだろうか。米外交を専門とする学者として私は、これまで多くの大統領たちが国際関係において政策転換を行ってきたのを知っている。
中にはうまく行ったケースもあるが、多くは反対に直面した。だが結局のところ、アメリカの国家安全保障にとって重要なのは、外交政策の転換がうまく行かなかった場合に大統領がどう対応するかだ。
反対されたかどうかは問題ではない
当初は過激に思えた政策転換が、後の歴史で評価されることもある。
1947年に当時のハリー・トルーマン大統領は、連邦議会に対しギリシャやトルコなど共産主義に取り込まれつつあった国々への大規模な軍事的・経済的支援を認めるよう求めた。
議会共和党は予算の大幅削減を求めており、トルーマンの案に反対した。左派からも、アメリカは非民主国家への支援を行うべきではないとの声が上がった。
だが最終的に、「アメリカは専制主義の脅威にさらされているあらゆる国に政治的・経済的・経済的支援を行うべきである」とする「トルーマン・ドクトリン」はアメリカの政策の基本となった。
ジミー・カーター大統領は、パナマ運河のパナマへの返還に同意したために高い政治的代償を支払わされた。世論調査では合意に反対する人が半数以上に上った。
上院は運河の返還を定めたパナマとの条約を承認したが、票差はたったの1票だった。カーターを支持した複数の議員が、その後の選挙で議席を失った。カーター自身、80年の大統領選挙で返還を批判したレーガンに大敗を喫した。だが今になってみれば、パナマ運河がパナマに帰属するのはごく自然なことに思える。
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