米大使館エルサレム移転にパレスチナ人が決死の抗議、死者58人
ニューズウィーク日本版 / 2018年5月15日 13時45分
<パレスチナ人とイスラエル軍の大規模な衝突に発展したエルサレムの「首都認定」が中東和平を破壊する>
5月14日にドナルド・トランプ米政権が在イスラエル米大使館をエルサレムに移転オープンしたことを受けて、中東各地の米大使館には警備強化のために米海兵隊員の特別部隊を増強を迫られた。反発するパレスチナ人のデモ隊とイスラエル軍の衝突が激化したためのを受けた措置だ。
彼らが派遣されたのは、ヨルダンやレバノン、エジプトなどの国々にある米在外公館。その任務は、米大使館をテルアビブからエルサレムに移転したトランプとアメリカに対するあらゆる報復行為から、職員と建物を守ることだ。
アメリカには、狙われるだけの理由がある。
トランプは昨年12月、国際的にイスラエルのものと認められていないエルサレムを正式にイスラエルの首都として認定し、米大使館を移転させる考えを発表した。決定には中東各地から怒りの声が上がった。アラブ世界は、エルサレムの東半分にあたる東エルサレムは将来のパレスチナ国家の首都とすべきと考えているからだ。
イスラエル軍がデモ隊を狙撃
かくて大使館開館の当日、パレスチナ・ガザ地区とイスラエルを隔てるフェンス沿いに、これまでで最大規模のデモ隊が集結し、イスラエル軍の狙撃手によって一日で58人のデモ参加者が殺害された。
トランプが支援するイスラエルの強硬派ベンヤミン・ネタニヤフ首相が命じたこの流血の惨事は、アメリカの信用を傷つけ、米大使館が狙われることになりかねないと、専門家は指摘する。
「アメリカがエルサレムをイスラエルの首都と認定したこと、それによって米大使館がエルサレムに移転したことは、エルサレムと深いつながりを感じ、エルサレムがユダヤ人にとっていかに重要かを認識している全ての人にとって、祝福すべきことだ」と、パレスチナとイスラエルの和平を求めるアメリカのユダヤ・ロビー、Jストリートの代表であるジェレミー・ベンアミは語った。
「だがエルサレムの地位は、パレスチナの首都を東エルサレムに樹立する2国家共存案に沿って決定し、国際的な承認を受けるべきだ。双方の合意がない中で、エルサレムをイスラエルの首都と全面的に認定することは、時期尚早で敵意を生む行為だ」
エルサレムへの大使館移転を決定したことで、アメリカは人権侵害を煽っているとする、という批判もある。
「トランプ政権は今回の移転を、一つの建物から別の建物への引っ越しに過ぎないと思っているかもしれない。だが実際は、意図的にパレスチナ人の権利を損なうものであだ。イスラエルによる違法な入植を含め何十年にも及んだ権利侵害を容認するものだ」と、国際人権団体アムネスティ・インターナショナルの中東・アフリカ問題担当ディレクター、ラーイド・ジャラールは声明で述べた。
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